【速報4】イスラエル・ガザ人道危機:ガザ地区の病院爆発、無視され続ける国際人道法
10月7日から激化しているイスラエルとガザ実効支配勢力との武力衝突は、人道主義の基本的な考え方や国際人道法が全く尊重されず、多くの市民が亡くなり続けています。そのような中、10月17日に発生したガザ地区のアル・アハリ・アラブ病院での爆発と、そこで500人にのぼるとされる市民・患者・医療者が犠牲となったとの報道は、世界を震撼させました。
戦時であっても人間を守ること~国際人道法遵守への切なる願い
戦時のルールである国際人道法において、医療施設は特別な保護を与えられており、医療施設への攻撃は重大な違反行為にあたります。赤十字は世界各国でこの基本的な考え方を改めて強調しており、日本においても10月13日に国境なき医師団(MSF)と赤十字国際委員会(ICRC)駐日事務所との共同記者会見で暴力の即時停止と人道面での対策強化を求める声明を出したところです。今回のガザ地区での病院爆発は、赤十字など世界の人道援助団体が本危機での人道面の対策強化を訴えた矢先の出来事でした。赤十字はこれまでにも繰り返し、市民、医療施設、医療従事者が暴力のターゲットになってはならないとのメッセージを発信してきましたが、犠牲のニュースは増え続けています。
◆ 赤十字国際委員会(ICRC)声明
私たちは、ガザのアル・アハリ・アラブ病院が破壊され、数百人が死亡したという報道に衝撃を受け、恐怖を感じています。病院は人間の生命を守るための聖域であるべきで、死と破壊の現場であってはなりません。
いかなる患者が病院のベッドで殺されることも、命を救う立場の医療従事者が無念の死を遂げることも、言語道断です。
医療機関は、国際人道法の下で保護されなければなりません。
◆ 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)声明
IFRCは、ガザ北部のアル・アハリ・アラブ病院で犠牲者が出たことに衝撃を受け、落胆しています。
患者と避難を求める人々が犠牲になりました。病院はすべての人の聖域でなければなりません。
市民、医療機関、医療従事者は、国際人道法の下で保護されなければなりません。
継続的な国際支援の重要性:ひとりでも多くの命を救うために
赤十字国際委員会(ICRC)による対応
ICRCからは緊急に必要とされる医療品を含む60トンの救援物資を積んだ輸送隊がガザに向けて出動、必要としている人々に届けるため、ガザへの安全な物資搬入(人道的アクセス)が可能となるのを待っています。またガザ地区への出入りが許可され次第すぐに病院の負傷者への対応を支援出来るよう、外科チームを編成し(主任外科医、整形外科医、麻酔医、手術室看護師)待機させています。ICRCはまた、イスラエル・ダビデの赤盾社(イスラエルの赤十字社)、パレスチナ赤新月社の双方に調整員を派遣し、状況把握・総合的な支援調整を行っています。
イスラエル・ダビデの赤盾社による活動
イスラエルでの負傷者への救援活動を継続すると同時に、輸血が必要な多くの患者のために献血推進活動を行い、ICRCと調整して支援を行っています。
ICRC担当者と協議するイスラエル・ダビデの赤盾社のスタッフ©MDA
パレスチナ赤新月社による対応
ガザ地区での懸命な救援活動が続いています。病院関係者は危険と隣り合わせの状況ですが、運び込まれた負傷者、入院患者、避難してきた方々に寄り添い続けています。10月17日の病院爆発は、医療提供を支援の柱としているパレスチナ赤新月社の関係者にも衝撃が走り、#NotATarget(患者と向きあう病院がターゲットになってはならない)とのメッセージを発信しています。
#NotATarget ©PRCS
今回の一連のイスラエル・ガザ人道危機では双方で4,600人を超える人々が命を落とし(10月18日時点)、さらに多くの人々が負傷、行方不明、避難生活を強いられています。今後も状況は悪化すると見られ、双方の市民がさらに苦しい状況になる恐れがあります。ガザでは、医療提供・病院の機能は崩壊寸前とも言われており、電力は不足し、人々は日々の食料や安全な水の入手が益々難しくなっています。人道的ニーズは高まるばかりで、国際社会による継続的な支援が必要です。日本赤十字社は国際赤十字と連携して傷ついた人々へ支援を届けて参ります。
「イスラエル・ガザ人道危機救援金」
受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年1月31日(水)
使途 : 赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。*周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。