令和3年度赤十字飛行隊全国支隊長研修の報告とコロナ禍での活動紹介
赤十字奉仕団の中には、飛行機を使用して災害救護等人道的な業務に無償で協力する赤十字飛行隊(http://jfa1953.org/projects/redcross-flying/)があります。昭和38年(1963年)に結成された日本赤十字社本社直轄の特殊奉仕団です。
これまでの主な活動としては、新潟地震災害、サハリン地震、北海道南西沖地震、雲仙・普賢岳噴火災害、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などです。また、災害での救護支援のほかに、血液輸送、緊急臓器搬送、医薬品輸送なども行ってきました。
令和3年度は12月4日(土)に「全国支隊長研修」が開催され、全国から26名の支隊長または代理者が参加しました。開会式では、日本赤十字社から銀色有功章の授与がおこなわれたほか、講習では、国土交通省運輸安全委員会航空事故調査官加藤亮太氏による「航空事故分析について」と題した講話がありました。
飛行隊はいざという時に、被災地へ飛んで救護活動ができるよう、日ごろから飛行機の整備、操縦訓練などが必要となります。しかしながら、ここ数年のコロナ禍の中、他の赤十字奉仕団と同様、思うように訓練や活動ができない日々が続いています。
そんな中、鹿児島支隊の剥岩(はぎいわ)政次支隊長から、鹿児島県内の離島、三島村への新型コロナウイルスワクチンを接種する医療スタッフの輸送支援を行ったという活動の報告がありました。今回支援した島は、竹島、硫黄島、黒島大里です。
各離島と鹿児島県本土とを結ぶ村営フェリーは、鹿児島港を出港し、それぞれの島を巡り、また同じように各島を巡って鹿児島へ戻るという1泊2日と日帰りで運行しています。各島には診療所があり、通常は鹿児島赤十字病院の医師が各島を月2回巡回しています。今回のワクチン接種については、三島村と鹿児島赤十字病院が中心になって行いましたが、接種の効率化のため、村が民間病院に支援医師の派遣を依頼しました。この医師の輸送について、赤十字飛行隊が協力を求められたのです。
支援活動をおこなったのは4日間です。
・5月11日(火)三島村竹島から14:00、医師を乗せて鹿児島市へ移動。
・5月18日(火)三島村硫黄島から18:00、医師を乗せて鹿児島市へ移動。
・5月19日(水)鹿児島市から17:00、医師を乗せて三島村黒島大里へ移動。
・5月20日(木)三島村大里から16:00、医師を乗せて鹿児島市へ移動。
フライトを担当した剥岩支隊長は語ります。「この4日間は梅雨独特の濃霧、強風、大雨がすさまじく、陸上は視界不良のため、海上を飛行しました。ある島ではヘリポートが山の上にあり、天候が悪く使えなかったため、村長の許可を得て、港の岸壁に着陸しました。また、気をつけたこととしては、新型コロナウイルスを島内に持ち込まないよう、島外の人は入れないような状態でしたので、島に到着してもエンジンを切らずに自分は降りず、医師を乗せてすぐに飛行するという具合でした。島民の皆さんのワクチン接種を飛行隊の活動で後押しできたことを、大変嬉しく思っております」
若いころから空へのあこがれを持ち続けていた剥岩支隊長が免許を取得され、機体を所有してヘリコプターに乗り始めたのは40歳を過ぎてから。外洋ヨットレースを中心に参加艇の安全確保や事故状況確認などのボランティア活動を続けてこられました。そんななか赤十字飛行隊の存在を知り、入隊しておよそ12年が経ちました。
「最近の活動では、熊本地震の際の情報収集活動を赤十字飛行隊熊本支隊と協働で行うなどの活動もあります。今回の鹿児島県の離島飛行も悪天候がありましたが、常に意識していることに、『引き返す勇気』『二次災害を絶対に起こさない』ということもあります」。剝岩支隊長は、隊員が様々な状況をイメージしながら飛行場と場外離着陸場を使って訓練に励んでいることを教えてくださいました。
どんな小さな案件でも困った人がいれば協力できる体制でいたいという支隊長は、最後にこのように話してくれました。「ヘリコプターの飛行は、地上要員や航空局、関係団体などの綿密な打ち合わせなどが必要で、彼らの協力なくして飛行はできません。他県の支隊とも赤十字の価値観を共有し、同じ目的のために活動するため、普段から各隊員や協力員とも密なコミュニケーションを大切にしています。今後は若い人達が後継者として活躍できる環境を作っていきたいと思います」
赤十字飛行隊は、これからも空から支援活動を続けていきます
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