「アフリカ開発会議(TICAD)」に赤十字代表が出席

「アフリカ開発会議(TICAD)」に赤十字代表が出席

~地域保健ボランティアの保護と強化を訴える~

2016年8月27日~28日の2日間、ケニア共和国の首都ナイロビで「アフリカ開発会議(TICAD)」が開催され、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)、そして開催地のケニア赤十字社の代表が出席しました。

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アフリカ地域で初の開催となったTICAD ©Naoko ISHIBASHI/IFRC

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赤十字の展示ブースアフリカ各国での様々な支援活動を紹介 ©Naoko ISHIBASHI/IFRC

最前線で活動する赤十字ボランティア

TICADでは、持続的なアフリカ地域の発展のために、農業、工業、サービス業などの幅広い分野で、持続的な経済開発と構造改革を進めて行くことが協議されました。その一方で、人びとが経済開発の恩恵を受け、より良い生活を送るためには、全ての人びとに行き渡る質の高い保健システムの構築や、暴力のない平和で安定した社会造りが必要であることが議論のテーマとなりました。

会議に合わせて、ICRCのペーター・マウラー総裁は「私達は、たとえ紛争や暴力の下でも、人びとに行き届く保健システムを作るために活動を続けてきました。全ての人びとが、医療や保健サービスを受けられるようにすることは、最も重要で優先されるべき課題です。そのためには、保健サービスに従事する人びとや医療機関、患者を搬送する救急車などへの武力攻撃が行われないよう、関係機関や政府に強く働きかけていくことが必要です」と述べ、強靱な保健システムの構築には、国際人道法の遵守が不可欠であることを強調しました。

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コミュニティーで最も必要な支援について議論©Naoko ISHIBASHI/IFRC

こうした保健システムが構築されるためには、政府が法律や制度を整えるだけでは不十分です。アフリカ地域では、経済発展の一方で、都市と地方、富裕層と貧困層の格差が広がり、人間として健康に生きるための最低限の保健サービスさえ受けられない人びとが大勢います。そうした人びとは、ひとたび感染症や災害が発生すると、真っ先に深刻な被害を受けやすい立場にあります。このような社会的に弱い立場に置かれた人びとのいのちと健康を支えるためには、地域に広がる草の根の取り組みを強化するための投資が極めて重要です。

連盟のエルハッジ・アズ・シー事務総長は、保健システムに関する分科会に出席し、「赤十字の強みは、人道支援の最前線で活動するボランティアの存在です。彼らは、支援が必要な人びとと地域の医療サービスの橋渡しを行い、また人びとのニーズと公的な保健サービスとのギャップを埋める役割を担っています。そして、災害や感染症が発生すると、訓練を受けたボランティアが事態を恐れず、誰よりも早く現場に駆けつけて支援の手をさしのべます。彼らは、緊急事態が起きる前も、起きた時も、そして事態が収束した後も、地域の人びとと共に活動しているからなのです」と発言しました。

草の根レベルからの保健システムの強化を目指して

2日目の午前中には、赤十字とアフリカ連合の共催で、公開シンポジウムが開催されました。テーマは「草の根レベルからの保健システムの強化」。ICRC、連盟、ケニア赤十字社からの代表に加えて、JICA、ケニア政府の保健省、アフリカ連合からもパネリストが登壇し、会場は国連機関、アフリカ各国の政府関係者、保健分野を専門とする人道支援機関などからのおよそ80人の参加者で埋め尽くされました。

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TICAD会場内での赤十字のシンポジウム ©Naoko ISHIBASHI/IFRC

シンポジウムでは、エボラ出血熱やコレラ、黄熱病などの感染症の脅威に立ち向かい、僻地や貧困に苦しむ人びとの健康状態を改善するための、地道な取り組みが紹介されました。「アフリカでは150万人以上の赤十字ボランティアが活動の主体となっています。この膨大な数のボランティアの力は私たちの強みです」と連盟アフリカ事務所代表は伝え、特に、公共の保健システムが整っていない地域で、赤十字などのボランティアが家々を回って体調を崩している家族がいないかを聞き取り、その地域の感染のリスクを図式化(マッピング)して予防策を立てるなどの、地域に根ざした対策がいかに有効であるかを強調しました。

一方で、本来政府などが責任をもって行うべき国民への保健サービスが「草の根」の名のもとに地域のボランティアなどに任せきりになることは避けるべきであり、そうした最前線の地域ボランティアの活動、医療や看護の専門スタッフ、政府や地方行政、そして日本などの援助国が責任を分担し、連携してより良い保健システムを構築するために努力するべきことが確認されました。

会期中、赤十字の代表は、日本政府の岸田文雄外務大臣や、塩崎恭久厚生労働大臣との会談を行い、TICADの終了後も、日本の人びととアフリカで支援を必要とする人びとをつなぐために、連携して人道的課題に取り組むことを確認しました。

赤十字はこれからも、アフリカ地域の中で、感染症や自然災害の脅威にさらされ、最も弱い立場にある人びとへの支援を行い、またこうした人びとが自ら問題に立ち向かって行くことが出来るよう、継続的な支援活動を行います。

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