フィリピン:セブ中部における土砂崩れへの救援

2018年9月20日早朝5時20分頃、セブ島中部のナガ市ティナアン町で大規模な土砂崩れが発生。台風マンクットの難を逃れたセブ島でしたが、モンスーンの影響で19日から雨が降り続いていたのが影響しました。フィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)とともに救援活動に出た上岡文看護師(北見赤十字病院、セブ島北部に保健要員として派遣中)からのレポートです。

助けを求める一本の電話

沢山の人であふれる避難所 (002).jpg

ナガ市の避難所エナン・チョン・アクティビティセンターの様子

ナガ市は、セブ島の中心地であるセブ市から車で1時間程。フィリピン赤十字社セブ支部(以下、セブ支部)は土砂崩れが発生した直後から現地に職員を派遣し、情報収集を行いました。避難所が設置され、セブ支部職員も現地で救護活動を実施していました。21日夕方、一本の電話が入りました。「あなたの活動しているセブ北部保健衛生事業の車両と運転手、そしてスタッフを明日、土砂崩れの被災者の避難所に送って欲しい。あなたたちも来られるなら一緒に乗ってきて」電話越しに聞こえる騒々しさからは、現場の慌しさが伝わるほどです。

被災地へ出発

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事前情報を得るためにセブ支部事務所に到着した時の様子。手前が服部看護師

翌日午前5時、あたりが真っ暗な中、私と同僚の服部智奈津看護師(大阪赤十字病院)は、スタッフと車でセブ支部事務所へ向かいました。事務所では、現地の状況や支援内容についての情報共有を受け、準備を整えて救援活動地となる避難所へ行きました。雷が時折鳴り響き、スコールが車や建物の屋根を叩きます。二次災害に注意しつつ、被災現場であるナガ市へ移動。普段は長い海岸沿いに屋台が連なり、現地住民で賑わうナガ市は、救護関係の車両やヘリコプターが行き交います。

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荷物を抱えて避難所に到着する人々

私たちは2か所ある避難所の1つ、エナン・チョン・アクティビティセンターへ向かいました。そこは屋内競技場で、1,411人(516世帯)の方が避難していました。私たちの到着後も、持てるだけの荷物やペットを抱えた避難者は増え続けます。中にはトラックで家財まで持ってくる人々もいました。

被災者から支援する立場へ

私たちは避難所における救護所の設置と被災者の方々への手洗い指導を実施しました。フィリピンでは手を使って食事をする習慣が残っています。避難所に設置された手洗い場を有効に活用してもらい、避難生活を安全に過ごしてもらうため、私たち赤十字スタッフは、被災者の方々に声を掛け、手洗いの必要性やタイミング、手洗いの仕方について説明して回りました。

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避難所で人々に手洗いの重要性を説明して回るタシー(右から3人目)とアイカ(右)

セブ北部での保健衛生事業のスタッフとして一緒に働くフィリピン赤のタシーは、普段、事務担当をしていますが、避難所に入って中を見渡し「避難所に救援に来るのは初めての経験。まだ避難してから間もないし、みんな疲れているだろうと思う。寝ている人もいっぱいいるみたい。きっと夜あまり寝られていないのではないかしら」と、時折悲しそうに人々を見つめています。同じく事業スタッフのアイカは、「子どもたちがいっぱい。つい自分の息子を重ねて見てしまう」と、避難所にいる子どもたちを愛おしそうに、そして少し寂しそうに言いました。

5年前にセブ島を襲った台風ハイエンの際、タシーもアイカも被災者でした。休憩の時に彼女たちが話してくれた5年前に避難した時の様子は、目の前の状況とも重なり、とても生々しく感じます。今回、家に小さな子ども達を置いて救援に向かった彼女たちのたくましさを尊敬するとともに、こうして地域に住む人々の生活や命をこれからも守っていくためにも、私たちの保健衛生事業は地域にしっかりと根付かせていかなくてはいけないと強く思いました。

PRC_Cebu_landslide (2).jpg(写真左)炊き出しの様子 (写真中)赤十字の設置した水道で体を洗う被災者 (写真右)土砂崩れ現場の災害対策本部のテントで情報収集をするスタッフ ©フィリピン赤十字社

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