心に寄り添う大切さを、伝えたい。
地域赤十字奉仕団研修推進委員 有賀 美紀子さん
Q.どのような活動をされていますか?
地域赤十字奉仕団研修推進委員として、県支部で用意しているプログラムを活用して、上伊那や諏訪、松本エリアの地域赤十字奉仕団の研修を行っています。いくつかプログラムがあるのですが、主に家庭や地域における防災を楽しく学ぶ「防災啓発プログラム」を通して、ともに助けあえる地域づくりを目指した奉仕団研修を心掛けています。家庭内での対策や備え、避難所における避難者の対応はどうしたらいいのだろうか…ゲームなどの体験を通して、多くの気づきが生まれ、改めて、団としての活動を考えるきっかけになったという感想もいただき、私自身も毎回、学ばせていただいています。
私は長年、地域赤十字奉仕団のメンバーとして活動してきましたので、その経験を踏まえ、少しでも多くの皆さんと赤十字の活動を共感できたら、と思い、この活動に取り組んでいます。
※地域赤十字奉仕団研修推進委員とは
県支部や地域で行う奉仕団研修会の第一線に立って、活動に必要な知識や技術等を指導しているボランティアで、奉仕団員経験者や奉仕団活動について学識経験のある方から支部長が委嘱している方
Q.有賀さんのこれまでの奉仕団活動を教えてください。
私が赤十字活動に参加するようになったきっかけは、24年前に、居住地である辰野町の奉仕団の活動に参加したことがきっかけです。最初はよく分からずにやっていたのですが、活動しているうちに、赤十字への共感や活動のやりがいを感じるようになり、地域の分団長、辰野町の副委員長、委員長とハマっていきました(笑)
辰野町赤十字奉仕団は、消防団と連携が取られているので、緊急時には、急に呼ばれることもあり、家族の理解がないとなかなか難しいこともありました。実は私の母も、同じように奉仕団活動に参加していて、副委員長までやっているんです。母が、困っている人のために自分がお役にたてることをと、一生懸命にやっている姿を見ていたので、小さい時からボランティア活動には関心があった、ということかもしれませんね。
ある程度活動をやっていくと、責任感やこだわりも出てきて、赤十字をもっと深く知りたいな、ということもたくさん出てくるようになり、県支部で行われる研修会に参加をしたり、県支部から講師を派遣してもらって地元で研修会を開いて学んだりしました。研修会の中で話をするときに、もっと自信を持って話ができるといいな、との思いから、大学の公開講座で「防災士」の資格を取ったり、赤十字救急法指導員の資格を取るなど、いろいろ学びましたね。
奉仕団のみなさんは、仕事や育児、介護をしながらやってくださっている方も多くいて、1人だけでは活動ができないこともたくさんありますよね。でも奉仕団は「団」なので、団結をもってみんなで協力をしながらやれば、できることは何倍にも何十倍にも広がります。特に災害時に被害を最小限に食い止めるためには、ひとり一人の備えが必要ですし、自助から共助へと助け合える地域づくりをしていくためには、知識や技術も必要になってくる。だから、みんなで助け合いながら、赤十字の理念である「人道と博愛の精神」をもって、家族を守り、地域のためにできることを活動していきましょう、ということは、よく研修会でもみなさんにお話させていただいています。
Q.いまの活動はこれまでの経験とどう関わっているのでしょう?
辰野町赤十字奉仕団は、消防団ともよく連携が取られているので、災害時の役割分担がしっかりできていました。奉仕団はあくまでも消防団の後方支援なので、救助や医療というよりも、炊き出しがメインですが、奉仕団組織がしっかりできているので、炊き出しの準備は本当に早かったんです。だから、いざという時に温かいおにぎりやお味噌汁を、いち早く現場にお届けできるんですよね。食事は「温かい」というだけで、人々のお腹が満たされるばかりではなく、こころまで救われた、癒されたと、とても喜ばれます。大変な時でも、そうやって喜んでもらえて、少しでも元気になってもらえると、やってよかったな、これからも続けていかなくては、と思えるんですよね。
ある時、家族が行方不明になってしまった、と緊急連絡が入りました。奉仕団として、もちろん炊き出しもしたのですが、そのときは、食事も喉を通らないご家族と一緒に時を過ごしました。後日、奉仕団員が一緒にいてくれたお陰で、心の支えになった、ありがたかったと御礼の連絡をいただきました。奉仕団は炊き出しのイメージが強いかもしれませんが、その時に自分たちができることは何かを考えて行うことで役に立てることだってあるんです。
救助活動とか、医療活動だけじゃなく、そうやって心を満たすこと、心に寄り添うことも大事なんだということを、私は奉仕団活動の経験を通じて学んだので、それをもっと多くの人たちに伝えていきたいと思っていいます。
奉仕団はボランティアなので、謝礼金をいただくことはありません。でも「ありがとう」という感謝とねぎらいの言葉をいただくだけでで、次も頑張ろう、と思えるんです。
Q.研修推進委員として思うことを教えてください。
各地に防災啓発プログラムの研修に行くと、参加されたみなさんから「勉強になった」「やってよかった」と言われます。やはりみなさん知らないことがたくさんありますから、体験型で楽しく学べるのはいいと思います。研修会の中で、自分の体験も踏まえてお話しすることで、参加された方の学びが少しでも深まれば嬉しいです。
最近は、地域奉仕団だけではなく、小・中学校やシニア大学からも研修の要請があり、伺うことがあります。みんな一生懸命考えて、取り組んでくれます。
特に子どもたちに学ぶ機会が提供できるのはうれしいですね。子どもたちの感覚はとても新鮮です。未来を担う子どもたちが、将来起こり得る災害に対して、正しい知識をもち、自ら考えて、危険から身を守る行動をとることができるようになれば、未来の被災者を一人でも減らすことに繋がっていくのだ信じて、指導しています。
近年、避難所の在り方も、どんどん変わっています。これからは、これまでのことに加えて、感染症対策などもやらないといけません。私自身、日々、勉強を続けなくてはいけませんが、少しでも多くの方に、地域の赤十字活動を身近に感じてもらうため、今後も、この活動をがんばって続けていきたいと思います。
県民のみなさんからいただいた活動資金は、助け合える地域づくりの運用のためには欠かせないものであり、日々感謝しています。赤十字奉仕団は、地域にはなくてはならない組織ですし、このような活動を続けていくためにも、今後もご支援をお願いできればと思います。