【9月1日「防災の日」にちなみ、日本赤十字社が調査】 避難勧告・避難指示が出ていても「避難しなかった」は約半数

~背景に「過去の災害では大丈夫だった」「近隣も避難していない」という“バイアス”~

近年、「数十年に一度」「過去最大」と言われる自然災害が頻発し、今年に入ってからも全国各地で豪雨や水害が発生しております。被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
長きに渡り災害救護、被災地支援と向き合ってきた日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:大塚義治、以下「日赤」)は、9月1日の「防災の日」にちなみ、日本全国約3万人を対象に、国民の意識や行動実態を明らかにし、防災・減災意識を醸成するきっかけとするための調査を実施いたしましたので、その結果をお知らせいたします。

<調査結果ハイライト>

●調査対象者27,298人のうち近年、実際に台風や水害等の災害を経験した人は5,028人おり、そのうち59.1%が「災害当時に自治体から避難勧告・指示が出ていた」と回答、半数以上が避難勧告・指示を認識していました。【図1】

●災害経験者を「避難勧告・指示の認識の有無」と「避難行動の有無」で4つに分類しました。
Aグループ(避難勧告・指示が出ていた / 避難した)
Bグループ(避難勧告・指示が出ていた / 避難していない)
Cグループ(避難勧告・指示が出ていなかった / 避難した)
Dグループ(避難勧告・指示が出ていなかった / 避難していない)
※「避難勧告・指示が出ていなかった」には「分からない・覚えていない」を含んでいます。

それを集計すると、Bグループ「避難勧告・指示が出ていたが避難しなかった」が約半数(46.2%)と最大となり、Aグループ「避難勧告・指示が出ており避難した」という率先避難者は12.8%に留まりました。【図2】

●避難しなかった理由では、BおよびDグループともに「過去の災害で被災しなかったから大丈夫(B=28.0%、D=21.0%)」や「近隣の人や知人が避難していなかった(B=24.0%、D=27.0%)」という回答が見られ、状況判断にバイアス(先入観・思い込み)が一定の影響を及ぼしている可能性が示されました。【図3】【図4】

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今回の調査では、災害に際し避難勧告・指示が出されていても、正しく理解や判断がされていない場合もあることが示唆されました。その背景として「正常性バイアス(危機が迫っていても大したことではないと思い込むことで心を落ち着かせようとする傾向 )」や「同調性バイアス(周りの人と同じ行動をとろうとする傾向)」が避難行動に影響を与えると言われています。
日赤として、日ごろから防災・減災に対する意識を持ち、いざという時に、自分自身や周囲の人を守るために正しい判断と行動に移していただけるよう 、今後もキャンペーンや講習等を通じて、国民の皆様に情報提供を行ってまいります。

<調査結果詳細>

※1次調査

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「避難勧告・指示の有無」と「避難経験の有無」による分類
(「避難勧告・指示なし(n=2057)」には「分からない・覚えていない(n=845)」を含む)

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※2次調査
一次調査結果にもとづき、27,298人のうち、大規模台風または豪雨災害経験のある方5,028人を「避難勧告・指示の認識の有無」および「避難行動の有無」により以下の4区分に分類、各区分から100名を抽出比較した。
Aグループ:避難勧告・指示等あり・避難行動あり
Bグループ:避難勧告・指示等あり・避難行動なし
Cグループ:避難勧告・指示等なし(不明含む)・避難行動あり
Dグループ:避難勧告・指示等なし(不明含む)・避難行動なし

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<調査概要>

●調査名 豪雨災害における避難行動に関する全国調査
●調査対象 日本全国の男女27,298名
●調査方法 インターネット調査
●調査期間 2021年8月20日~23日
※本調査を引用する場合は「2021年日赤調べ」と記載ください。

