9/26は「核廃絶国際デー」
2017年7月7日、国連加盟国の3分の2を超える122カ国の賛成で核兵器禁止条約が採択されました。これまで国際法で明確に禁止されることのなかった唯一の大量破壊兵器である核兵器の製造、備蓄、使用等が違法であると認識され、「核兵器のない世界」への歴史的な一歩となりましたが、その実現はまだ道半ばです。
核兵器禁止条約が発効するには・・・
核兵器禁止条約は、50カ国が批准した後、90日以内に発効します(9月16日現在44カ国が批准※)。赤十字は、核兵器禁止条約への各国の署名及びそれに続く批准に向けた働きかけを行っています。
また同時に条約は、核保有国や核の傘にある国に対して、核兵器の軍事的役割を縮小させたり、即時発射状態に置かれている核弾頭の数を減らしたりといった核リスクの低減措置の実行も求めており、条約が発効したとしても、核兵器の廃絶に向けた粘り強い努力が必要とされます。
- 採択、署名、批准、発効の違いは?
- 採択
国家間における条約締結を促す決定で、国連の会議で採用されたということを指します。通常、採択だけでは国家間を拘束する効力はありません。
署名
条約の内容について、国家の代表者が合意すること。
批准
国家として条約を締結する意思を議会の承認を得て最終的に決定すること、つまり各国が内容を吟味した上で、その条約に加盟することを指します。
発効
条約の規定について具体的に条約締結国内における運用を始めること。批准していない国の中では、効力を発揮しません。
核兵器禁止条約と赤十字の役割
赤十字の役割はどう位置づけられるのでしょうか。核兵器禁止条約の前文では、これまでの核兵器廃絶をめぐる議論の率先について赤十字の貢献が確認されました。また、条文には、赤十字が条約の履行に向けて国際協力及び支援の分野で役割を担うことが明記されています。こうした努力は条約の発効の有無にかかわらず、赤十字に期待される役割です。
また、条約発効後に定期的に開催される締約国会議等にはオブザーバーとして参加することも求められており、赤十字が世界の核兵器廃絶に向けた取り組みの後押しをすることが引き続き期待されています。
そうした努力の一環として、2020年8月6日、日赤を含む赤十字のリーダー14人が核兵器廃絶に対する思いを一つにし、フランスの新聞ル・モンド紙に声明を寄稿しました。声明では特に、赤十字が人道支援団体であるという立場から、"核兵器が万が一使用された場合、人道支援活動を行うことができないこと"、そしてまた "次世代の未来のために、核兵器は廃絶されるべきであること" を訴えました。
Le Monde, 75 ans après Hiroshima et Nagasaki, l'ombre d'une guerre nucléaire plane toujours sur nos têtesより
https://www.lemonde.fr/idees/article/2020/08/06/75-ans-apres-hiroshima-et-nagasaki-l-ombre-d-une-guerre-nucleaire-plane-toujours-sur-nos-tetes_6048304_3232.html (2020年9月16日現在)
被爆者の思い
核兵器禁止条約が発効され、国際法上の拘束力を持つためには、さらに6カ国の批准が必要とされています。被爆者の方はどのような思いでいるのでしょうか。広島で被爆した山田さんは、国際赤十字の刊行物であるRCRCマガジンの取材にこのように答えています。
"広島市の慰霊碑には、ここにいるすべての人の魂に安らかな眠りを与えようと刻まれています。苦しみながら死んでいった人、なぜ殺されたのかわからない人の魂が安らかに眠れるよう、一日も早く平和と核兵器のない日が来ることを願っています。私が生きている間に条約が発効するかどうかは分からないが、75年前のあの夏の日のことを伝え続けていきたい"
私たちが被爆者の語り部の方々から被爆体験を直接聞く機会は限られています。条約の発効や核兵器の廃絶の国際的な議論の率先も重要ですが、同時に、ヒロシマ・ナガサキの経験を着実に受け止め、次世代に継承していく地道な活動も引き続き求められています。
RCRC magazine, Atomic bomb survivors: it's time to ban nuclear weaponsより
https://www.rcrcmagazine.org/2020/08/atomic-bomb-survivor-say-todays-nuclear-weapons-must-be-banned/(2020年9月16日現在)
お知らせ
- 「核兵器が存在することは人類にとって何を意味するのか?-コロナ危機の最中に考える」
2020年8月9日(日)に赤十字国際委員会(ICRC)、長崎市、長崎県が主催したオンラインイベント「核兵器が存在することは人類にとって何を意味するのか?-コロナ危機の最中に考える」の録画がICRCの公式Facebook上で公開されました。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、ICRCの代表や国連の軍縮部門を率いる中満泉氏をはじめ、各界のインフルエンサーが顔を揃え、核兵器のない世界の構築についてそれぞれの思いや決意を語っています。ぜひご覧ください。
ICRC Facebook: https://www.facebook.com/ICRC.jp/videos/992152337901289/(2020年9月16日現在)
- ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2020 9月16日(水)~9月27日(日)
赤十字も特設プログラムとして「戦争と生きる力 supported by 赤十字」をテーマにした12作品を上映中です。ぜひご覧ください。