輸血後鉄過剰症

再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などの難治性貧血やサラセミア、鎌状赤血球症などの遺伝性貧血では支持療法として長期間赤血球輸血が行われる場合があります。全血400mL由来の赤血球に含まれる鉄量は約200mgであり、食事による鉄の吸収量の約200日分に相当しますが、生体における鉄動態は鉄の排泄ルートがなく閉鎖系に近いため体内に蓄積されることになります。輸血により過剰となった鉄は、肝臓・心臓・内分泌器官などに沈着し、輸血後鉄過剰症(Post-transfusion iron overload)による臓器障害が発生します。肝臓では肝腫大・線維化・肝硬変が進行します。心臓ではうっ血性心不全や不整脈をきたします。内分泌系では、糖尿病・下垂体系の機能低下が認められます。慢性的に輸血を受けている患者では定期的なフェリチン値の測定が必須となります。

血清フェリチン値1000ng/mLまたは、赤血球輸血量40単位以上では、鉄キレート剤による鉄過剰症の治療の適応について検討が必要となります。厚生労働省「特発性造血障害に関する調査研究班(平成20年度)」により「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」が策定されていますので、診断、治療等にあたってはそちらを参照してください。

(厚生労働省:特発性造血障害に関する調査研究班
(平成20年度)「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」より)