インドネシア:災害からより多くの「いのちを救う」ための平時の人道活動
インドネシアは、昨年7月にロンボク地震、同9月には津波を伴ったスラウェシ島地震という2つの大きな地震があったほか、同12月にスンダ海峡津波が発生し、多くの人々が被災しました。
本稿では、日本赤十字社(以下、日赤)が日本と同様の災害リスクを抱えるインドネシアで支援している開発協力事業をご紹介します。
災害頻発国だからこそ:インドネシアの人々に寄り添い続ける日赤
同州では、1818年と1833年にM8.8、2000年にM7.3クラスの大地震が発生しており、インドネシア国家防災庁(BNPB)の調査(2013年)でも、地震と津波のリスクが高い地域とされています。また、2007年には、スマトラ島南部沖深さ30kmを震源とするM8.4の地震に見舞われており、この地震により、同州では家屋7,360棟が全壊、16,810棟が半壊、35,041棟が損傷する被害が出ました。
日赤は、こうした頻発する災害の脅威に対し、発災直後の緊急救援のみならず、地域で事前に対策を講じ、災害や疾病といった非常時にも強い対応力を備えた地域づくり(コミュニティレジリエンス)のための支援をインドネシア赤十字社と協力しながら長く継続して行ってきました。
レジリエンスを高めるために:災害に強い村づくりのための地道な活動
日赤の支援対象地であるスマトラ島ベンクル州では、地域レベルの防災・減災活動を、訓練を受けた防災ボランティアが中心となって展開しています。
具体的には、地元小学校での災害対応計画の策定や、学校の中での防災啓発活動、村行政と一緒になって企画・運営する地域の防災啓発イベント、早期警戒システムを含む村の避難マニュアルの改訂やこれをもとにした訓練など、いずれも村民を巻き込んだ村ぐるみの活動です。
しかし、災害時の緊急対応計画や、行政のハザードマップが存在しない地域、学校教育の中で防災の学習や避難訓練を受ける機会がなかった人々などがまだまだ多く残されているのが現実です。ボランティアの力をより一層結集し、組織化して、持続可能な活動にしていく必要があります。
このためには、まず地域住民や防災ボランティアによる草の根の活動が、村の行政やコミュニティのリーダーたちに認められなければなりません。
村自体が、地域の防災ボランティアを村にとって有益な存在であると判断し、住民や防災ボランティアの声に耳を傾けること。その橋渡しをするのがインドネシア赤十字社の支部職員であり、また、支部に所属する赤十字のボランティアです。
日赤の支援がいずれ終わってしまったとしても、全国に509箇所に広がるインドネシア赤十字社の支部は、地域住民に寄り添い、防災・減災のための橋渡しの役割を担い続けます。
災害支援は、その発災直後の動向に注目されることがほとんどですが、こうした平時からの地道な備えーレジリエンスを高める努力こそが、より多くのいのちを救うことにつながるのです。こうした一見地道ですが重要な草の根の活動に引き続きご理解、ご支援のほどをよろしくお願いいたします。