イスラエル・ガザ人道危機:武力衝突の激化から半年 ~ウェビナー実施報告~

イスラエル・ガザの武力衝突の激化から4月7日で半年が経過します。人質はいまだ解放されないまま、家族が安全を祈りながら再会を待ち望んでいます。ガザ地区の人道状況も悪化する一方で、事態の打開が急務です。赤十字の立場から見た現地の現状や赤十字の活動についてお伝えするために3月25日(月)にウェビナーを実施しました。当日の録画については以下リンクよりご覧いただけます。本号では当日のダイジェストについてお伝えします。

赤十字の役割について

<日赤本社国際部 参事 藤枝大輔>
赤十字が日頃から、そして今回の人道危機での支援において大事にしている考え方は大きく以下3点あります。何よりもまず①今、苦しんでいる人びとの命を、そして尊厳を守ること。そしてそれを可能にするために、②赤十字の「中立性」「公平性」を守ること。そして、③人道支援を届けることを可能にするための「国際人道法」の遵守の訴えをすること
です。

赤十字を付けて活動している団体には紛争地を中心に世界中で活動する赤十字国際委員会(ICRC)、世界に191ある各国の赤十字・赤新月社、そして主に災害時の緊急救援や平時の開発支援を行っている国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)があり、イスラエル・ガザ人道危機においても三者が協力・連携して支援を行っています。20240404-bad4dbb6f4dca4221597f6369dabc3c2551f1d07.png

現地姉妹社の取り組みについて

<日赤中東地域代表部 首席代表 松永一>
昨日、大変痛ましいニュースが私のところに届きました。武力衝突が激化する前、日赤ではパレスチナ赤新月社のガザ支部とともに、
医療支援事業を行っていましたが、その際、我々の事業を広報面で支えてくれていたパレスチナ赤新月社のボランティアスタッフが3月24日未明の攻撃に巻き込まれ、亡くなったというのです。現地の支援に従事している最中の話で、決してあってはならないことです。戦争をするにも守るべきルールがあり、それが国際人道法です。武力衝突が激化して以来、現地の赤十字・赤新月社のスタッフは常に最前線で救援活動やラファ検問所からの支援物資の搬入や配付、心理面でのサポートなどを行ってきました。これら支援を継続していくためにも国際人道法の遵守は肝要です。

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ICRCの活動について

<ICRC駐日代表部 広報統括官 眞壁仁美>
紛争地で活動するICRCでも、ここ数年見たことのないレベルの暴力の応酬が繰り広げられていて、助けを必要としている人々に支援を届けることすら難しいです。赤十字のみならず、医療や食料面で支援している他団体も困難に直面しています。そうした状況を打開するため、ICRCは紛争当事者や影響力のある人々に対して、敵対行為の停止に加えて、人質との面会と無条件解放の実現などを要請しました。人道支援では紛争を止めたり、終わらせたりすることはできないので、政治的な合意と解決が待たれます。

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現場で見て感じたこと、伝えたいこと

<ICRC 広報官 ノート・チッタラット>
今年の1月から2月にかけてガザ地区の南部に広報官として派遣されていました(現場からの報告動画はこちら)。支援先の病院内を歩いていて、子どもたちから「ここにいれば安全だよね?」と声を掛けられ、それに対して自分が答えを持ち合わせていないのは辛いことでした。物資や食料など全てが不足する中、僕たちに、なけなしのグリーンピースを分けてくれようとする場面があり、過酷な状況の中でもそうした優しさがあることがとても印象に残っています。今回のような人道危機をどのように受け止めたらよいか、と聞かれることがありますが、戦闘に巻き込まれている人びとの目線で苦しみや痛みに思いを馳せてもらえたらと思います。

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敵対行為がやみ、助けを必要としている人びとに、より支援が届けられる状況を―。苦しい状況にある人びとのために赤十字は支援を続けていきます。

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「イスラエル・ガザ人道危機救援金」

受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年9月30日(月) *延長となりました

使途  : 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。*周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。