ルワンダ:1994年の内戦を乗り越えて
~今秋、現地を訪れた吉田千有紀看護師長(日赤和歌山医療センター)が報告します~
1994年の大虐殺(ジェノサイド)により、200万人以上の難民が周辺国に流出しました。内戦によりルワンダの産業や経済は深刻な打撃を受けましたが、内戦終結後、200万人近くの難民が帰還し、現在国の復興に取り組んでいます。しかし、今でも国全体の電力需給率は20%に過ぎません。また、安全な水や衛生的なトイレの普及率も低く、衛生環境の整備やそれに対する住民の意識改革が課題のひとつです。
この課題を解決するため、日本赤十字社(以下、「日赤」)は、国際赤十字・赤新月社連盟を通じて、災害や病気に強い社会を住民自身の力で造るために、メディアを通じて防災や疾病予防の健康教育活動を支援しています。
生まれて初めて観る映画・・・
アニメ映画を通じた健康教育の様子
ルワンダ赤十字社(以下、「ルワンダ赤」)は、日赤の支援を通じて、村々を回り、防災や保健に関するアニメ映画を通じた防災・健康教育も行なっています。今日は、初めてこのアニメ映画を上映する村にやってきました。
10名の赤十字ボランティアは、機材の組み立て、映画の放映、健康教育の方法などの訓練をすでに受けているので、手際よく準備をしていました。また、単に映画を放映するだけではなく、映像から流れるメッセージを住民により理解してもらえるように、クイズやゲームを取り入れて工夫しています。
今日のテーマは、汚れた水や手を媒介にしてうつる病気の予防です。上映が始まると、子どもも大人も、目を大きく見開いて、じっと映画を観ていました。生まれて初めて映画を観た子どもも多く、映像から伝わったメッセージをしっかりと受け止めていました。
この活動を担当するボランティアの一人が「日赤に支援していただいた機材を大切に使っています。スピーカーや変圧器を持って村を移動するので、とても重くて大変ですが、映画を楽しみにしている子どもたちを見ると頑張って続けていこうと思います。この活動をきっかけに、もっと村が明るく、人々が健康になることを願っています」と語ってくれました。
ラジオ放送・・・ それはとても身近な娯楽であり、人々の情報源
ルワンダの人々にとって、ラジオ放送は娯楽の一つです。その娯楽を活かして、ルワンダ赤は日赤の支援で、防災や疾病予防の健康教育を実施しています。
ルワンダ赤支部の広報ボランティアのヴィンセントさん(37歳)は、内戦終結後に帰還民としてルワンダに戻ってきました。現在は、小学校の教師として働く傍ら、月に2回の赤十字ラジオ番組を担当しています。ラジオ番組の題材は、支部赤十字ボランティア委員会で構成されるメンバーで決められて、これまでに防災活動、伝染病や病気の予防、健康的な栄養の摂り方などの番組の製作に携わってきました。
ヴィンセントさんは、
「ルワンダの人々にとって、ラジオ放送はとても身近な娯楽の一つです。番組を担当するようになって、街頭インタビュー、携帯電話やご意見箱などから、地域のさまざまな情報や住民の意見をもらえるようにもなりました。時折、災害情報なども入り、赤十字ボランティアが救護活動に出動したということもありました。赤十字が住民の健康を支えていることがメディアを通して伝わってきて嬉しいです。日赤の皆さんのご支援のおかげだと思います。とても感謝しています。」と話します。
日赤は、これからもルワンダでメディアを通じた地域での健康促進事業の支援を続けていきます。