フィリピン:セブ北部での新たな歩み

超大型の台風30号「ハイヤン」がフィリピン中部(ビサヤ地方)を直撃し、甚大な被害をもたらしたのは、2013年11月のことでした。被害の深刻さはすぐに報道を通じて世界に報告され、日本赤十字社(以下、日赤)にもおよそ18億円もの救援金が寄せられました。そのご支援を得て、日本赤十字社は、発災直後から緊急対応ユニット(ERU)による医療救援活動を実施し、さらに被災地の中でも救援団体が少なかったセブ島北部にて、住居・保健・水衛生・生計・防災の5分野を軸とする復興支援を実施して参りました。
その復興支援活動は2016年末をもって完了し、2017年1月からは引き続き地域社会の保健衛生の向上を目指して、新たな地域開発の支援を行うこととなりました。
現地統括者として、黒川 寛子看護師(日本赤十字社医療センター)が、本年1月にセブ島北端のボゴ事務所に赴任しました。

新しく事業地に追加された地域は

オリエンテーションの様子。左端が黒川看護師

オリエンテーションの様子。左端が黒川看護師

新しい地域保健衛生事業では、セブ島北部地域に加え、その周辺に点在する島々を事業対象地としています。

今回の事業対象地域は、昨年行われた事前調査により、トイレが自宅に設置されていない、安全な飲料水が手に入りにくい、病院・診療所までへのアクセスが悪い、フィリピン国内の中でも医療・保健のインフラ整備が遅れている地域が選定れました。また、小さな島々では、すべての飲料水を島外からの購入に頼る島も含まれます。

これからおよそ2年をかけて、復興支援では手の届かなかった地域にも、保健衛生の知識が浸透するよう、フィリピン赤十字社と力を合わせて活動を進めます。

事業関係者が一堂に会して

4月下旬、フィリピン赤十字社と日赤は、合同で事業開始に伴うオリエンテーションを開催しました。
オリエンテーションは、事業の全体像を関係者に共有する「説明会」と、事業に従事するにあたっての注意事項を理解してもらうための「研修」を兼ねています。
参加者は、事業に関わる赤十字のスタッフのほか、事業対象自治体の保健所医師・看護師、教育委員会が含まれます。復興支援の対象地域ではなかった自治体も参加し、初めて顔を合わせる人もいました。
オリエンテーションでは、4日間にわたって今後の事業展開にかかわる活発な議論が交わされ、参加者全員で事業目標や今後の行動計画を共有しました。

この事業は、村落部の住民の意識発 を進めて、住民自身による保健衛生活動を進める事業なので、保健衛生に関する知識をもち、集落で率先して働く保健ボランティアひとりひとりの熱意が欠かせません。今回のオリエンテーションにより、行政機関を含む事業に関係する組織が揃って「顔合わせ」が出来、また共通認識をもつことが出来ました。

ca新たに事業地に追加された島の船付き場にて。

ca新たに事業地に追加された島の船付き場にて。のどかな南国の浜辺のように見えるが、この島は慢性的に水不足と水質の悪さに悩まされており、水由来の疾患予防は欠かせない

この後は、いよいよ活動の中心となる村落へ入り、事業のけん引役となる保健ボランティアの募集と育成に入ります。

さらに、今月5月には、この新たな事業を後押しする一人として、日赤から間 由佳看護師(武蔵野赤十字病院)が赴任します。
間看護師は、これから6カ月間黒川看護師を補佐し、事業対象村落の住民との調整など、活動の最前線で働くことになります。

新規事業は、ここに住む人たちを主役とする事業です。保健ボランティアの働きかけによって、住民には、支援を一方的に受けるのではなく自分たちの健康を自分たちで守るという意識を持ってもらうことが大切です。

最初は、「主役は自分たち」という意識もってもらうことは簡単なことではないでしょう。
しかし、それだけ、地元の人たちとの対話が増え、活動の喜びも増えます。
台風災害の被災地への復興支援は終了しましたが、赤十字はこれからもフィリピンでの取り組みを支えてゆきます。今後も応援をよろしくお願いします。

●赤十字活動へのご支援を受け付けています
http://www.jrc.or.jp/contribute/support/

〔お振り込みについての連絡先窓口〕
日本赤十字社組織推進部海外救援金担当 TEL 03-3437-7081 FAX 03-3432-5507

本ニュースのPDF版は17 フィリピン・セブ北部地域保健衛生事業開始.pdf