CNL指導者育成研修受講後の「カイゼン」-熊本赤十字病院の取り組み

日本では平成27年度からCNL(クリニカル・ナース・リーダー(Clinical Nurse Leader○R)、以下「CNL」)指導者育成研修が開催されています。CNLとは、米国看護大学協会が2007年に導入した新しい高度実践看護の役割です。ベッドサイドで多職種の医療スタッフとコミュニケーションをとりながら協働するとともに、継続したケアの質の改善、データ等に基づくケアの実践・課題解決を促進する役割を担っており、患者の症状の改善、看護職の職務満足度の向上、医療事故の減少、医療コストの削減等が期待されています。本研修に4年間で124名が受講しました。

スタッフと打合せを行う松本看護係長.jpg

今回、昨年度以前に同研修を受講した熊本赤十字病院の看護職員にインタビューを行いました。

現在、がん性疼痛(とうつう)看護認定看護師として業務にあたっている松本和美看護係長(写真右)。日本赤十字九州国際看護大学で平成27年度に行われた本研修に参加しました。
 「研修の内容で一番印象に残っていることは、アメリカではCNLがベッドサイドのコーディネーターとして多職種の医療スタッフのケア調整をリードするということでした。また、問題を整理する際には『フィッシュボーン』という特性要因図を用いることが有効だということも印象深いです。」

松本看護係長は通院されている患者さんのケアを担当するとともに、同じ業務を担当している複数の看護スタッフを束ねています。さらなる業務の充実と質の高い看護ケアの提供、スタッフのモチベーションアップを目的として『フィッシュボーン』を用いて現状分析を行い、改善計画を提案。日々の業務などを効率化し、患者さんに寄り添う時間をさらに作りだすため、スタッフ一丸となって臨機応変に対応できるよう環境を整備。結果、チーム内の連帯感が増し、通院されている患者さんへのケアをさらに充実させるため、スタッフ自身が勉強会に積極的に参加するなどの相乗効果も生まれているとのことです。

医療安全に関するシミュレーションをチームで行う本口看護係長.jpg

病棟で看護スタッフの勤務状況等を管理している本口貴美子看護係長(写真右)。勤務表の作成のほか、病棟での打合せ、新人看護師の振り返り、看護記録にかかる委員会への参加など、担当している業務は多岐にわたります。本口看護係長は昨年度の研修会に参加し、組織分析や院内のシステムに着目することで、課題解決の糸口が見えてきたと話します。
 「問題解決のプロセスに関しての講義が印象的でした。今までは個々人の課題としていたところもありましたが、研修受講後は組織もしくはシステムに着目して改善を図ること、また信頼性を高めるためにデータを活用することを意識し、昨年度は薬の取扱いの改善に関する取組みを行いました。今後は勤務時間の適正化、医療安全と働きやすさを考慮した看護体制の見直しなどを行いたいと思います」