核兵器禁止条約の採択から1年
一年前の2017年7月7日、ニューヨークの国連本部で122ヵ国の賛成のもと、核兵器禁止条約が採択されました。これまで国際法で明確に禁止されることのなかった唯一の大量破壊兵器である核兵器が違法であると認識され、「核兵器のない世界」へ、歴史的な一歩を踏み出したのです。
これまでの赤十字の取り組み
1946 年から2011 年までの間、赤十字の国際会議の中で核兵器を意識した決議が計15 回も採択されています。
1954 年の大洋州ビキニ諸島での核実験以後、赤十字は、当時の国際情勢下では核兵器の禁止を実現することは困難であるとの認識に立ち、真っ向から禁止を打ち出す路線を修正し、「どうすれば一般文民、傷病者、捕虜、病院その他の施設などの保護を全うすることができるか」という赤十字の実際の活動に結びつけ、大量破壊兵器の一部として核兵器を禁じるという方向性にシフトしていきました。
1996年には、国連の司法機関、国際司法裁判所で核兵器の合法性の問題が取り上げられました。裁判所の見解は、核兵器の威嚇・使用は、「国家の存亡にかかる自衛の極限状態において合法か違法か、結論を下すことはできない」としながらも、「人道法の原則及び規則(戦闘員と一般市民を区別できないこと等)に一般的に違反している」として、国際人道法の基本原則に反することを指摘しました。
その後、2008年10月に潘基文国連事務総長(当時)が核軍縮に向けた提案を行ったことや、2009年4月に「核兵器のない世界」を訴えたオバマ米大統領(当時)のプラハ演説により、核兵器の廃絶の機運が高まってきました。 このような周囲の環境の変化を背景に、2011年、赤十字の国際会議の中で核兵器の使用が(1)国際人道法の定める理念と一般的に両立しないこと、(2)使用された場合、その結果に対応できる人道的援助能力が欠如しているという2つの考えを主張しました。
2013年、さらに2017年の赤十字の国際会議では、具体的な4カ年行動計画を含む決議が採択されました。
2017年の4カ年行動計画の中では、核兵器廃絶に向けた活動の継続のため次世代を担う青少年への啓発活動が求められており、唯一の戦争被爆国の赤十字社として、日本赤十字社の今後の取り組みにも注目が集まっています。
核兵器禁止条約に、赤十字の役割が明記!
核兵器禁止条約の前文において、これまでの核兵器廃絶をめぐる赤十字の貢献が確認されました。条文内には、赤十字が条約の履行に向けて国際協力及び支援の分野で役割を担うことが明記され、また、条約発効後に定期的に開催される締約国会議等にオブザーバーとして参加することも求められており、赤十字が世界の核兵器廃絶に向けた取り組みの後押しをすることが期待されています。
核兵器禁止条約の発効に向けて
核兵器禁止条約は、50ヵ国が批准した時点で発効します(7月5日現在11ヵ国が批准※)。赤十字は、核兵器禁止条約への各国の署名及びそれに続く批准に向け、日本を含む各国への働きかけを行っています。
また同時に核兵器の廃絶に向けて、核保有国や核の傘にある国に対して、核兵器の軍事的役割を縮小させたり、即時発射状態に置かれている核弾頭の数を減らしたりといった核リスクの低減措置の実行も求めていきます。
※批准国
オーストリア、コスタリカ、キューバ、ガイアナ、バチカン市国、メキシコ、パラオ、パレスチナ、タイ、ベネズエラ、ベトナム
ICAN(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons)HPより
http://www.icanw.org/status-of-the-treaty-on-the-prohibition-of-nuclear-weapons/(2018年7月5日現在)
- 採択、署名、批准、発効の違いは?
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採択
国家間における条約締結を促す決定で、国連の会議で採用されたということを指します。通常、採択だけでは国家間を拘束する効力はありません。
署名
条約の内容について、国家の代表者が合意すること。
批准
国家として条約を締結する意思を議会の承認を得て最終的に決定すること、つまり各国が内容を吟味した上で、その条約に加盟することを指します。
発効
条約の規定について具体的に条約締結国内における運用を始めること。批准していない国の中では、効力を発揮しません。
2017年4月、長崎市に核兵器の禁止・廃絶を議論するため世界35カ国から赤十字・赤新月社の代表が集まりました。核兵器廃絶を訴える赤十字の活動と思いを映像にまとめました。
ぜひ、ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=aEeFVnR3-s&index=1&list=UUJTDYVcKHYeIy_9EiQDepaQ