どうやって輸血するの?
輸血を受ける患者さんやご家族には、医療スタッフが輸血の必要性やリスクを説明し、輸血を受けることに関する同意をしていただきます。血液型検査や輸血用血液製剤と患者さんとの照合の後に輸血が行われます。輸血後には、その効果と副作用の有無が確認されます。
輸血を受ける患者さんやご家族には、医療スタッフが輸血の必要性やリスクを説明し、輸血を受けることに関する同意をしていただきます。血液型検査や輸血用血液製剤と患者さんとの照合の後に輸血が行われます。輸血後には、その効果と副作用の有無が確認されます。
輸血の前には、医療スタッフが患者さんに、輸血の必要性や有効性、使用する輸血用血液製剤の種類や量、輸血に伴う副作用の発生率などのリスクについて分かりやすく説明し、輸血を受ける同意を患者さんから得ます。
これをインフォームド・コンセントといいます。輸血に対する不安や疑問、分からないことがある場合は、医療スタッフにお尋ねください。
輸血について理解し、同意したら、医療機関が準備した同意書にサインし、提出します。インフォームド・コンセントは、原則的に輸血の前に実施しますが、緊急な輸血の際には救命を優先し、後になることもあります。
輸血の前に、患者さんの血液と使用する輸血用血液製剤の「適合性を確かめる検査」、患者さんの「感染症に関する検査」を行います。
血液型は大きく、A型、O型、B型、AB型に分けられます。
ABO血液型 | 赤血球の表面の抗原 | 日本人のおおよその割合 |
---|---|---|
A | ||
なし | ||
B | ||
A・B |
ABO血液型と同様に重要な血液型がRh血液型です。日本人のRh陰性の割合は約0.5%(200人に1人)です。
ヒトの赤血球には、ABO血液型やRh血液型以外にもたくさんの種類の血液型があり、全く同じ血液型の血液を輸血することはほとんど不可能です。妊娠や輸血などにより、自分とは異なる血液が身体の中に入ると、その血液に反応する抗体がつくられることがあり、これを不規則抗体と呼びます。
患者さんの血液中に不規則抗体があると、輸血で副作用が起こることがあるため、不規則抗体の有無を事前に検査します。以前に妊娠や輸血の経験がある場合や、医療機関で『不規則抗体を持っている』といわれたことがある方は、必ず医療スタッフにお知らせください。
患者さんが不規則抗体を持っていると、輸血用血液製剤と反応し、副作用を起こすことがあります。このような副作用を未然に防ぐため、患者さんの血液と輸血用に取り寄せた(輸血に使う)輸血用血液製剤が適合するかをあらかじめ検査します。
HLA (Human Leukocyte Antigen) とは、白血球の血液型のことです。HLAは白血球以外にも、血小板を含む他の細胞の表面にも存在しています。過去の輸血や妊娠などが原因で、患者さんがHLAに反応する抗体を持っている場合は、輸血された血小板が壊され、血小板製剤を輸血しても輸血の効果が得られないことがあります。
その場合は、患者さんに適合した血小板製剤を輸血するため、患者さんのHLA等に関する検査をすることがあります。
輸血後に輸血による感染症が疑われたときのために、後で確認のための検査ができるように患者さんの血液を保存します。
医療スタッフは、輸血用血液製剤の中に凝集物がないか、色調に異常はないかなどの外観を確認します。
また、複数の医療スタッフで輸血用血液製剤がその患者さんのために準備されたもの(適合している)か、繰り返し確認(照合)します。患者さんのリストバンドと輸血用血液製剤を携帯端末などで電子的に照合する医療機関もあります。
輸血用血液製剤は、患者さんの様子に注意しながら、ゆっくりと点滴します。
副作用の早期発見・治療に努めるため、医療スタッフは、輸血を始める前と開始してから5分間、15分後、
そして輸血が終了した後に、患者さんの状態を確認し、輸血による副作用が起きていないか観察します。
また、通常、輸血当日または翌日に採血し、輸血の効果が得られているかを確認します。
