「ゾド」という言葉を聞いたことがありますか?
皆さんは、「ゾド」という言葉を聞いたことはありますか?
今回の国際ニュースでは、7月にモンゴルの首都ウランバートルで開催された「東アジア地域赤十字社幹部会議」と日本赤十字社(以下、日赤)が支援する国の一つであるモンゴル赤十字社(以下、モンゴル赤)についてご紹介します。
国土の約8割を草の大地に覆われた、「草原の国」モンゴルは、ロシアと中国の間に位置する東アジアの内陸国です。1年を通じた降水量は東京の4分の1以下と、非常に乾燥した国土です。季節による気温の差が激しい内陸性の気候で、夏は40℃ 近くまで上がる一方で、冬はマイナス30℃以下まで下がります。 夏の干ばつに続き、豪雪や氷点下40℃以下の極寒の冬が訪れるモンゴル特有の自然災害のことを、「ゾド」と呼びます。干ばつの影響で草が十分に成長しないと、家畜は冬を越せるだけの栄養を蓄えることができません。そこに容赦ない寒波が襲いかかることで、大量の家畜が犠牲になってしまいます。ゾドによる被害は2000年以降増加傾向にあり、気候変動の影響によるとも言われています。糧である家畜を失うことによるダメージは計り知れず、毎年、人々の生活を脅かしています。
モンゴルに東アジアの赤十字社のリーダーが集結
ウランバートルにおいて、2019年7月2~3日に、東アジア地域赤十字社幹部会議が開催され、日赤のほか、中国、韓国、北朝鮮、モンゴルの赤十字の代表者が集まりました。「ともに強い社を目指す:共通のビジョン、共通の行動、共通の未来」をテーマに、活発な議論が交わされました。
この会議は、東アジア地域の赤十字社のリーダーが一堂に会し、地域に共通の課題について話し合うために年1回開催されています。東アジア地域では、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)が進めている「One Billion Coalition for Resilience:レジリエンスに向けた10億人の協働(※)」への貢献として、2018年~2020年は、大規模災害時の協力・ユースの参画促進・救急法講習に重点的に取り組むこととしています。
(※)「レジリエンスに向けた10億人の協働」とは、2025年までに世界中の世帯の少なくとも1人以上が防災、減災などの知識を身に付け、災害等に直面しても回復(レジリエンス)できることを目標に、各赤十字社が一体となって民間セクターや住民も巻き込んだ活動を行うもので、2015年から始まりました。
日赤からは、日本が直面している課題である「多発する災害」と「少子高齢社会」への対応として、災害発生直後の「応急救護活動」に加え、被災者の立ち直りを支援するための「復旧・復興」や地域コミュニティの自助・共助を高めるための「防災・減災」を含む災害マネジメントサイクル全体へ関与することで、災害対応能力の更なる強化を図っていることや、地域包括ケアシステムへの取り組みについて報告しました。
そのほか、会議では、赤十字の活動を持続可能にするための新たな取り組みや、大学・民間企業など専門的な知見を赤十字の活動に活かせる団体との協力、幹部とユースとの認識のギャップを明確にしながらユースの参画推進を図ること、ボランティアを通じた高齢化社会の課題への新たな取り組み、各国赤十字社の活動におけるジェンダーバランス、連盟の2030年戦略などについて話し合いました。
モンゴル赤十字社と日赤のつながり
モンゴル赤は、ウランバートルにある本社と全国32の支部を拠点に、青少年活動、災害救護、保健・健康支援、社会福祉を4つの柱として事業を展開していますが、資金や人材の確保に課題を抱えています。
日赤は、連盟と協力し、2015年からモンゴル赤の組織強化を支援しています。この支援は、モンゴルの人々が赤十字に求めるサービスを確実かつ持続的に届けられるように、赤十字社自体の強化を目指すものです。
先ほどご紹介した「ゾド」をはじめとする災害等のリスクにさらされた時、真っ先に対応するのは外部からの援助ではなく、現地に住む人々です。彼らは、自分たちが住む地域社会が、どのようなリスクやニーズを抱えているかを熟知し、その地に根差した伝統的な知恵や資源を活用する術も心得ています。外部からの支援は、いつかは終了するものです。一方、モンゴル赤は、地域の人びとやボランティアとともに、そこにニーズがある限り、草の根の活動を続けています。今は支援が必要なモンゴル赤も、将来的には自立し、地域社会が求める人道的使命を達成できるよう後押ししています。
今回、モンゴル赤を訪問し印象的だったのは、若手や女性のスタッフが中心となって活躍していたこと。活気とエネルギーに満ち溢れており、今後の益々の発展が期待されます。赤十字はこれからも、世界191の国や地域に広がる世界的ネットワークを生かし、人びとのいのちと健康、尊厳を守るための活動を続けます。