それでも立ち上がる 〈台風第19号災害〉長野県千曲川氾濫「被災者の声」
昭和25年から守り続けた家業 「全部、使えなくなったよ」 片付けの手を止めず、男性は語った
千曲川の堤防が決壊、氾濫する川の水の直撃を受けた長野市豊野。石原益夫さん(81)は親子2代・約70年にわたり豊野で青果店を営んでいました。10月12日、避難警報が出るとすぐに、家族と避難 所へ。警報が解除され、家に戻った石原さんの目に飛び込んできたのは、津波に襲われたような無残な街の姿と、1 階の天井近くまで浸水して泥だらけになった自宅兼店舗でした。「商売のものは、どれももう使えなくなったからさ、また取り寄せないとね」。気丈に笑みを浮かべながら、そう語る石原さんは、周囲の助けも借りながらゼロからの再出発を目指しています。
秋祭りの日。氾濫した川は町の鎮守「守田神社」を跡形もなく押し流した
長野市穂保地区に鎮座する「守田神社」。この神社を守る氏子の総代を務めていた小山田昌秀さん(59)は避難所のテレビで千曲川の堤防が決壊した映像を目にし、息をのみました。決壊した場所は、守田神社のすぐ裏。上空からの映像には、千曲川から流れ込む濁流が映っているものの、神社の姿は跡形もなく…。くしくも、台風が直撃した13日は秋祭(例大祭)を予定していた日。その前夜、小山田さんは台風が近づく中、一人で守田神社の前夜祭(宵祭)準備をし、本殿の中で神様に手を合わせてから、避難所に向かいました。堤防の決壊は、その数時間後のことでした。「本殿はおろか、鳥居まですべて流されるなんて。あまりのことに言葉を失いました。穂保は高齢者の多い地区です。ここまで荒らされてしまうと高齢者はもう住めないのではないか。神社の再建も難しいと感じています。私を含め、この地区の住民は自宅や暮らしの復旧がまず最優先ですから…」と、小山田さんは神社の跡地を見つめ、自らに言い聞かせるように語りました。