さらに、輸血によってB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルスの感染が疑われた場合は、必要に応じた検査を行います。
輸血を受けることで、蕁麻疹(じんましん)や発熱、呼吸困難や血圧の変動などの副作用や感染症が起こることがあります。
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会が実施した2021年の輸血副作用の調査では 、バッグ当たりの輸血副作用の発生率は、赤血球製剤で0.58% 、血小板製剤で2.15% 、血漿製剤で1.04%でした。(大学病院30施設、その他の医療機関5施設の合計35施設における調査)。
発熱 | 33.8% |
---|---|
発疹・蕁麻疹 | 19.5% |
掻痒感・かゆみ | 6.9% |
血圧上昇 | 6.1% |
発赤・顔面紅潮 | 6.0% |
熱感・ほてり | 5.6% |
悪寒・戦慄 | 4.9% |
血圧低下 | 4.0% |
嘔気・嘔吐 | 3.3% |
呼吸困難・呼吸障害 | 2.4% |
血管痛 | 2.4% |
動悸・頻脈 | 1.6% |
胸痛・腹痛・腰背部痛 | 1.0% |
発疹・蕁麻疹 | 44.7% |
---|---|
掻痒感・かゆみ | 29.7% |
発熱 | 7.9% |
発赤・顔面紅潮 | 7.6% |
熱感・ほてり | 2.3% |
悪寒・戦慄 | 1.6% |
呼吸困難・呼吸障害 | 1.6% |
血圧低下 | 1.1% |
発疹・蕁麻疹 | 51.7% |
---|---|
掻痒感・かゆみ | 22.1% |
発赤・顔面紅潮 | 10.8% |
血圧低下 | 3.6% |
発熱 | 3.5% |
熱感・ほてり | 2.5% |
悪寒・戦慄 | 1.4% |
呼吸困難・呼吸障害 | 1.2% |
血圧上昇 | 1.0% |
出典:輸血製剤副反応動向 -2021- 日本輸血・細胞治療学会ヘモビジランス小委員会
輸血に伴って、かゆみ、蕁麻疹(じんましん)、発熱が起こることがあります。その場合には、通常、アレルギーを抑える薬や解熱剤等を投与して対応します。次に輸血が必要になった場合は、事前に薬を使用することもあります。
輸血に伴って、まれに呼吸困難や血圧の変動などの重篤(じゅうとく)な副作用が起こることがあります。
輸血は他人の血液を身体の中に入れるので、さまざまな免疫反応が起こることがあります。ほとんどは軽微なものですが、ごくまれに輸血された赤血球や血小板が壊され、期待された輸血効果が得られず、副作用を起こすことがあります。
日本赤十字社では、献血時の問診、献血された血液の感染症検査(梅毒検査、B型肝炎ウイルス検査、C型肝炎ウイルス検査、HIV検査、HTLV-1検査)などを行い、安全な輸血用血液製剤の製造・供給に努めています。しかし、病原体がごく微量であるため検査で検出できないなどの理由により、輸血によって病原体が感染するリスクがゼロではありません。
年間約100万人の患者さんが輸血を受けていますが、そのうち輸血によって感染が起こったと判断された症例数は、以下のとおりです。
過去の献血時の感染症検査では陰性であっても、その後の献血で陽性となることがあります。その場合は、過去に献血された血液を遡って(遡及)検査し、患者さんに輸血された血液の安全性を確認します。そのため、献血時に保管用の血液を採血し、11年間保管しています。また、輸血後の患者さんの感染症検査が陽性となったときに、使用された輸血用血液製剤の献血者の過去の献血血液の安全性を確認する調査を行っています。
適切に輸血されたにもかかわらず、輸血により起こった副作用による健康被害を受けた方に対して、医療費などを給付する制度があります。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構による、「医薬品副作用被害救済制度」や「生物由来製品感染等被害救済制度」です。