阪神・淡路大震災が起きた日、3人に1人「知らない」 ~『ボランティア元年』の認識も3割に届かず、若年層で認知が低い傾向~
発災30年を迎える阪神・淡路大震災やボランティアをめぐる認知・意識を日赤が調査
1995年1月17日、淡路島北部を震源地に発生した「阪神・淡路大震災」は、国内で史上初めての震度7を記録し、大都市を直撃した直下型地震として、兵庫県を中心に甚大な被害をもたらしました。この時、全国各地から多くのボランティアが集まり、現地で活動にあたったことから、後に1995年は「ボランティア元年」といわれるようにもなりました。
2025年に発災から30年を迎える中で、当時の様子を伝えていくことは、これまでと変わらず重要です。過去の災害を知ることは、いまを生きる私たちが日頃から防災・減災に取り組んだり、ボランティアを通じて共助の意識を高めたりする上で、ひとつのきっかけになり得るからです。
日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:清家篤、以下「日赤」)では、市区町村ごとに防災の取り組みや高齢者の支援活動などを行う「地域赤十字奉仕団」、日頃の訓練を生かして災害発生時に活動する「防災ボランティア」など、全国で約2900団、約83万人の「赤十字ボランティア」が活動しています。
そこで日赤として、阪神・淡路大震災の発災から30年を迎えるタイミングで、阪神・淡路大震災に関する認知や、被災地で活動するボランティアに対する意識を探るために、10代~60代以上の男女、合計1200名を対象に調査を実施しましたので、結果をお知らせします。
なお今回の調査は、2024年11月に実施しました。
<調査結果のハイライト>
【1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災に関連した設問】
- 阪神・淡路大震災について、知識の程度に関係なく「知っている」と回答したのは、全体の89.3%(1072人)に上った【図1】。反対に、「全く知らない」人は10.7%(128人)で、このうち71.9%(92人)は10~30代が占めた【図1-2】
- 阪神・淡路大震災について、「知っている」とした回答者でも、発災日が1月17日であることを知らない人は32.5%(348人)【図2】。上記で「全く知らない」と回答した人も合わせると、発災日を知らないのは全体で39.7%(476人)に上る。このうち66.4%(316人)は10~30代が占めた【図2-2】
- 阪神・淡路大震災でのボランティア活動を機に、1995年が「ボランティア元年」といわれていることの認知を尋ねると、回答者全体の75.7%(908人)が「知らなかった」と答えた。この点については、全世代を通して知らない傾向にあった【図3】
- テレビや新聞などのニュースを通して、阪神・淡路大震災や東日本大震災などをはじめとした過去の災害について知ることで、「防災に対しての考えや行動に影響・変化があった」と回答したのは全体の63.2%(758人)に上った【図4】
上記の影響や変化の内容についても尋ねると、「新しく防災備蓄を始めた」と回答した人が43.5%(330人)で最多、順に「居住地のハザードマップを確認した」のが41.8%(317人)、「既にある防災備蓄を見直した」のが36.3%(275人)と続いた【図4-2】
【災害発生時に被災地で取り組むボランティアに対する、考えや行動に関しての設問】
※各項目は、「政府広報オンライン『被災地を応援したい方へ 災害ボランティア活動の始め方』」などを参考として、災害時に被災地で取り組むボランティア活動に対する考え方や行動に対する意識を聴取した。
- 『災害時のボランティア活動は、被災直後に短期間・集中的に支援することが最も重要』
⇒「そう思う」と回答したのは58.3%(699人)で過半数を上回った【図5】 - 『混乱している被災者にかわって、なるべくボランティアが率先して復旧・復興を推進していくことが必要』
⇒「そう思う」と回答したのは62.8%(753人)で過半数を上回った【図5】 - 『災害時のボランティアで、最もニーズが高いのは被災状況の大きな地域であり、優先的に活動すべき』
⇒「そう思う」と回答したのは65.6%(787人)で過半数を上回った【図5】 - 『ボランティアは、時には求められたこと以上に自発的に考え、行動することも必要である』
⇒「そう思う」と回答したのは61.8%(741人)で過半数を上回った【図5】 - 『食事や睡眠の場所など、事前準備にも限界はあるので、現地で調達・利用できるものには頼っても良い』
⇒「そう思う」と回答したのは50.6%(607人)で過半数を上回った【図5】 - 被災地でボランティア活動に取り組むために、事前に知識やスキルを学んだり、習得したりすることを必須にした方が良いと思うか、についての考えを尋ねると、回答者全体の69.4%(833人)が「そう思う」と答えた【図6】
- 今後災害が発生した際に、被災地でボランティア活動に取り組んでみたいと思う人は、回答者全体の51.6%(618人)だった【図7】
【まとめ】
今回の調査結果では、1995年の阪神・淡路大震災の発災からまもなく、またはその後に生まれた世代は、それ以上の世代と比較して、当時のことについて認知が低い傾向にあることが明らかになりました。さらに、この年が「ボランティア元年」といわれていることに関しては、世代に関係なく知られていないことも判明しました。
