フィリピン・セブで被災者用住宅135棟の建設完了-建てているのは家だけでなく、人びとが暮らす「まち」でした-
2013 年11月、台風「ハイエン」がフィリピンを直撃し、国民の6人に1人が被災、人々の生活に大きな傷跡を残しました。
2014年4月から日本赤十字社(以下、日赤)は、フィリピン赤十字社と協力し、住宅の修復と建設、生計の向上、地域防災、地域保健、水と衛生、の5つの分野でセブ島北部の被災者を支援してきました。そしてこの3月、計画していた被災者用住宅135棟すべての建設を終えました。セブで調整員を務める吉田拓が報告します。
「つながり」をつくる
入居世帯と用地を決める、資材を調達する、建設労働者を確保するといった過程で、「日赤は、被災者、現地の住民の皆さん、そしてフィリピン赤十字社のスタッフと一緒に、よりよい家づくりとともに『つながりづくり』を目指しているのだ」と実感することっがたびたびありました。
一緒に働くフィリピン赤十字社は、被災者用住宅も「赤十字が被災者に提供するもの」ではなくて、「入居予定の世帯とそのご近所さんがつくりあげるもの」にしようとしています。
被災者用住宅の入居世帯は、幼い子を一人で育てているシングル・マザーや、交通が不便な山の中に住まざるをえないお年寄などを優先しました。こうした被災者が生きていくためには、住む家だけではなく、ご近所との助け合いを大事にしないといけないことが多くあります。このため、住宅建設の際には、近隣の人びとと一緒に、建設資材を用地まで運び、家を建てる工程に参加してもらうことを心がけました。
「くらし」をつくる
家を作り終えた今、私たちが目指しているのは「くらしづくり」です。被災した人びとがより暮らしやすくなるように、世帯生計・保健・水と衛生の向上を目指しています。最近では、日赤から奨学金を受けて職業訓練校に入った若者50人のうち、卒業後6カ月以内に6割以上の若者が就職した、という嬉しい知らせがありました。失業率の高いフィリピンですが、訓練内容を、成長産業である観光と建設の即戦力となるハウス・キーピングと溶接の2分野に絞ったこと、職業訓練の修了後も、日赤チームの生計支援を担当している現地職員スタッフが、奨学生の就職活動を根気強く支援してきたことの成果です。
今後の「地域創生」
そして、現在直面している課題は、いかに「まちづくり」をするか、です。
フィリピンは、年率平均5%以上で経済成長を続けており、マニラやセブなどの大都市では膨大な働き手を必要とする一方で、農漁村は就業先に乏しく、インフラ整備も遅れたままです。
被災者の中には、身体に障がいがあったり、これまで農漁業に従事していた等、若い世代であっても、地元から一歩も出たことがないという人もおり、セブ北部のような地方で、自力で生計を立てていくことが難しくなっています。
私たちのプロジェクトでは、被災地域全体を盛り上げる活動を担っています。
しかし、現地職員の若者たちの多くは、都会の中流階級出身者であり、地方の暮らしぶりについて考えたことがほとんどなく、どうすれば被災者が生計を改善し、なおかつ地域の活性化につなげられるか、手探りで模索しています。
そのため、わたしたち日赤の要員は、地元のニーズを調べてビジネス・プランを議論する過程でフィリピン赤十字社の若い職員たちを積極的に巻き込み、アイディアを引き出すことを心がけています。
2016年も折り返しを迎えようとしており、復興支援事業は完了時期が近づいています。'Build Back Better'、すなわち被災者の皆さんが被災前よりより良い暮らしを築けるように、という考え方に沿って、最後まで全力で努めて参ります。
本ニュースのPDF版はNewsNo.18_CebuHaiyen_LLH.pdf
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