<まとめ>

●今回の調査は、1次調査として27,298人の国民にこれまでの台風や水害などの被災経験を聴取し、災害経験者5,028人の中から「避難勧告・指示が出ており避難した人(Aグループ)」「避難勧告・指示が出ていたが避難しなかった人(Bグループ)」「避難勧告・指示が出ていなかったが避難した人(Cグループ)」「避難勧告・指示が出ておらず避難しなかった人(Dグループ)」がどの程度存在するのか明らかにすることから始めました。その結果、Aグループ=12.8%、Bグループ=46.2%、Cグループ=2.4%、Dグループ=38.5%という分布となり、避難勧告・指示の有無と避難行動の実態が可視化されました。

●そこで2次調査として、ABCDの各回答者から100名ずつを抽出し、災害や避難に関する情報の入手・判断、判断時の傾向(バイアス)の有無など、防災・減災につながる意識と行動を把握しました。その中でもAとBについて詳細を見てみると、情報についてAは「テレビ(85.0%)」「インターネット(76.0%)」「自治体からの情報(48.0%)」に加え「家族や知人(35.0%)」「ラジオ(32.0%)」と幅広いソースから収集していました。Bは「テレビ(89.0%)」「インターネット(90.0%)」がAより高いほか、「ソーシャルメディア(38.0%)」も上位に挙がっており、より手軽に利用できるソースを活用して判断に活用している姿が浮かび上がります。

●Bが避難しなかった理由としては「自宅の方が安全だった(59.0%)」が最多であったものの、「過去の災害でも被災しなかったから(28.0%)」「近隣の人や知人が避難していなかったから(24.0%)」が上位に挙げられており、近年、人の判断や行動に影響を与えると言われている「バイアス」に基づいた結果であると推察されます。また、Dが避難しなかった理由にも同様の傾向が見られました。

●災害などで危機が迫っていても大したことではないと思い込むことで心を落ち着かせようとする「正常性バイアス」の認知について、Aは「内容まで知っている(44.0%)」であるのに対し、Bは「内容まで知っている(21.0%)」と倍近い差が見られます。同様に、災害などの時にも周りの人と同じ行動をとろうとする「同調性バイアス」の認知について、Aは「内容まで知っている(49.0%)」であるのに対し、Bは「内容まで知っている(23.0%)」とこちらも顕著に差が見られました。避難する際にバイアスという心理傾向が働く可能性があることに対し、Aは「とても意識した+どちらかといえば意識した(74.7%)」と答えました。一方Bは「とても意識した+どちらかといえば意識した(53.0%)」と20ポイント以上の違いとなり、知識の差が避難行動の差として表れている可能性が示唆されます。

日本赤十字社では、9月1日より、「ACTION!防災・減災」プロジェクト第2弾として、災害時の逃げ遅れの原因となる2つの心理「正常性バイアス」「同調性バイアス」について、わかりやすく伝えるキャンペーンを実施いたします。ぜひ特設サイトをご覧ください(詳細は次項)。

「ACTION!防災・減災」プロジェクト第2弾!

日本赤十字社は、東日本大震災から10年を機にスタートした「ACTION!防災・減災プロジェクト」の第2弾として、世の中の「防災」への興味・関心が高まる9月(9月1日 防災の日)に、“災害時に働く2つの心理”についての啓発キャンペーンを新たに展開します。
テーマは「発災時の適切な避難行動」の訴求。災害時の逃げ遅れの原因となる2つの心理「正常性バイアス」「同調性バイアス」について、わかりやすく伝えた絵本動画『不安が見えなくなるメガネ』を制作し、SNS(Twitter、Facebook、Instagram)の公式アカウントを使って周知して参ります。

詳細は「ACTION!防災・減災」プロジェクト特設サイトをご覧ください。

・キャンペーン期間:令和3年9月1日(水)~30日(木)
・特設サイトへのURL:https://www.jrc.or.jp/lp/bousai/ 

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画像 絵本動画『不安が見えなくなるメガネ』