また、テレビや新聞などのニュースを通して、阪神・淡路大震災をはじめとした過去の災害を知ることで、防災に対する考えや行動について影響を受けたり、変化があったりした人は、過半数を超えていました。これらのことから、国民が日頃の備えに対するそれぞれの意識を高めるという点で、過去の教訓が生かされているように見受けられます。
一方で、災害発生時に被災地で取り組むボランティアについては、例えば「災害時のボランティア活動は、被災直後に短期間・集中的に支援することが最も重要」という考え方や行動などに「そう思う」と答えた人が過半数を超える項目が複数ありました(※)。しかし、これらの考え方や行動は、災害規模や内容、地域特性など、場合によっては適切でないこともあるため、すべての災害に対して一律に当てはまるものではなく、状況に応じて慎重に判断すべき内容です。
なお、上記の考え方や行動の回答割合にそれほど大きな差がないことからも、回答者が迷いを感じていたことがうかがえます。こうした迷いの裏返しとして、「事前に知識やスキルを学び、習得することを必須にした方が良い」と考える人が全体の約7割に及んだことに影響した可能性があります。
災害時の医療・救護活動やボランティア等による被災者支援活動を実施している日赤としては、「いかに被災地・被災者に寄り添い、求められる行動が提供できるか」が重要であると考えています。日本では、今後も大規模災害が起こる可能性があります。平時から、いかにして迅速かつ適切に行動するのか、議論を尽くしておくことも大切です。「人を助けたい」という思いから生まれるボランティア活動を通して、非常時にもお互いが助け合う『共助』の機運を醸成していくためにも、日赤としては防災教育や講習をはじめ各種啓発活動にも取り組んでいきます。
※<調査結果のハイライト>【災害発生時に被災地で取り組むボランティアに対する、考えや行動に関しての設問】および図5を参照。
【阪神・淡路大震災における赤十字ボランティアの活動】
日赤では、北は北海道から南は沖縄まで、全国の赤十字病院で救護班を編成し、日赤創立以来の災害救護活動として最多の981班を現地に派遣しました。
この災害のもう一つの大きな特徴は、「ボランティア元年」という言葉が生まれたとおり、ボランティア活動が活発になったことです。まだ、災害時のボランティアがどこに集まるかというしくみもない中、ボランティアを希望する市民が役所に殺到して混乱をきわめました。しかし、日赤では以前から赤十字奉仕団(ボランティア)を組織して活動しており、さらに平成3年より、災害時に迅速かつ効果的な救護活動を行うための「防災ボランティア」を養成していたことから、彼らが中心となり、ボランティアを希望する個人の活動の取りまとめを行いました。
1月20日からボランティアの受付を開始し、日赤兵庫県支部裏の兵庫県母子会館にボランティア・センターを開設しました(当初は支部内に設置)。あらかじめ登録された赤十字奉仕団など以外にも、毎日新しいボランティアの登録が行われ、総数は累計1093人となりました。
主な活動に、教援物資の受け入れ、倉庫の荷積み、物資搬送、安否調査、病院作業補助、ナビゲーション、支部業務支援、その他避難所における被災者支援活動など、さまざまな場で赤十字ボランティアが活動しました。なかでも災害時に機動性を発揮するオートバイによるボランティアは、被災地の状況把握のみならず、神戸に大勢住んでいる外国人の安否調査活動にも従事し、全部で1875件の安否確認を行いました。赤十字には戦時救護活動の一環として、昔から安否調査業務を行ってきた実績があり、そのノウハウを生かした活動でした。
【被災地でのボランティア活動を考えている方へ】
被災地では、交通状況や給水状況等が厳しい状況が続くケースもあるため、状況を確認した上で慎重な行動が必要です。被災地のボランティア活動は自己完結が求められますが、食事、トイレ、就寝場所等を含め一層の自己完結に留意していただくこと、また寒暖差もあることから、寒さ対策の徹底も求められます。マスクや消毒等の感染対策や体調管理も重要です。ボランティアの受け入れ状況・事前登録等もよくご確認ください。
日赤では、災害時のボランティア活動について、活動前後の準備や注意点をまとめた冊子「ボランティア、ご安全に!」を作成し、WEBサイトに掲載しています。この冊子では、ボランティアの方々が安全で健康に活動できるよう「活動前の準備」「活動中に気を付けること」「被災者への接し方」などの安全管理について、日赤医師の監修のもとにお伝えしています。また、ボランティア活動に伴いストレスを受けることもあることから、セルフケアも大切になります。本冊子では「セルフケアのポイント」もお伝えしています。
冊子の内容はこちらからご覧いただけます。
- 「ボランティア、ご安全に!」(日赤WEBサイト)
https://www.jrc.or.jp/volunteer-and-youth/volunteer/news/2022/0624_000999.html
▼冊子「ボランティア、ご安全に!」概要版(一部)
<調査概要>
調査名 阪神・淡路大震災や災害時のボランティアに関する意識調査(2024年)
調査対象 日本の男女1200名(10~60代以上の男女各100人)
※10~60代以上の男女各100人
調査方法 インターネット調査
調査機関 楽天インサイト株式会社(調査委託)
調査期間 2024年11月
※その他詳細なデータについては、日本赤十字社広報室にお問い合わせください。
※本調査を引用する場合は「2024年日赤調べ」もしくは「日本赤十字社『阪神・淡路大震災や災害時のボランティアに関する意識調査(2024年)』」と記載ください。
本件に関するお問合せ先
日本赤十字社 広報室(メディアの方へ): https://www.jrc.or.jp/media/