何で寄付するの?を考える。“あなたは何で〈日本赤十字社〉に?”【前編】
災害、紛争、病気など、苦しむ人を救うため、あらゆる支援をしている〈日本赤十字社〉。そもそも、どのような組織で、具体的にどんな活動をしているの?実際に勤める2名の方にインタビューをし、「寄付」の大切さについて考えてみました
Q.「あなたはなぜ、日本赤十字社に入ろうと思ったの?」
CASE1:掛川智可さんの場合
A.「“どの命も救えるのは人間だけだ”と思ったから」
掛川智可
かけがわ・ちか/2016年、日本赤十字社入社。日本赤十字社東京都支部、大森赤十字病院での勤務を経て2022年より現職。
一つ一つの仕事に責任を感じています
――昨年、入社7年目に、本社のパートナーシップ推進部に配属された掛川さん。いま、どのような業務を手掛けているか教えていただけますか?
掛川智可さん(以下:掛川) 主に法人様に向けて、赤十字が行う人道支援活動へのご理解をいただき、寄付のお願いをしています。継続してご支援いただけるよう、心強いパートナーシップを末長く築いていくことを目指し活動しています。企業にそったSDGsやCSR(企業の社会的責任)の観点があるため、どのように日本赤十字社の活動をご支援いただけるのか、それぞれの思いを汲み取り、より良いかたちをご提案することで、課題解決を実現したいと心がけています。また、日本赤十字社の事業への寄付となる「赤十字活動資金」のみならず、世界中で発生する人道危機や災害等での活動支援となる「海外救援金」や、日本国内での地震や大雨災害による被災地の方々へお見舞金をお届けするための「国内災害義援金」の受付についても当課で担っています。
――日本赤十字社に入社したいと思ったのは、なぜだったのでしょうか?
掛川 大学では生物学を学んでいて、中学・高校の教員を目指していました。教育実習や大学の勉強会で生物の話をする際「どの命も救うことができるのは人間だけだな」と気づいて。そんなときに、日本赤十字社が世界中にネットワークを持っていることや、苦しんでいる人たちを救うという精神、「人間を救うのは、人間だ」というスローガンに共感したのです。教員免許を取得したあとでしたが、一気に就職活動へと方向転換しました。
――そのほか、日本赤十字社に魅力を感じた点はありましたか?
掛川 入社した会社に長く勤めたいと思っていたので、一つの企業にいながら幅広く経験を積めるのは魅力でした。日本赤十字社には9つの事業があり、その中にも様々な担当があるので、異動するたびに転職したかのように大きな違いがあります。しかも、一つひとつの事業における責任や社会に与える影響が大きい。「社会貢献」という言葉をそのまま担っている会社だなと思いました。
東京都支部にいた頃、イベントにて。
――実際に入社してみていかがでしたか?
掛川 日本各地に献血ルームや児童養護施設、看護大学があるなど、想像を遥かに超えて、事業の幅が広かったですね。その上、どの事業に所属していても、その先には必ず助けを求めている方がおり、「苦しんでいる人を救いたい」というひとつの強い信念のもと、それぞれが活動の場を広げています。
寄付は「助けたい」気持ちを託す手段
本社入り口すぐに目に入るのが「赤十字マーク」。奥の白地に赤色の新月は、イスラム圏で使用されている。国境を越えて、世界中で活動していることがわかる。
マスコットキャラクターのハートラちゃん。
――「寄付」という行為について、入社前と入社後で意識が変わりましたか?
掛川 私自身も入社前はデパートやコンビニなどに設けられた募金箱に小銭を入れる程度でしたが、入社後は寄付で成り立っている企業であることを実感。「赤十字活動資金」の使い道として、国内での災害救護活動はもちろん、救援物資の配布や避難所での巡回診療、被災されて家族をなくされた方々の心のケア、その後の復興支援など、長い目で支援することができるのは赤十字ならではの良い活動だなと。大切な寄付を無駄にすることなく活用しています。
国内だけでなく海外に目を向けても、いち早く現場に駆けつけている職員を私は生で見ているし世界192の国と地域のネットワークを駆使して助けに来てくれる。そういった報告を受けると、国ごとで活動の場や主とする事業は違えど、赤十字一丸となっていると実感します。
――掛川さんの考える“寄付の意義”とは何でしょうか?
掛川 現地に行けないけれど「助けたい」「支えたい」という方々の代わりに、私たち赤十字が駆けつける。その託された想いが寄付だと思っています。世界には多種多様な考えがありますが、国境や人種、宗教を超えて、「力になりたい」という気持ちを実現し、ひとつになれる手段のひとつです。
より多くの方にご理解いただけるよう、ホームページに最新の活動内容を掲載したり、毎年度、事業報告書を公開したり、各支部や施設でも地域の方々との強い関係性を築けるようにしています。寄付される際にはその団体がどういうもので、その先にどういった支援を必要としている人がいるのかを一度考えてみていただくと、より良いのではと思います。
――自身のお仕事を通じて、“寄付が生かされている”と実感することはありますか?
掛川 最近だと、やはり国際活動です。ウクライナ人道危機やトルコ・シリア地震がありましたが、メディアによる反響も大きいですし、みなさまから寄せられた救援金はどういった使途が効果的なのか、現地のニーズを把握しながら調整をしますが、実際に送金され、被災者の方に届いたときは特に実感します。1つの国や地域を救うために本当にたくさんの人が関わっているなと。また、日本赤十字社と現地の赤十字社が連携して活動している姿を見ると、世界の一員なのだなと感じますし、こうして国内外で活動できているのは、多くのみなさまからのご支援があってこそだと感じて胸が熱くなります。