第5期の訪問~浪江町民健康調査

日本赤十字社は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所の事故によって避難している浪江町民の健康調査と健康支援活動を続けています。

松山赤十字看護専門学校(愛媛県松山市)の松木優子専任教師が2016年10月24日~11月25日、活動に取り組みました。以下は松木優子専任教師から寄せられた活動報告です。

健康調査のための訪問から見えてきたこと

私は、今回初めて、東日本大震災時の原子力発電所の事故により避難を余儀なくされた、いわき市で生活する浪江町の方々の健康調査に、愛媛県から参加させていただきました。そして、訪問に応じてくださった人々の語りや環境から、浪江町の方々の健康状態や暮らしの現状を知ることができました。

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浪江町の方々は、生活の拠点を原子力発電所の事故による放射能汚染で奪われてしまいました。生活の拠点を奪われるということは、社会的喪失です。人為的な事故で生活の拠点となる土地を追われ、仕事を失いました。震災後5年以上経過し、最近では除染作業が進み帰還の目途がたちはじめましたが、人の住まなくなった家はあちらこちらが壊れ、帰還しても住む家をどうするかといった問題があるようです。家の周囲は雑草が背丈まで伸び、野生化した動物や野生動物が近隣をうろつき、家の片づけも思うように進まなかったりもするようです。帰還するということは、放射能の問題だけでなく、生活するための環境が整わなければ困難であり、住民の方々の苦悩がうかがえました。

住み慣れた浪江町を離れ、新たに生活を始めるためには、その土地の習慣に従った近所付き合いや、経済的基盤が必要です。浪江町に居たころと違う生活習慣に戸惑いながらも、浪江町の方々は日常をとり戻そうと各々が努力をされていました。努力してもうまくいかないときもあるようで、お話を聞かせていただく中で涙する方もいらっしゃいました。しかし、たまっていた感情を吐き出し、最後には笑顔をとり戻されました。震災後5年以上経過した現在も、精神的支援を必要とする方がいらっしゃる現実を知りました。

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今、日本では、新たに発生した熊本地震や、東京オリンピックがクローズアップされています。しかし、今もなお、東日本大震災で被災した人々は、余震やそれに伴う津波の不安と戦いながら、日々を過ごされています。被災後長期間経過すると、被災地での問題は多様化し、災害によって生じた問題かどうか不透明になってくるところもあるかと思います。私達は、復興に関わる人々と情報を共有することで、浪江町の方々の健康状態と現状生活再建状況をアセスメントし、1日も早く日常をとり戻し、健康で自立した生活を送れるように支援することが大切だと思いました。そのためには、何をもって日常をとり戻したと判断するかを明らかにし、そのゴールに向けて様々な職種の方々と協働して支援してことが必要となると感じました。