アレルギー反応
免疫反応は、外来の異物(抗原)を排除するために働く、生体にとって不可欠な生理機能ですが、時に特定の抗原に対して過剰な反応を示すことがあります。この過剰反応(蕁麻疹、掻痒感、呼吸困難、血圧低下等)をアレルギー反応といい、特に反応が激しく、全身性のものはアナフィラキシーと呼ばれています。重篤なアナフィラキシーが起こることはまれですが、アレルギー反応は輸血副作用のなかではもっとも頻度が高い副作用です。
下表は2023年に日本赤十字社に報告されたアレルギーおよび重症アレルギーの発症時間をまとめたものです。
輸血副作用データ収集については、日本輸血・細胞治療学会による参加医療機関の全数調査が実施されています。
参考:日本輸血・細胞治療学会ウェブサイト ヘモビジランス「輸血製剤副反応動向」
輸血によるアレルギーの原因として特定されているのは、血漿蛋白(IgAやハプトグロビン)欠損患者で過去の輸血等により当該蛋白に対する抗体が産生されている場合のみであり、原因のほとんどは解明されていません。原因物質として特定されてはいませんが、食物アレルギーのある患者に、献血前に当該食物を摂食した献血者の血液を輸血してアレルギーが発生したとの報告があります。
赤血球製剤や血小板製剤の輸血によるアレルギー反応を予防するためには、洗浄操作により血漿成分等を除去した製剤(洗浄赤血球製剤等)を輸血します。また、アレルギーの原因が血漿蛋白欠損と特定されている患者に血漿製剤を輸血する際は、当該血漿蛋白欠損の献血者由来の血漿製剤が必要となる場合があります。抗ヒスタミン剤やステロイドの事前投与には明確なエビデンスはありませんが、予防投与を行う場合には輸血の30~60分前に実施します。