おしらせ:核兵器廃絶を訴える赤十字会議の開催
核兵器の禁止と廃絶を巡っては、国連の枠組みにおいて、核兵器を禁止するための条約制定に向けた交渉が進んでいます。2017年3月にニューヨークで開催された第1回交渉では、条約の原則と目的や禁止する範囲などについて参加国で意見を交わしました。各国の意見を集約した条約草案には、前文に「ヒバクシャ」の文字が盛り込まれ、核兵器の使用や開発などを広く禁止する内容となっています。6月15日からは第2回交渉が開始され、条約成立に向けて議論が加速する見通しです。
赤十字・赤新月運動は、この核兵器禁止条約の制定に向けた潮流の後押しとなるべく、また今後の赤十字全体の活動の方針を協議する機会として、長崎において核兵器の禁止と廃絶に向けた国際赤十字・赤新月運動会議を開催しました。
35カ国から約80名の参加者が核兵器の禁止・廃絶を議論
4月24日から3日間、長崎にて行われた核兵器の禁止と廃絶について議論する国際赤十字・赤新月運動会議には、35カ国の各国赤十字社・赤新月社の代表、約80 名が集いました。会議は赤十字国際委員会(ICRC)と日本赤十字社(以下、日赤)が共催し、核兵器の問題に対する多様なバックグラウンドを持つ国の参加者が、様々に意見を交換しました。
会議の冒頭、国際赤十字・赤新月社連盟会長を務める日赤の近衞忠煇社長は、6月の第2回交渉会議を念頭に、「核兵器禁止条約は赤十字・赤新月運動の理念と合致しており、何としてもこの条約が実現する絶好の機会を逃してはなりません」とあいさつ。また、ICRCのクリスティーヌ・ベーリ副総裁は、「私たちは今、重大な岐路に立っています。赤十字・赤新月運動が(核兵器禁止条約の発展に向けて)声を上げ続ける責務を担っているのです」と赤十字が核兵器廃絶を訴える重要性を強調しました。
会議中、参加者は、長崎原爆資料館を訪れ、原爆投下の歴史や被爆の惨状、核兵器開発の歴史を目にしました。また、被爆者の証言に耳を傾け、長崎への原爆投下から72年を経た現在も被爆に起因する病気に苦しむ人々の存在や治療が続けられていることを知りました。
一方、アフリカや中央アジア、太平洋地域などの参加者からは、同地域で数十年にわたって核実験が実施された歴史とその結果として長期に及ぶ人的・環境的な被害が発生したとの報告がありました。
核兵器の被害に遭い、犠牲となった人々に思いを馳せ、全ての参加者は原子爆弾落下中心地碑へ献花を行いました。
赤十字・赤新月運動の方針「長崎行動計画」の採択
3日間の会議を終え、採択された「長崎行動計画」には、各国赤十字社・赤新月社がそれぞれの政府と対話を行い、核兵器禁止条約制定のための交渉への参加を促すことや、核兵器がもたらすリスクを再認識し、早急なリスク軽減措置を求める内容が盛り込まれました。また、若い世代の取り組み支援や若い世代に対する啓発の必要性も確認されました。
今年11月には、国際赤十字・赤新月運動代表者会議において、核兵器の禁止と廃絶に向けた新しい決議及び4年間の赤十字・赤新月運動行動計画が採択される予定です。