台湾東部沖地震から半年 ~赤十字救助ボランティアの活躍~

花蓮県の高層ビルで救助活動を行う赤十字ボランティア©台湾赤十字組織

2024年4月3日に発生した台湾東部沖地震から半年が経過。被災地は落ち着きを取り戻してきているものの、今なお、至る所に被害の痕跡が残されています。今回は、発災直後から救助活動にあたった現地の赤十字ボランティアのインタビューから、当時を振り返るとともに、中・長期的な復興支援へと移行しつつある台湾赤十字組織の支援活動をリポートします。

落石により通行ができなくなった太魯閣渓谷の遊歩道©台湾赤十字組織

救助活動の中核を担った
赤十字ボランティア

台湾東部沖沿岸をマグニチュード7.4の地震が襲ったのは、今年4月3日のこと。台湾東部・花蓮県では、最大震度6強を観測。建物の倒壊や土砂崩れによる犠牲者が18人、負傷者が1163人、行方不明者2人の被害が発生した他、花蓮県市街地では、ビルが大きく傾くなど、452棟もの建物が損壊。1900世帯以上の家屋が解体や修繕が必要な状態に。人気の観光地である太魯閣渓谷では、発災直後は多くの人々が孤立状態となり、地震から半年が経過した今もなお閉鎖が続くなど、地域全体に痛ましい爪痕が残されています。

 台湾赤十字組織(以下、台湾赤)・花蓮支部の救助隊は、発災から1時間半後には被災地に出動し、救助活動にあたりましたが、その中核を担ったのは赤十字ボランティアです。花蓮支部所属の救助ボランティアは男女あわせて32人。普段は小学校の教員や自営業など、それぞれの生活がある中でも、少なくとも月に1度は集まり、身体能力と技術力を磨く本格的なレスキュー訓練を行っています。ボランティア歴24年で、今回の地震でも救助隊の副隊長としてチームを率いたリン・チンファンさんは、当時をこう振り返ります。

「発災直後、観光スポットの太魯閣渓谷で道路が寸断され多くの方が逃げられずにいると情報があり、私たちは消防隊員と共に捜索・救助活動のために渓谷に向けて出動しました。ところが、山の崩落や落石により、私たちのチームも8人が渓谷に閉じ込められるという危機に瀕しました。大雨の中、唯一残された脱出ルートは流れの急な渓流に飛び込むこと。必死に泳ぎ、なんとか無事に全員が脱出。これまで300回以上のミッションに参加してきましたが、確実な救助を遂行するだけでなく、チームのメンバーの命や安全も確保しなくてはならないという、非常に過酷な状況でした」

20240410_Rescure_RinB.jpgリンさん

川を泳いで渓谷から脱出した赤十字救助ボランティア。
浅瀬から陸に上がる際に仲間同士でサポート©台湾赤十字組織

また、同チームの赤十字ボランティア、ホアン・リーさんとウェン・ルーセンさんは、
「地震発生直後に、捜索と救助の要請連絡が届きました。私は家族の安全を確保してすぐに災害現場に向かい、被災地で閉じ込められている人々の救助を行いました。赤十字ボランティアの一員となり、これまでに学んできた救助の技術が、今回の地震での救助活動と、自分自身の身を守ることにつながったと実感しています(ホアンさん)」

Mr_H_leeB.jpgホアンさん

「閉じ込められ、負傷している人々を見たとき、“この人々を救うために私は赤十字救助隊に参加したのだ”、と強い気持ちが湧いてきました。私は、水泳が得意なのでライフガードになろうと思っていたところ、赤十字の共助の精神に感銘を受け、救助隊の訓練に参加するようになりました。人は災害が起きたとき、手を差し伸べ助け合うことができます。自分のできる範囲で、支援を提供することができるのです(ウェンさん)」と語り、また異口同音に「台湾で災害が発生するたびに、日本から惜しみない支援が届く。本当に感謝している。ありがとう、日本のみなさん」と言葉を結びました。

20240406_1_Search n RescureB.jpgウェンさん

渓谷で救助活動を行った赤十字ボランティアチーム©台湾赤十字組織

生活再建と復興支援のために
奔走する台湾赤十字組織

現地の水璉消防署も被害が大きく、台湾赤は社会インフラ施設建設支援の一環として、消防署再建を計画しています。水璉消防署の消防士、ザン・ジミンさんは、
「新しい消防署の建設、日本からの多くの支援に感謝します。台湾と日本のパートナーシップの深さを実感しています」
と、感謝を述べました。

 この他にも、台湾赤では花蓮県山間部の和平村における緊急避難所兼コミュニティーセンターの建設支援も計画しています。

 また、花蓮県の市街地には政府が「居住不可」と評価し、その旨を掲示した赤い紙を貼った建物が残ります。台湾赤は建物被害を受けた被災世帯に向けて、家庭用品購入のための引換券(各世帯約14万円分)の配布に注力。5月と7月に実施された引換券配布では、花蓮県と新台北市の計607世帯が受け取り、生活用品から家電製品など、各世帯が必要なものを購入することができるようになりました。

 6月28日に受け付けを終了した「2024年台湾東部沖地震救援金」には28億9825万6045円もの支援が寄せられました。この救援金をもとに、日赤からは台湾赤あてにすでに10億5000万円を送金しており、残りについても追加送金を予定。台湾赤を通じてさらなる復興支援に活用される計画となっています。

ウェン・ルーセンさん(右から2人目)と救助ボランティア©台湾赤十字組織

台湾ってどんなところ?

九州よりやや小さい面積に人口約2342万人が暮らす台湾。今回の地震で最も大きな被害を受けた花蓮県は東部に位置し、東側に海、西側に山と、自然に恵まれた人気の観光エリア。大地震により、台湾でも有数の景勝地・太魯閣渓谷も閉鎖されるなど、主要産業である観光も大打撃を受けている。

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