【速報17】イスラエル・ガザ人道危機:武力衝突の激化から3カ月、継続する赤十字の活動
イスラエルとガザでの武力衝突が激化してから3カ月が経過しました。年末年始も絶え間なく、イスラエル・ダビデの赤盾社(イスラエルの赤十字社)やパレスチナ赤新月社、エジプト赤新月社等のボランティアやスタッフは、自身も身の危険がある中、最前線で救援活動を続けています。
前線で活動する現地スタッフ
イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社ともに、10月7日以降、24時間体制で負傷者の搬送などの救援活動を継続しています。パレスチナ赤新月社については日本赤十字社が2019年から同社が運営する病院への医療支援事業を行ってきましたが(記事はこちら)、当該事業に従事していた現地スタッフが、パレスチナ赤新月社と共に医療活動を行っています。看護師であるハムディは、パレスチナ赤新月社のクリニックで救急外来のスタッフとして働き、同じく看護師のハッサンは、避難所や学校を訪れ、清潔な水を使用する方法、手指衛生の大切さ、感染症予防など、保健衛生についての啓発活動を行っています。
避難民に対して保健衛生の啓発活動を行うハッサン©JRCS
続く医療施設や避難民への攻撃
パレスチナ赤新月社は、医療施設や民間人含めた攻撃が激化する中、極めて危険な状況下で救急車など中核的な医療サービスの提供を継続しています。
パレスチナ赤新月社のガザ支部とアル・アマル病院には安全な場所を求めて14,000人程の人びとが避難していますが、繰り返し攻撃を受けています。2024年1月2日から4日までの3日間の攻撃では、避難民のうち生後5日の乳児を含む7人が死亡、11人が負傷しています。病院の入り口やその周辺にある数十棟の住宅、市民の集まりが攻撃され、敷地内に避難していた人々を含む数十人が負傷しました。パレスチナ赤新月社ガザ支部とアル・アマル病院に避難する一般市民は命の危険を感じて避難せざるを得ない状況となっています。
国際人道法において、負傷者、病人、避難民をはじめとした民間人、人道支援や医療を提供するスタッフは保護の対象です。
負傷者を搬送するパレスチナ赤新月社の救急隊員©PRCS
パレスチナ赤新月社の救急隊とアル・アマル病院の巡回診療©PRCS
避難民のためのキャンプを立ち上げ
パレスチナ赤新月社は、エジプト赤新月社と共同で、ガザ南部ハンユニスで、避難民のために初の組織的なキャンプを立ち上げています。テント300張が設置され、避難家族は医療などのサポートを受けることができます。設置するテントは、今後さらに1,000張に拡大する予定です。立ち上げの様子の動画はこちらからご覧いただけます。
テントを設置するパレスチナ赤新月社とエジプト赤新月社©PRCS
赤十字国際委員会の活動
赤十字国際委員会(ICRC)は、中立・公平の立場で、ガザとイスラエル双方で人道支援を展開。イスラエルでは、地元の団体と連携して、医療センターでこころのケア事業を実施しています。また、離散家族の連絡回復・再会事業の一環としてヘブライ語と英語のホットラインを設け、行方不明者の親族からこれまで100件に及ぶ依頼を受理。人質の解放と被拘束者の釈放の際には、身柄をそれぞれの当局に引渡し、家族再会を視野に入れた支援を行いました。ガザでは、人びとへの緊急物資の配付に加えて、破壊されたインフラの補完や復旧(水、電力、公衆衛生、医療)を行い、南部にあるヨーロピアンガザ病院に外科チームを派遣。2023年11月1日から12月31日まで474件の外科手術を行いました。また、回復期の患者の栄養管理や、リハビリ、こころのケア等も実施しています。
人質解放の際の引き渡し支援を行うICRC©AFP
ヨーロピアンガザ病院向けの医薬品など©ICRC
日本赤十字社は引き続き現地の赤十字・赤新月社を通じて苦しい状況に置かれた人びとへ支援を届けることに尽力する一方で、国際赤十字のパートナーと連携して国際人道法の遵守を紛争当事者へ強く要請し、人道的な配慮と基本原則の尊重を求めていきます。みなさまの温かいご支援を引き続きよろしくお願い致します。
「イスラエル・ガザ人道危機救援金」
受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年3月31日(日)
使途 : 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。*周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。