イスラエル・ガザ人道危機:ガザ南部ラファの野外病院は今

 赤十字国際委員会(以下、ICRC)と日本赤十字社を含む12の赤十字社(※)は、パレスチナ赤新月社(以下、PRCS)と連携し、5月9日からガザ南部のラファに野外病院を開設しています。

※オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国(香港)、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、日本、ノルウェー、スイス、イギリスの赤十字社。

こちらは、開設から5日目に撮影された野外病院の院内の様子です(動画:約4分)。

ガザ ラファの野外病院の様子 日本語字幕:赤十字国際委員会駐日代表部

野外病院開設から1か月の活動実績、現場からの声

 動画の中でサンディー医師が触れているように、ガザ地区の崩壊しつつある医療を支えるには、この野外病院だけでは甚だ不十分ではあります。しかしながら、この野外病院では、2024年5月9日に患者の受け入れを開始して以降、1日で200人から300人の外来診療、20人から100人の救急診療を行うなど、幅広い医療サービスを提供してきました。この野外病院には、ガザ地区内に留まるパレスチナ人スタッフ200名と国際職員30名の合計230名が勤務しています。また、病床数も60床あるため、入院患者の受け入れもおこなっています。

野外病院開設から1か月の活動実績は、以下の通りです:

外来・救急での診療

5,681

手術

155

出産

42

入院

242

WHOとユニセフによると、ガザでは現在5万人の女性が妊娠中といわれています。その中にはこの野外病院で出産や産前産後のケアを受ける人びともいます。

写真に写っているサナドちゃんは、この野外病院で生まれた最初の子どもで、2024510日に生まれました。お母さんのムーサさんは、妊娠中と出産について次のように振り返りました。「妊娠中はとても心配で怖かったです。ここ(野外病院)に来る前に病院に行ったのですが、医療スタッフが足りず、受け入れてもらえませんでした。ICRCの支援、出産を助けてくれた医師や看護師に感謝しています。私の妊娠期間は苦しみの連続でした。カーン・ユニスからラファへ、そして今度はラファからアル・マワシへと移動しなければなりませんでした。通常のように周産期の検査を受けたり、子どもの様子を見たりすることができず、不安でした。今回は帝王切開で出産したこともあり今はなかなか動くのは難しいです。これから、自分のこともサナドのことも心配ですが、この子が私たちの支えになってくれることを願っています」

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ガザ野外病院で生まれた最初の子ども サナドちゃん(C)ICRC

継続する大規模な戦闘行為、赤十字国際委員会の事務所も被害に

 開設してたった1カ月の間に、この野外病院では2回の大規模戦闘行為に伴う患者の受け入れに対応しました。また、6月に入っても大規模な戦闘行為は続き、21日にはラファにあるICRCの事務所も被害を受けました。周辺には多くの人が避難しており、この砲撃で野外病院には22人の死者と45人の負傷者が運び込まれました。

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5月下旬の大規模戦闘行為の際の野外病院での受け入れ(C)ICRC

人道支援の拠点には職員を含め多くの民間人がいます。赤十字を掲げる施設の所在を紛争当事者は把握しているにも関わらず、悲劇は繰り返されています。

国際人道法の下、紛争当事者は一般市民に対する危害を回避するために実行可能なあらゆる予防措置をとる義務を負います。

引き続き、赤十字は紛争当事者に国際人道法の遵守を強く要請しつつ、一人でも多くの人に医療を含む人道支援を届けていきます。引き続き、みなさまの温かいご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

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「イスラエル・ガザ人道危機救援金」

受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年9月30日(月) ※延長となりました

使途  : 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。※周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。