中東:6月20日 世界難民の日を迎えて
「難民」というとみなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか?貧しい国、戦争・紛争のある国から逃れてくる人々、一時的にテントで暮らしている人々、漠然としているけれど、幸せな生活とは遠くかけ離れたイメージがあるように思います。6月20日世界難民の日を迎えて、改めて国連の難民条約が定めた難民の定義を見てみると、難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見、または特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた人々(UNHCR難民条約より)」とあります。つまり、何らかの理由で自国にいると、生命に危険が生じたり、苦しめられたりするために、他の国に逃れてきた人々が難民ということになります。また、同じ様に迫害を受けるおそれがあるのに、国外に逃れることすらできない人々のことを国内避難民と呼びます。
中東の難民
日本赤十字社が2015年から力を入れて活動している中東地域は、こうした難民や国内避難民が多くいる地域です。その数はシリア難民が最も多く630万人、次いでパレスチナ難民が500万人、またイラク難民が27.7万人、イエメン難民が28万人、続いてリビア難民が16.5万人となっており(UNHCR Global Report 2017)、中東全体の難民は、世界の難民の半分以上を占めているといっても過言ではありません。また、それら中東からの難民の受入国としてもやはり中東諸国が最も多く、トルコが350万人、レバノンが99万人(登録されていない人を入れると150万人)、イランが98万人と、その合計はヨーロッパにおける難民受入数を大幅に上回っています。特にレバノンにおいては、国民の6人に1人が難民といわれ、最も難民を受け入れている国であるトルコの23人に1人よりも難民の割合が多い事がわかります(UNHCR数字で見る難民情勢2017年)。
日本赤十字社の中東難民支援
日本赤十字社では、こうした中東諸国、特にシリア、レバノン、ヨルダン、イラク、パレスチナにおいて難民支援を続けており、レバノンとヨルダンにおいては、医療・保健支援の経験が豊富な日本赤十字病院の医師や看護師、事業管理要員を現地に派遣しています。こうした活動ができるのは、全国に91の病院を持つ日本赤十字社ならではのことです。
また、医療技術支援にとどまらず、難民キャンプ内での上下水道へのアクセスと衛生環境の改善、あるいは子どもの教育環境の改善、衛生教育を行う赤十字ボランティアの育成支援などにも日々取り組んでいます。
こうした取り組みは、必要最低限のものしか持たないまま国を追われ、その後長年にわたってテント暮らしを余儀なくされた難民の方々の不安を少しでも取り除いたり、より良い医療にアクセスしたり、あるいは人としての尊厳を回復するために必要な活動です。また、こうした活動は、人道・中立・公平を掲げて活動している世界191の国と地域に広がる赤十字・赤新月社のネットワークによって支えられています。
今年8年目を迎えたシリア紛争は、6月初旬北部での空爆が再燃し、また多くの人が難民となっています。またパレスチナ難民においては、70年以上もの長い間国に帰ることができない状況が続き、移り住んだ先で就労や移動が厳しく制限され、その存在すら否定されている生活が続いています。こうした厳しい状況を踏まえて、日本赤十字社では、2015年からこれまでに医師・看護師・事業管理要員などのべ40人以上を中東支援に派遣しています。
難民に思いを馳せる日
難民の日を迎えるにあたって、どうかみなさんも世界中の難民に思いを馳せてみてください。
そして想像してみてください。もし自分の生活が突然戦争で奪われたら。そのまま他国に逃げなければならなかったら。逃げる途中で子どもや妻や夫と離れ離れになってしまったら。そして、ようやく逃れ着いた先では、雨や日差しを逃れるためのまともな家もなく、そのままその生活を何年も続けなければならなかったら。
無関心は人道の最大の敵であると、赤十字の基本7原則を提唱した赤十字国際委員会(ICRC)の元副総裁のジャン・ピクテ(1914年-2002年)は言いました。そして、中東における難民の最大の敵は「無関心」です。日本赤十字社は、「救うことを、つづける。」をモットーに、これからも中東の難民支援に取り組んでいきます。
中東人道危機救援金を受け付けています
日本赤十字社では、中東人道危機救援金を募集しています。ご寄付いただいた救援金は、中東地域での難民支援など赤十字の活動に活用されます。皆様の温かいご支援をお願いいたします。