バングラデシュ南部避難民※支援:ジフテリア対応

日赤は、9月から緊急支援を継続しています(写真で見る活動はこちらから)今号では、現在感染が広がっているジフテリアへの対応について、赤十字の活動をご紹介します。

※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。

ジフテリア、避難民のさらなる困難

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診察する中司医師(武蔵野赤十字病院)

ジフテリアは、日本ではもう20年近く発生の報告がない感染症ですが、罹患すると命にかかわることのある重大な感染症です。世界保健機関(WHO)によると、感染者数は2,248人、うち死者は26人に上ります(12月23日付発表)。日赤医療チームの中司医師(武蔵野赤十字病院)はその脅威を語ります。「このジフテリアが、避難民の間に広がりつつあります。避難生活が極めて過酷であることや、これまで適切な予防医療を受ける機会を与えられなかった等の理由により、感染症が避難民にさらなる困難をもたらしています。主な症状はのどの痛みや腫れがあり、心臓や腎臓に障害を及ぼすこともあります。インフルエンザのように飛沫を介して感染が広がります。現地では、細菌検査が出来ないので、のどの診察は診断のための非常に大切です。私達医療者は早期に診断して適切な治療につなげる事により、より多くの避難民の方々の生命を守りたいと考えています。」

12月16日からは、ジフテリア感染者とその家族に感染を広げている可能性があるため、家庭訪問も開始しています。担当する橋本看護師(福岡赤十字病院)は、「診察した患者と濃厚接触があるとみられる方々に症状の有無、内服状況、予防接種の有無などについて聞取り調査し、拡大予防につなげています。」とその活動について語ります。

24時間体制のジフテリア対応を開始します

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15歳の患者を診察する山田医師(大阪赤十字病院)

仮設診療所で24時間体制の診察を新たに開始するため、日赤医療チームはこれまでの巡回診療やこころのケア活動を実施する傍ら、チーム全員がそれぞれの持ち場でスムーズな開始に向けて、次々と準備を進めています。

12月半ばに緊急派遣された感染症専門の古宮医師(日本赤十字和歌山医療センター)は、ジフテリア対応について調整するWHOの会議などに出席し、日赤が運営する仮設診療所の対応について検討、体制を構築しました。「日赤はジフテリアの対応を実施している数少ない団体の一つです。日赤の仮設診療所は、キャンプの縦貫道路に面しており、アクセスの面でも、また医療の質が高いことからも、避難者や支援団体からの期待が高いです」と、古宮医師は日赤診療所の重要性について語ります。65万人にまで膨れ上がった避難民に対応することは容易なことではありません。広大な避難民キャンプにおいては、各機関や団体と調整を行ってこそ、効率的に、適切な処置を提供することが出来る、と古宮医師は語ります。

ボランティアの健康も守る赤十字

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村上医師(熊本赤十字病院)と桂川看護師(名古屋第二赤十字病院)は、バングラデシュ赤新月社の医療スタッフを指導しながら予防接種を実施

現在、避難民の方々で日赤の医療チームに参加しているボランティアは50人近く。彼らは、診療所の受付や警備、また通訳などだけでなく、こころのケア活動などでも日々活躍しています。

特に言語は、質の高い医療の提供に欠かせないものです。避難されている方々の生活習慣など文化的背景にもなじみのうすい日赤要員は、良好な関係を構築しながら活動を行うにあたり、避難民の方々自身の協力を得ることが大きな支えとなっています。
ボランティアの登録など活動調整にあたる田山要員(日赤本社国際部)は語ります。「診療所には、毎日ジフテリアの疑いと思われる患者さんが来院するため、ボランティアには予防接種を実施しました。これまで、患者さんと接することに不安はないか何度か聞いても彼らは『大丈夫、大丈夫』と言って毎日、快く活動に取り組んでいましたが、接種後は『日赤にとても感謝している。これで私たち自身や家族、コミュニティをジフテリアから守りながら、医療支援活動に参加できる』とこれからの活動への意気込みを語りました。」
国際赤十字・赤新月社連盟は、2017年11月までその会長を務めた日赤の近衞社長のリーダーシップのもと、人道活動に従事するボランティアの権利、義務、保護などの必要性を謳ったボランティア憲章を採択しました。ここバングラデシュのボランティアは、自らが避難民という人道活動の受益者でもあり、避難民の相互扶助に貢献し、そのレジリエンス(回復力)を高める存在です。

日赤は彼らボランティアとともに、今年3月まで医療チームの活動を続ける予定です。

避難民の数は今もなお増加しており、その数は65万5千人に上ります(12月18日国連発表)。先が見えない避難生活が続く人々のニーズに応えるため、今支援の手を止めるわけにはいきません。
皆さまのあたたかいご支援が、避難民の方々の生きるチカラに繋がります。

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