子どもがぐんぐん成長する!「トレセン」 どんなことをするの? 自ら気づき、考え、実行できる子に成長する宿泊型研修
今年の夏も全国の青少年赤十字(JRC)でリーダーシップ・トレーニング・センター(トレセン)が開催されました。トレセンは子どもたちが自ら課題に気づき、考えを深め、実行する力を身につける育成プログラムで、多くは合宿形式で実施します。
紙面に掲載した取り組みの中から、日赤京都府支部の小学生と高校生のトレセンをより詳しく紹介します。
小学生のトレセン
7月27日(土)・28日(日)の2日間にわたり、京都市内の研修施設にて京都府青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センター小学生の部が開催され、62人の小学生が参加しました。
【7月27日(土)】
いよいよ、トレセンの開幕です!
保護者の方とお別れをし、初めて会う仲間たちに少し緊張気味の子どもたち。
これから2日間、どんなトレセンになるのか楽しみです。
『HR』
まずは、各ホームルーム(HR)に分かれ、自己紹介をします。
自分の目の前にいるのは2日間一緒に「気づき、考え、行動する」仲間。
「小学校はどこ? 何が好き? 」真剣にみんなの話を聞きます。
『赤十字概論』
赤十字の創設者アンリー・デュナンのことや七原則、赤十字マークがもつ意味について学びました。
『V・S』
V・S(ボランタリー・サービス)とは、お見舞いや募金活動など、利益を求めない自主的な「奉仕活動」のことですが、小学生の部では「みんなにとって必要なことを自分から進んで行うこと」として考えます。
各HRに分かれ、学校や夏休みの中で自分たちにできることを探し、みんなで話し合います。昼休みにみんなが気持ちよく遊べるようにするためにはどうしたらいいだろう?
夏休みに家でできるお手伝いって何だろう?
いろいろな意見が飛び交います。
『昼食』
1日目の昼食は、非常食体験です!
実際の災害現場では、お湯の確保が難しいことも。
水を入れると完成するアルファ米と温めずに食べられるカレーが昼食のメニュー。
掲示板に書かれた指示を確認し、みんなでカレーライスを作ってみます。
非常食ってこんなに美味しいの!と大好評の非常食体験でした。
『レクリエーション』
ここで一息、レクリエーションの時間です。猛獣狩りやホワイトアートなどのゲームを通して、仲間たちと親睦を深めます。
『国際人道法ワーク』
国際人道法について、京都府青少年赤十字賛助奉仕団の大平講師よりお話がありました。
国際人道法とは、紛争時に適用される国際的なルールのことで、一般住民を保護するためのものです。
イラストを見ると、一般住民が攻撃されている……これは大丈夫なの? それとも?
みんなで一緒に考えました。
【7月28日(日)】
さぁ2日目が始まります。
昨日は緊張した面持ちで会場に入ってきた子どもたちが、到着するとすぐにお友だちのもとへ駆け寄っていきました。
『先見』
まずは先見です。先見とは、指示を待つのではなく、自主的に先を見通して行動できる態度です。昨日の自分のことを振り返りながら、今日は1日どのように行動するかを考え、HRの仲間へ共有しました。
『献血セミナー』
京都府赤十字血液センターの職員が、小学生向けの献血セミナーを実施。
献血クイズは大盛り上がり!受講後、「献血がなぜ必要なのか分かった」「16歳になったら献血したい」との感想が聞かれました。
『救急法』
けがの手当てなどを学ぶ救急法の講習を受けます。講師は赤十字救急法指導員の松田さん。
三角巾を使った手当ての方法や、負傷者の運び方を学びました。最初は三角巾の使い方に苦戦をしていた子どもたちですが、お互いに教えあって、みんながマスターすることができました。
『フィールドワーク』
最後はフィールドワーク。2日間で学んだことを生かして、気づき・考え・実行する場です。
HRごとに協力をしながら、5つの関門でお題にチャレンジしました。
京都府青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターの過程を修了した児童全員に修了証がおくられました。
トレセン終了後、参加した児童からは
「協力とはみんなでまとまって同じ意見を出すことだけではなく、違う意見を出し合って決めることもまた協力なのだと思った」
「気づき・考え・実行するを学校でも実践したい」
など、素敵な感想が聞かれました。
高校生のトレセン
8月5日(月)・6日(火)の2日間にわたり、京都府支部にて京都府青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センター高校生の部が開催され、44人の高校生が参加しました。
【8月5日(月)】
夏休み真っただ中の高校生たちが集まり、トレセンが開幕!
『HR』
まずは、各HRに分かれ、自己紹介。
赤十字と出会ったきっかけは?
