北の大地で活躍する男性看護師―旭川赤十字病院 宮崎看護師―

かつて看護師は「看護婦」と呼ばれ女性が中心の職業でしたが、近年男性の割合も増えています。厚生労働省の統計(衛生行政報告例)によると、男性看護師は平成18年には約3万8千人でしたが、平成28年には約8万2千人と、10年間で2倍以上に増えています。赤十字病院でも多くの男性看護師が活躍していますが、今回は旭川赤十字病院(北海道)で感染管理認定看護師(※)として働く宮崎寛康看護師にお話を伺いました。

-看護師を目指したきっかけを教えてください。

宮崎看護師

笑顔で患者さんと接する宮崎看護師

中学生の頃に一緒に暮らしていた祖父が認知症で入院したのですが、家族は仕事等で病院に行けなかったため、冬休みの間は毎日私がお見舞いに行きました。入院中祖父から言われた「ありがとうな」という言葉はとても嬉しかったです。ある日、祖父が失禁して、対応に困っていたところ看護師さんが対処の仕方を教えてくれて、そのときに漠然と「看護師さんていいな」と思いました。

高校2年生になり進路を考えていくにあたり、「祖父みたいな人を僕が看護したい」という思いが強くなり、看護師を目指すことにしました。

―やりがいを感じるときや、看護師になってよかったと思うことがあれば教えてください。

患者さんやご家族と接するなかで、ささいなことでも「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてもらったときは、一番やりがいを感じます。

ある高齢の男性が病院に運ばれたとき、髭や爪は伸び、体も汚れている状態でした。その方の奥様も高齢だったため、ご自宅で介護をすることが難しかったのでしょう。入院後、髭を剃り、シャワーに入って、爪を切るうちに、次第に表情が明るくなり、会話や食事もできるようになりました。患者さんの療養環境を整えることで、患者さん自身の自然治癒力を引き出すことができると実感できました。

現在は脳卒中センターに勤務していますが、患者さんの変化を察知し、肺炎などの合併症を防げたり、元気になって退院する姿を見られたときは嬉しいです。

―感染管理認定看護師になった背景を教えてください。

点検

感染症の蔓延を防ぐため、院内が清潔に保たれているか点検します。

就職して3年目から感染対策を担当したことがきっかけで感染に関する知識をさらに身につけたいと思っていたことや、先輩からの勧めがあり、感染管理認定看護師を目指すようになりました。認定看護師となるため、病院からのサポートも受け、約半年間東京で研修を受けました。試験合格後は認定看護師として、院内で感染症の蔓延を防ぐためデータ分析やラウンド(巡回)をしたり、院外では学会発表や看護専門学校での講義に取り組むなど幅広く活動しています。

自身が集めたデータ解析に基づいた感染管理にかかる研究を行い、発表していくことで感染症の防止に広く貢献できると感じています。現在の目標は感染管理認定看護師として独り立ちすることです。その後は特定行為研修の受講も視野に入れていけたらと考えています。

お話している様子

「色々なことを教えてくれるので、ご高齢の方とお話する時間は楽しいです」と語る。

―女性が多い職場ですが、男性看護師ならではの苦労はありますか。

男性だからといって特別苦労を感じる場面はありません。悩みなどは相談しやすい環境だと思います。現在所属する病棟にも6名の男性看護師がいるので、自然と声を掛け合いながら仕事をしています。力が必要な時や、男性の患者さんの看護をする際は、男性看護師として重宝される場面もあります。

看護の楽しさややりがいは、男性も女性も大きな違いはないのかなと思います。

―看護師を目指す男子学生にメッセージをお願いします。

僕が高校で看護師を目指すとき男子学生は一人、受験会場に行っても男性の受験者は多くて10名前後でした。でも、今は男性看護師が増えてそれぞれの現場で頑張っていると思います。看護は命を救い、その命をさらに輝かせることが出来る素晴らしい仕事です。学校では辛いこともあるかと思いますが、同じ夢を持った級友と支えあいながら夢に向かって頑張ってほしいです。

宮崎看護師を支える同院の平岡副院長兼看護部長にお話を伺いました。

取材に答える宮崎看護師(左)と平岡副院長(右)

取材に答える宮崎看護師(左)と平岡副院長(右)

現在、当院で勤務する看護職員611名のうち、58名が男性です。それぞれが、管理者の道を歩んだり、救急、フライトナースや透析看護などの専門を極めたり、国内災害救護や国際救援に参加するなど、様々な分野で活躍しています。

公平にステップアップの機会を得たり、自身にあった働き方をするために、すべての看護職員を対象とした「キャリアニーズ調査」を毎年実施し、本人の希望を踏まえながら研修受講の調整や配置転換をしています。看護師は、国内、また世界でも、その専門性を生かし活躍できる仕事です。看護師として、自身の望む道を歩めるように、成長をサポートしていきたいと考えています。


※感染管理認定看護師:日本看護協会が定める教育を修め、認定看護師認定審査に合格し、感染管理の分野において、熟練した看護技術と知識を有することが認められた者。在宅から急性期病棟まで、全ての医療関連施設を利用する患者・家族・訪問者・職員を感染源から守るため、幅広い感染管理に関する知識を持ち、多職種と協働する。平成30年7月現在、全国の感染管理認定看護師は2,793名 (参考)日本看護協会ホームページ

旭川赤十字病院ホームページ 》http://www.asahikawa.jrc.or.jp/

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