フィリピン:セブ北部地域保健事業を支えるスタッフ
手洗い・うがいの普及や地域から挙げられた健康問題の一つである生活習慣病について改善を呼びかける健康教育を行うため、日本赤十字社はフィリピン・セブ北部に看護師2名を派遣しています。この事業を円滑に進めるには地域ボランティアの存在が不可欠ですが、今回はそのボランティアたちをそばで支えつづけ、指導しているフィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)のボゴ事務所に所属する個性豊かな現地スタッフを紹介します。
昨年7月から現地に派遣され、1月14日に帰国する上岡文看護師(北見赤十字病院)からのレポートです。
笑いが元気の原動力。優しさがボランティアたちのモチベーションに
事業担当のアルさん(29歳)はフィリピン赤本社とボゴ事務所の事業スタッフの間をつなぐ重要な役目。マニラ、セブシティとフィリピン国内をあちこち忙しく行き来しているため、私たちの活動拠点であるボゴ事務所にいることは稀です。しかし、責任感は人一倍。この事業への思い、そして地域ボランティアへの思いが強いが故に、現場で事業を進める私たち日赤スタッフと意見が食い違うことも・・・しかし、それは彼自身が背負っている責任の重さを十分すぎるほど認識しているから。時にはスタッフを叱咤し、時には愚痴をこぼしながらも、この事業を前に進めていく熱い気持ちを感じ、お互いに認め合う関係となることができました。ボゴ事務所に来た際には、目標を達成しているスタッフは大いに褒め、仕事の進め方に悩んでいるスタッフには担当地域における事業の普及・啓発がどれだけ大切なことか、ということを伝え、具体的なアドバイスを送ります。ボゴ事務所のスタッフにとっては頼りになるリーダーです。
ロナさん(41歳)は地域担当スタッフの中でも離島での事業を担当しています。ベテランの教師だった経験を活かし、事業のさまざまな活動を先頭に立って進めています。離島に駐在しているので、他のスタッフや担当の事業地で別の離島にいるボランティアとは離れて仕事をしているのですが、その分きめ細かいフォローを欠かさず、常にボランティアたちのモチベーションを喚起しつづけています。例えば、ボランティアが活動の様子をFacebookに投稿したら、必ず「一生懸命活動してくれてありがとう!」などコメントを入れ、自身がボランティアの様子をSNSでアップする際には、必ず日赤スタッフが見逃さないようタグ付けをしてくれます。日赤のスタッフがその投稿に「いいね!」を押すことでボランティアたちのモチベーションアップにも繋がっているようです。担当地域が離島であるにも関わらず、彼女の担当地域の活動成果やボランティアの参加率は常にトップクラス。それは、彼女のきめ細かいフォローにボランティアたちが気持ちよく活動できている証拠!もちろん、地域でのボランティアの定着率も高水準を保っています。
最後は、セブ本島北部地域担当のヘルバートさん(29歳)。地域保健事業は、重大な感染症を予防する方法などを地域住民自らが習得し、自分たちで予防したり立ち直る力をつけたりする事業ですが、運動不足解消のため、彼が考えたアイデアは対象地域でズンバ・ダンスを取り入れること。フィリピンで大流行しているズンバですが、ヘルバートさんは事業に合わせた踊りを考え、みんなに教えてくれました。何を隠そう、彼はプライベートでズンバレッスンもしているプロのズンバインストラクター!話し好きで話し始めると止まらず、彼の周りではいつも笑い声が絶えません。
他にも私達の事業を支える多彩なメンバーは、みんなを紹介できないことが残念なほど個性豊かで頼りになる存在です。静かに仕事しているかと思ったら突然歌いだしたり、「忙しくてストレスだ!」って言いながら、みんなでおやつ食べて喋って大笑いしたり、フィリピンの人たちは本当に明るく前向き!日赤スタッフもたくさんの元気をもらっています。そんなスタッフに共通することは、赤十字で働くことにプライドを持っているということ。みんな、これまでにもコミュニティの中でボランティアを動員して活動する経験を積んでいるスタッフが多く、それらの経験を誇らしげに語ってくれます。
言葉の壁で誤解があったり、予定通りに活動が進まずみんなでカレンダーを見つめて悩んだり、事業を進めるのは大変なことも多いですが、彼らと一緒に仕事ができて良かったなとしみじみ思います。
2013年の台風ハイヤン被害をきっかけとしたセブ北部地域保健衛生事業も終わりが近づいてきています。皆様からのご支援によりつづけてきたこの事業が、地域に根付き、帰国後も現地のスタッフたちが活動をやり遂げ、日赤の支援終了後はフィリピン赤十字社セブ支部とボランティアたちの活動を引き継いで、いつまでも地域の人たちが健康で過ごせるよう見守っていきたいと思います。