文化祭の出し物はどういうことをした?
おしゃべりを通してトレセンへのモチベーションを高めていきます。
『赤十字概論、VS』
赤十字概論では、赤十字の創設者アンリー・デュナンのことや七原則などについて学びました。赤十字運動の主役は「あなた」です!自分にできることは何か、考え、行動することこそがリーダーシップです。
V・S(ボランタリー・サービス)とは、お見舞いや募金活動など、利益を求めない自主的な「奉仕活動」のこと。2日目には、実践できるVSは何があるかを考えます。
『昼食①』
1日目のお昼ご飯は、非常食体験です!
みんなで作り方を共有しながら、お水を入れると完成するアルファ米の準備をします。お水を入れて60分間待ち、温めずに食べられるカレーをかけて、カレーライスの完成。
「温かい非常食は食べたことがあったけど、それと同じくらい美味しくて驚いた」と皆さん箸が進んでいる様子でした。
『ラオス赤十字社救急法支援事業』
救急医療やインフラの整備が不十分なラオスでは、地域住民による応急手当が重要です。そんなラオスで救急法の普及活動を行った、京都府支部・健康生活支援係長の近藤さんの経験を聴講しました。
ラオスでは、心肺蘇生やきずの手当など基本的な講習から、デング熱、マラリアを引き起こす虫刺されの対応など、その国に必要な講習が行われます。
生徒からは「その国特有の背景を考慮し、ニーズに応えることの重要性を知ることができた」との声が聞かれました。
『国際人道法』
国際人道法とは、赤十字マークを掲げた建物や乗り物には攻撃しない、生活の基盤を破壊しないなど、民間人保護のための国際的なルールを指します。グループワークでは「なぜ戦争は起きてしまう?」「国際人道法を守らない国にはどのような理由が考えられる?」と活発な議論が行われました。
最後に、「戦争の反対は『たすけあい』」とのお話があり、生徒からは「自分にもできることがきっとあると思えた」と明るい声が寄せられました。
『HR②』
長かった1日目も終わりに近づいてきました。今日印象に残ったことや明日の目標を話し合います。生徒たちは「今日は知識をつけて『気づき、考える』部分をしっかりできたと思う。明日は『行動する』部分について、自分が何をできるか考えたい」と振り返りました。
【8月6日(火)】
さあ、2日目です!今日は、どんな気づきがあるでしょうか。
『RCYプログラム』 (YABC・防災セミナー)
午前中は、RCY(Red Cross Youth/青年赤十字奉仕団)の皆さんによるRCYプログラムです。
※RCYって?(日本赤十字社 京都府支部)
YABC(Youth as Agents of Behavioural Change:行動変容の担い手としてのユース)は、赤十字七原則に関するセミナーです。
例えば、2人の目の前に1つのオレンジがあります。2人にはそれぞれそのオレンジをどうしても手に入れたい理由があります。
そんな時どうしたらいいのか?
片方だけがオレンジを手に入れたペア、両者とも手に入れられなかったペア、何とかして分ける案を考え付いたペアなどそれぞれで、他のペアの結果を聞き「そんな方法があったのか」と“はっと”何かに気づいた様子が印象的でした。
防災セミナーでは、避難所での物資の配分について考えました!
一人一人に役が割り振られ、話し合いの後に限られた物資の配分を行います。
「うちには、年老いた祖母がいるんです」
「けが人がいます!」
「子どもがわんわん泣いていて・・・」
など、それぞれ事情がありその中で優先順位をつけるのに苦戦します。
だんだんと話し合いの中で「じゃあうちはこれだけ水を持っているし、これは譲るよ」など、お互いの状況を考えて譲り合う高校生たちの姿がありました。
『昼食②』
2日目の昼食係は高校生です!
掲示板にて募集したところ、自ら手を挙げた有志の3人が食事の配膳、挨拶をしてくれました。
『活動計画』
各学校ごとに分かれ、今後のJRC部としての活動計画を立てます。それぞれ昨日今日と学び考えたことを受け、どのような活動ができるか、そのためにはどんなことが必要かを話し合いました。
全体発表では、他校の発表を聞いて、たくさんの質問が出され活発な意見交換が行われました。
「部員確保やJRC部の知名度をもっと上げたい」という発表に対し、自分たちの過去の経験をもとにアドバイスする姿などが見られました。
『まとめ』
最後の振り返り。
2日間を通して気づいたこと、考えたことを仲間と共有し、全てのプログラムが終了しました。各HR担任より修了証が手渡され、少し誇らしげな高校生たち。
この2日間で学んだことを各高校に戻って存分に発揮してくれることを期待します。