救急法指導員への道~令和6年度赤十字救急法指導員養成講習~

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みなさんこんにちは!
京都府支部広報担当の羽鳥です!

いつもは影の力となり広報活動に勤しんでおりますが、今回は私自ら、憧れの赤十字救急法指導員養成講習に挑戦しましたのでレポートします。
題して「救急法指導員への道」です。

救急法指導員に挑戦するには、救急法基礎講習(1日)、救急法救急員養成講習(2日間)の講習検定に合格し、なおかつ救急法指導員養成講習(事前研修・事後研修など延べ8日間)を受講し、最終検定に合格することで晴れて救急法指導員になることができます!

赤十字救急法を広く普及する指導員、その指導員誕生までの様子をお伝えします!

【事前研修】

8月16日(土)に行われた事前研修では、これまで学んだ基礎講習や救急員養成講習の知識・技術が習得できているかを確認しました。

正しい知識・技術を普及するためは、まずは自身が指導員になるための基礎を身に着けている必要があります。他の受講生からは、「以前受講した講習から期間が空いており、忘れている内容も多かった。」などの声が聞かれ、一度講習を受講して終わるのではなく、継続的に復習していくことの大切さが感じられました。

なかには、指導員になるために何回も講習会を受講している方もおられました。実は私も何回か受講してきました。

【本講習 9月14日(土)】

いよいよ本講習1日目が開始しました!!

緊張した面持ちで入室した受講生たち。これから5日間ともに奮闘する仲間と顔を合わせます。会社員、学校の先生、看護師、大学生、高校生まで、性別や年齢を問わず様々な受講生が集まりました。

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まずは、これから5日間お世話になる太田講師、山本講師、松田講師から挨拶がありました。

「我々は指導員を“養成”するために来ている。皆さんには、これから一緒に赤十字救急法を普及する仲間になってほしい」と力強いお言葉をいただきました。

①自己紹介

さあ、さっそく自己紹介の時間です。

3分という決められた時間の中でどのようなテーマで何を話すのか、実際の講習の導入にもあたる大切な時間です。まだまだ緊張した様子の受講生たちですが、この指導員講習を受けようと思ったきっかけなど、自身の想いを自分の言葉で話します。

「後輩育成のため」「救急救命士を目指す中で、、、」「阪神淡路大震災での後悔から」など救急法に興味を持ったきっかけは皆それぞれですが、自分なりの想いをもってこの講習に臨んでいることが分かりました。

私は、人前で話すのが苦手で3分間なんでもいいから自己紹介をしてと言われ、とても悩みました。
いざ話してみると案の定緊張して、2分ほどで自己紹介が終わってしまいガックシ、、、終了後には講師陣より「決まりごとはないから、自分のありのままを話したらいいし、話す内容は自由。」とフィードバックをいただいたので、次のスピーチでは、もっと自分のことを話せるよう頑張ります!!
私たちの自己紹介を一言一句聞き漏らさないという講師の姿勢がすごいです。

②講義・グループワーク

赤十字の歴史や講習、指導員の役割などについて学んだのち、グループに分かれ「良い講習・悪い講習」について考えます!
講習を行う中で何を大切にするか、楽しい雰囲気?教本への忠実さ?議論が白熱します!!

私は、自分が講習を受けたとき、一番嫌だったのって何だっただろう?そう考えた時に思い浮かんだのが、指摘ばっかりで難しい雰囲気の講習でした。楽しい雰囲気!とまではいかずとも、私は救急法が好きになってもらえるような講習にしたいなあと思いました。
グループの皆の話を聞くと、意外とそれぞれ大切に思う部分が違い、山本講師からは「これは特に正解不正解があるわけではないが、人を助けたいという思いを持って来てくれた受講生に対して誠実であってほしい」というお言葉がありました。熱いです。ぐっときました。

最後に、くじ引きで明日からの指導実習の担当箇所を決定し1日目が終了します。
ドキドキの瞬間。「どんな指導をしよう、何を準備しよう」明日からはいよいよ指導実習!
今夜は眠れそうにありません、、

【本講習 9月15日(日)】

さあ、2日目です!

朝早くから指導実習に向け練習に励む受講生たち。「昨日ヘトヘトになりながら指導実習の準備をして、朝起きたら炊飯器のお米がからからに炊きあがっていた。(水の入れ忘れ)」なんてことも!
2日目にしてすでに満身創痍です、、

実際の講習を想定し、受講生相手に午前中に学科(10分)、午後から実技(5分)の指導実習をします。
指導実習もいきなり行われるのではなく、前日に講師や指導員に相談するもよし、手技の復習をするもよし、ホワイトボードやアイテムを活用するもよしです。

<午前:学科>

私は「傷病者の寝かせ方・体位変換」をします。
実は昨日何をしようかと考えたときに、ここは実技でもやる部分なので、ホワイトボードを活用して図解するのがいいのではないかと準備しました。

さあ、いよいよ本番。
前日に、山本講師から伺った「声のトーン」「受講者への配慮」などのポイントを意識して話します。講師陣からのフィードバックやいかに、、!

