イスラエル・ガザ人道危機:「故郷」に戻る人びとを支える
イスラエル・ガザ人道危機については、2023年10月に武力衝突が激化してから15カ月を経て2025年1月に停戦が発効しました。人びとは徐々にガザ北部へ戻り始め、人質の解放と被拘束者の釈放という当事者間で合意されたオペレーションも進んでいます。今回の人道危機で影響を受けた人びとのために、緊急に必要とされている人道支援を赤十字でも拡大しています。
映像:北部へ移動する人びと
(こちら) 赤十字国際委員会(ICRC)
ガザ市およびガザの北部は廃墟と化し、かつての光景は跡形もなくなりました。燃料や飲み水もほとんどなく、多くの人は故郷に戻ることさえ困難な状況です。これまで目印となっていたものが消え失せ、方向がつかめない中、高齢者や子どもを連れて7キロ以上の道のりを歩かざるを得ません。15カ月に及ぶ戦闘で、避難先を転々としてきた人びとがようやく「故郷」にたどり着いたとしても、屋根のある家や食料、暖をとる手段さえありません。そうした状況にもかかわらず、故郷に戻ってきた人びとの顔には喜びと安堵(あんど)の表情がにじみ出ています。
故郷へと向かうガザの人びと©Ahmed Al Waheidi/ICRC
ガザ市内での野外病院の運営を開始
パレスチナ赤新月社は、クウェート赤新月社からの支援でガザ地区南部のハン・ユニスで運営していた野外病院をアル・サラヤに移転し、ガザ市内で初となる野外病院の運営を開始しました。外科、新生児治療、集中治療、放射線治療、救急サービスを備えており、崩壊しつつあるガザの医療システムを強化し、住民への救命医療サービスを提供することが期待されています。運営には長年日本赤十字社が医療支援を行っていたアルクッズ病院の医療チームも携わります。
移転のため資材を運ぶパレスチナ赤新月社のトラック©PRCS
ガザ市のアル・サラヤに移転した野外病院©PRCS
避難キャンプの子どもたちに安心と創造の時間を
パレスチナ赤新月社は心理社会的支援の一環として、避難キャンプを「ドリーム・バス」と名付けられた車両で巡回し、子どもたちに癒しのひとときを提供しています。絵本の読み聞かせ、映画上映、お絵かき、グループゲームなどのアクティビティがあり、メンタルヘルス部門の専門家が子どもたちと時間を共にし、武力衝突の影響を受けた子どもたちに、少しでも安心できる時間を提供します。
避難キャンプを巡回し、子どもたちに癒しのひとときを提供するパレスチナ赤新月社のドリーム・バス©PRCS
ドリーム・バスで過ごす避難キャンプの子どもたち©PRCS
人質の解放と被拘束者の釈放に関する支援
赤十字国際委員会(ICRC)は当事者間の合意を受けて、中立な人道支援組織として、人質や被拘束者の安全な移送を支援しています。必要に応じて、医師を含む専門スタッフによるケアも提供します。これまでにガザ地区からイスラエルへ人質24名を、また、イスラエルからパレスチナ被占領地へパレスチナ人被拘束者985名を移送しました(2025年2月15日現在)。「愛する家族の帰還を待ちわびている家族は、いまだ多くいます」とICRCのスポリアリッチ総裁は話し、次のように続けます。「次のオペレーションも安全に実施できるよう、すべての当事者に対して、引き続き公約を守るよう私たちは呼びかけています。ICRCチームは、さらなる人質の解放と被拘束者の釈放、そして家族の再会を実現するために、合意の履行を継続する準備ができています。」
赤十字の根幹である、苦しんでいる人びとの命と尊厳を守る活動、支援が続けられるよう、引き続き、皆さまのご理解とご支援をどうぞよろしくお願いいたします。