インドネシア:スラウェシ島地震被災者支援~復興への歩み~
2018年、インドネシアでは7月にロンボク島でマグニチュード6.4の地震、9月にスラウェシ島でマグニチュード7.5の地震・津波、さらに12月にはスンダ海峡で火山噴火に起因する津波と、大きな災害が短期間に続き、多くの人びとが被災しました。中でも、スラウェシ島地震は、地震と津波、さらに地滑りや液状化により、死者4,140人、行方不明者705人、重傷者4,400人以上、家屋損壊11万棟以上、避難者17万人以上という大きな被害をもたらしました。
国際赤十字は、インドネシアを襲ったこれら3つの災害の被災者支援のため、総額3,890万スイスフラン(約42億8,400万円)の緊急アピールを発出し、地元のインドネシア赤十字社(以下、インドネシア赤)が被災者のために実施する救援活動・復興支援活動をサポートしています。
日本赤十字社(以下、日赤)は、国際赤十字の緊急アピールに応え、ロンボク島地震では緊急救援・復興支援として合計3,500万円の資金援助、スラウェシ島地震の際には緊急救援として1,000万円の資金援助と毛布やテント、ブルーシートといった物資支援(輸送費を含め約6,400万円相当)とともに、被災地でのインドネシア赤の保健医療活動(仮設診療所・巡回診療や感染症予防活動等)の技術指導のため、日赤の医師・看護師5名を保健医療アドバイザーとして2018年12月末まで継続的に派遣しました。その後、スラウェシ島地震復興支援に対して5,000万円の資金援助を行っています。
スラウェシ島地震から今年3月末で1年半が経過しました。今回は復興への歩みを続ける現地の様子をお届けします。
地域医療の要となる郡診療所・村保健所の再建
スラウェシ島地震は、地元の保健医療施設にも大きな被害をもたらしました。被害の大きかったパル市・シギ県・ドンガラ県の病院・郡診療所・村保健所219施設のうち7割以上の169施設が建物損壊などの被害を受けました。
インドネシア赤と国際赤十字は、復興支援の一環として、日赤等の支援をもとに、郡の診療所(プスケスマスpuskesmas)と村の保健所(プストゥpustu)の合計4か所の再建に取り組んでいます。2019年11月には、震源に近いトンぺに位置する郡の仮設診療所とタンジュン・パダン村の村保健所が完成し、開所式及び地元行政への引渡しが行われました。また、赤十字の支援により、建物だけでなく、診療や分娩などに必要な医療資機材も整備されました。
約1万人の地域住民の拠り所であったトンぺの郡診療所は地震と液状化によって大きく被災したため、インドネシア赤が日赤の保健医療アドバイザーなどの支援のもと、震災直後からテントによる仮設診療所を設営し、地元の医療を支えてきました。被災した郡診療所がインドネシア政府によって再建されるまでの間、地域の一次医療の拠点となるべく今回、仮設診療所が建設されたことにより、診療所に来る患者の皆さんは、蒸し暑いテントから、より快適な環境で診療を受けることができるようになりました。加えて、村保健所では、村の妊産婦や乳幼児への母子保健サービスも再開することができました。
新しく再建されたこれらの施設は、耐震性により優れた設計となっており、災害が起きても地域の人びとが安心して基礎的な保健医療サービスを受けられることを目指しています。
新型コロナウイルス感染症との闘いの中での復興支援
世界的に蔓延している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、インドネシアにも広がっています。感染者数は1万7千人を超え、1,000人以上が死亡しています(5月17日時点、インドネシア政府発表)。
政府による人の移動制限措置がとられる一方、インドネシア赤は、全国4,000人以上のスタッフ・ボランティアにより、地域の人びとに対して、感染予防対策の啓発や衛生用品の配付、電話相談、公共施設や学校の消毒など、さまざまな取り組みを行っています。(写真右:ロンボク島で手洗い啓発ポスターを掲示する赤十字ボランティア @IFRC)
COVID-19は被災地の復興支援へも少なからず影響を与えていますが、日赤はこれからもインドネシア赤を中心としたスラウェシ島地震やロンボク島地震の被災者への復興支援を応援していきます。
5月は赤十字運動月間です。赤十字の活動への、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
日本赤十字社の新型コロナウイルス感染症に対する活動はこちら↓をご覧ください。