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「ホワイトボードを使った意味はあったのだろうか。」山本講師のお言葉がクリーンヒットしました。
振り返ってホワイトボードを見てみると、「たしかに」と納得の画力でした(笑)

「声のトーンや受講者への配慮はよい、ホワイトボードを活用しようという姿勢もよいが、そのうえで、その活用の方法をもっと工夫してみてほしい」とアドバイスをいただきました。
講師陣はいつもただ「違う」と否定するのではなく、さらに良くなるにはどうしたらいいのかを一緒に考えてくださいます。

<午後:実技>

昼食を食べて少しリラックスしたら次はいよいよ実技です!

実技では、全習法(すべての流れを通して見せる方法)や分習法(ポイント毎に止めて説明しながら見せる方法)などを活用し、受講生が実際に練習できるようポイントを伝えます。

私は「保温」をやります!
実をいうと、実技実習にはあまり不安がありませんでした。昨日、練習していると先輩指導員がポイントを丁寧に教えてくださったからです。
受講生への見え方や伝え方は、ついつい説明していると言葉を難しくしたくなってくるので、とにかく「簡潔に」を意識しました。
講師陣からのフィードバックやいかに、、!

山本講師が一言、「いいですね。」 

やったーーーーーー!!と思ったのもつかの間、
「では、保温の際、もし毛布の長さが足りなかったらどうする?」全く予想していなかった質問に固まってしまいました。
絞り出した答えが、「頭を優先して保温する、もしくは足を折り曲げる。」
「じゃあ足は保温しなくていいの?抹消部位だけど。足は折り曲げちゃって体勢は大丈夫?」と聞かれ撃沈しました、、、、

講習の際には、受講者の方からどんな質問が来るか分かりません。日頃から教本の内容をしっかりと理解しておくとともに、もし分からなかったら確認して後で回答したり、他の指導員に聞いたりして回答するのも手だということを教えていただきました。

心残りも感じつつ、本日の指導実習は終了です。
明日の指導実習の範囲をくじ引きで決め、2日目が終了しました。

最後に、昨年指導員になった𠮷川指導員より「阪神・淡路大震災の時に耳の不自由な方に声を掛けられ、何も答えられなかったのがずっと心残りで手話を習い始めました。指導員になったら耳の不自由な人に向けた講習をやりたいと思い、今年それを実現しました。皆さんもどんどん講習に参加し、自分の想いを実現していってください!」と激励の言葉がありました。かっこいいです。感動しました。

【本講習 9月16日(月)】

3日目となる本日も、昨日に続き指導実習です。
昨日の指摘を受け、今日は秘密兵器を用意してきました、、、それは後ほどのお楽しみ。

始めは憂鬱だった指導実習ですが、他の受講生の指導を見て「そんなアイデアもあるんだ!」とか「聞きやすいなあ」とか考えていると段々アイデアが浮かんできて、考えるのが楽しくなってきました。

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今日の学科実習では、「気道確保・人工呼吸」をやります。
気道確保をなぜするのか、をどうしたらわかりやすく伝えられるだろうと考え、秘密兵器を用意しました!!

昨日のホワイトボードのリベンジです。

また、仰向けに寝ている時に、舌が落ち込み気道をふさいでしまうことをどう伝えようと思った時に思い浮かんだのが、いびきの例です。
私は普段いびきと寝言がかなり深刻な方なのですが、いびきも気道が狭くなり起こる現象なので、身近に感じてもらえるのではないかと考えました。

講師からの講評は、、、、「例え話というのは、一見分かりやすいようだが、的を得ていない例えは逆に受講生を混乱させることがある。いびきの例は、この内容に沿っていてよかった。」とのことでした!

また、「丁寧な指導の一方でやや時間がかかりすぎていたので、実技での練習も視野に入れて時間を使うとよい」とご指導をいただきました。
「そこまで考えて講習をされているんだ、、」と講師陣の配慮の深さにはいつも驚かされます。

<午後:実技>

午後は「前腕の手当」です。これは、救急法救急員養成講習を受講した頃から私が最も苦手としている手当で、くじを引いた瞬間から胃がキリキリキリキリ、、、、、、、、、

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ですが、ここでまた先輩指導員に助けていただきました。
教えていただいたポイントを押さえてやってみると、すっかりきれいにできるように!!

