東日本大震災10年:日本赤十字社と国際赤十字・赤新月社連盟が共同メッセージ
「世界からの支援に感謝、あの時の連帯感を新型コロナや気候変動問題解決の原動力に」
3月10日、日本赤十字社の大塚社長と国際赤十字・赤新月社連盟のシャパガン事務総長は、東日本大震災10年を前に、共同メッセージを発表しました。
当時、日赤には、100を超える国や地域の赤十字社や政府等から総額1000億円を超える海外救援金が集まりました。共同メッセージでは、この支援に改めて感謝すると共に、当時多くの人々が被災者に寄せた世界的な「連帯の精神」こそが、新型コロナ禍や気候変動問題などの解決に必要な私たちひとり一人の行動の変化を支える原動力になると訴えています。
日本赤十字社 国際赤十字・赤新月社連盟共同メッセージ(日本語訳)
東日本大震災から10年
世界から「連帯の精神」を示しご支援頂いた皆様への感謝のメッセージ
2021年3月10日
3月11日は、日本にとって特別な日です。これまでの道のりを振り返り、これからの行く先を考える日であり、世界からの連帯と支援に感謝する日でもあります。そして、今も世界を脅かす人道危機に対して、赤十字運動が連帯して立ち向かう決意を新たにする日でもあります。
2011年の同じ日、日本で起こったM9.0の地震と津波は、18,428人の死者・行方不明者、47万人にのぼる避難民など、大きな被害をもたらしました。また、津波により福島第一原子力発電所が甚大な被害を受け、炉心溶融が起きてしまいました。日本は、これまで誰も経験したことが無い、3つの災害が重なった複合災害に見舞われたのです。
日本赤十字社(日赤)は、発災直後から救護活動を開始しました。被災地にある赤十字病院は、被災者救命の最前線となりました。
国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)は、すぐに日本に代表や広報要員を派遣し、大きな混乱の中にあった日本赤十字社の支援を開始しました。
長引く避難生活の中で、世界の人々からの善意と連帯は、この未曾有の災害に見舞われた人々に希望と安心を与えました。仮設住宅には、海外からの援助で支援された生活必需家電が揃っていました。被災地域の子供たちは、被災地から遠く離れた安全な地で「サマーキャンプ」(こころのケア)に参加し、サポートボランティアに見守られながら、野外で活動することが出来ました。
病院、避難所などの支援にあたった日本赤十字社の医療救護班は、発災からの半年間で延べ894班となり、75,000人以上を診療しました。そのほかにも、救援物資の配布、こころのケア、安否調査、輸血用血液の確保などの活動が行われました。
津波や原発事故のライブ映像が国際配信され、世界は「災害の目撃者」となりました。各国の人々は、被災者に連帯を示し支援を申し出ました。この連帯のもと、日赤の行う救護活動と復興支援のために、100あまりの国と地域の赤十字・赤新月社といくつかの政府から、合計約1000億円(当時の為替レートで約12億4000万米ドル)の支援が寄せられました。
日赤は、海外からのこの大きな寄付を生かし、最も支援を必要としている人々を支えるため、国際的な支援と国内的な支援を融合させることにしました。これは日赤がそれまで行ったことがない形の支援であり、人々を助ける新たな力をつけることに繋がる大きな学びとなりました。
発災から3か月後、日赤と連盟、そしていくつかの赤十字社の代表が被災地を訪問し、復興支援の基本計画を決定しました。仮設住宅133,000世帯への家電セットの支援、高齢者・障がい者を支える福祉サービス、仮設住宅建設、学校やこころのケアを含む子供たちへの支援、地域の医療施設の再建、防災能力の強化、原子力災害に対する活動などが行われました。
最終的に、10分野の計60事業がほぼ完了したところです。復興支援事業の詳細は「東日本大震災復興支援最終報告書」(英語)に記載されています。
しかしながら、多くの地域で復興が進んでいる一方で、未だに約4万1000人が避難生活を続けており、そのうち、残留放射能の影響により2万2000人以上が、自宅で生活することができない状態が続いています。コミュニティを震災前のように復興することは容易ではなく、これからも長い道のりが続きます。
日本は、自然災害が多く発生する国であり、防災のための設備投資が数多く行われてきました。しかし、2011年の津波と原子力災害がもたらした大きな被害を思い返すと、人命が失われるのを防ぎ被害を軽減するためには、ハードウェアばかりに頼るのではなく、人々の災害に対する心構え(マインドセット)を常に新たな危機への関心に結び付け、いざという時の機敏な行動を促すことがいかに大切であるか、私たちは改めて学んだのだと思います。
原子力災害はごく稀にしか起きないかも知れませんが、本当に起こった時には人々や環境に壊滅的かつ長期にわたる影響を及ぼす可能性があります。
私たちが更に前に進むためには、この前例のない悲劇から何を学ぶことができるのか、そして将来の災害にどのように備えることができるのかを考える必要があります。35年前のチェルノブイリ原発事故を思い起こしつつ、福島原発事故から学んだ教訓を、再び原発事故が発生した場合に備え、私たちの防災・減災の強化に確実に繋げていかなければなりません。その第一歩として、日赤と連盟、そしていくつかの姉妹社は、2015年に「原子力・放射線災害における事前対策および応急対応ガイドライン」(英語)を公表しました。
今日、私たちは新たな危機の真っ只中にいます。新型コロナウイルス感染症の蔓延は、世界中で多くの苦しみを生み出し続け、気候変動も私たち全員に影響を与えています。これらの危機は地球規模の課題であり、私たち個々人が行動を変え、「連帯の精神」をもって行動することでしか解決できません。私たちの世界的な連帯こそが、現在、そして未来の危機を乗り越える原動力となることを確信し、このメッセージを締めくくりたいと思います。
全世界からご支援頂いた皆様に感謝いたします。
社長 大塚義治
事務総長 ジャガン・シャパガン
- 関連資料のご案内:「東日本大震災復興支援事業総括報告書」
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