すごい!!偉大です。

あとは、今日も「簡潔に」「ポイントを押さえて」を意識してやるのみです。実技の指導実習は、問題なく終えることができほっと一息。
実習後に講師から繰り出される「ちなみに、、、」の補足情報はとどまることを知りません。講師陣の救急法の極め方は、もはやマニアです。

濃厚な3日間が終わり、皆しばしのお別れです。それぞれの職場や家庭に帰り、日常を過ごしながら来週の検定に向け、鍛錬の4日間です。

【本講習 9月21日(土)】

4日ぶりに顔を合わせた受講生たち。いよいよ本講習も残り2日となりました。

4日目の本日は、総合演習の運営をします。
救急法救急員養成講習の総まとめとして行われる総合演習では、実際の災害現場を想定し、これまで習ってきた知識や技術を使って救護にあたります。
受講生にとっても、かなりハードルが高い印象のあるこの総合演習ですが、いかに受講生たちに達成感を感じて帰ってもらえるか。運営側の難しさを感じました。

運営・傷病者・救護者の3つのグループに分かれ、実際に総合演習をやってみます。
運営側ではグループで話し合い、どんな想定にするかを相談します。私たちのグループでは、地震災害での救護を想定し、これまで習ってきた実技を駆使できる内容を考えました。

実際にやってみると、救助者の人数に対して明らかに怪我の程度が重症すぎて、全員の救護は不可能な状態でした。
そのまま時間が来てしまい、手当の途中で強制的に終了してしまうことに。

講師陣からは「このままだと、受講生が不完全燃焼で、できなかったという思いだけが残ってしまう。受講生の気持ちをもっと大切にしてほしい」とのアドバイスが。また、「安全管理ができていない。傷病者の配置や同線など、講習のなかで怪我をしないような配慮が必要だ」とのお話がありました。

山本講師からは常に「安全第一」を教わってきました。何よりも受講生が怪我無く無事に帰れることが一番大切だと。
それが身に染みた総合演習でした。

いよいよ明日は最終検定です!泣いても笑っても明日が最後!
やり残したことがないようにぎりぎりまで練習して帰ります。

【本講習 9月22日(日)】

さあ!5日目の最終日です!

まずは、5日間毎日やってきた朝のスピーチの時間です。
1日目の自己紹介では、2分で撃沈してしまった私ですが、最終日は3分間しっかりと思いの丈を伝えることができました。
これもひとえに、いつでも笑顔で頷きながら聞いてくれた仲間たちのおかげです。
この5日間で、人前で話すことが嫌いじゃなくなった気がします。自分の想いを人に伝えられることの嬉しさを知りました。

「我々は指導員を“養成”しに来ている」という講師陣の言葉通り、講師からは5日間の間で検定に備えたあらゆることを教えていただきました。
ですので、あとは当たって砕けるのみです!(砕けたくはないですが、、、)

さあいよいよ検定です。
学科では、教本理解だけでなく、講習・指導員の役割についてや自身の意見が問われます。
実技では、実際を想定した一次救命処置や、これまで習った手当の方法が試されます。

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ドキドキの検定でしたが、なんとか学科・実技ともに、全力を出し切ることができました。
もちろん「もっとこうすれば、、」と思った部分もたくさんありましたが、今自分にできる精一杯ができたので後悔はありません。

検定が終了すると、どっと力が抜けてきました、、、
これまでずっとペアとして一緒に練習してくれ、明るく盛り上げてくれた仲間たち、そしてここまで引き上げてくださった講師の皆さんへの感謝があふれ、ちょっとだけ泣きそうになりました。

太田講師より「皆さんお疲れ様でした。本当に素晴らしかったです。ですが、ここで終わりではありません。資格は取っただけでは意味がありません。ぜひ指導員になったあかつきにはたくさんの講習に参加し、一緒に救急法を盛り上げていきましょう!」と熱いお言葉をいただき、令和6年度赤十字救急法指導員養成講習が閉会となりました。

おわりに

実は、一番初めの事前研修の面談で太田講師に「なぜ、指導員になろうとおもったのか、職員としてなのかボランティアとしてなのか。」と聞かれ、何も答えられずに3分くらい沈黙して面談が終了してしまうという事件がありました。

指導員研修を経て、今ならしっかりと答えられます。

私は普段総務課の職員として働いているのですが、入職してから関わってきたボランティアの皆さんの志の高さや行動力にいつも感銘を受けていました。その姿をもっと広報担当として発信していきたいと思っていたのですが、力不足で伝えきれていないことが多かったです。

救急法の指導員となり、自分自身がもっと赤十字の事業を知り、行動できる一員となることで、よりよい広報活動ができるのではないかと考えました。そして、皆さんと一緒に、職員としても、ボランティアとしても赤十字を盛り上げる一員になれればと思っています。

この記事を読んでくださった皆さんにも、ぜひ“命を守る”赤十字救急法を一緒に学んでいただければ嬉しいです。