ネパール: 災害リスクの高い地域で住民主体の減災対策を推進
令和元年9月16日から同27日にかけて、日本赤十字社(以下、「日赤」という)山形県支部、栃木県支部および福岡県支部から計3名の職員が本社職員とともに日赤の支援するネパール・コミュニティ防災事業の成果確認のため出張し、同事業の支援効果を実地調査を通じて確認しました。
同事業は、2012年8月から始まり、現在は災害リスクの高い45村を対象に、第2期目の支援フェーズへと移行し、2016年4月から事業を実施しています。主には、日本における自治会の単位におけるコミュニティの自主的な防災組織(以下、「自主防災組織」という)の設置を後押しし、自主防災組織の活動の中で人々が実際に直面している地域課題を特定し、それらの課題に対してボランティアを含む住民が主体となった取り組みを行っています。
具体的には、自主防災組織メンバーによる災害に関する意識啓発活動や災害時出動用基金の維持管理、洪水や地滑りに備えるための災害対策インフラの建設、地域で維持管理していくことが可能な給水設備の整備、最も弱い立場に置かれた人々に対する生計支援活動等を通じて、地域コミュニティが災害に備え、適切に対応するための力を高めることを目的としています。
コミュニティに自信がつき、さらなる活動への意欲につながる!
今回の出張は、事業の最終年度にあたるため、事業終了後を見据えたコミュニティ自身による活動の持続可能性の観点から、支援対象地での課題を発見することが主なミッションでした。私たちは支援対象地の一つであるウダヤプール郡チャウダンディガディ市ベルターバハサ地区と、同郡カタリ市ソランチャビセ地区の自主防災組織を訪問し、防災ボランティアや活動に参加する保健ボランティア等への聞き取り調査を行ったほか、事業の直接裨益者や赤十字関係者との意見交換、地方行政との今後の自主防災組織を主体とした活動の継続にかかる議論を行いました。
特にコミュニティの声に耳を傾けて印象的だったのは、コミュニティそのものの災害対応能力が上がるにつれ、実際に災害時に対応できた実績が出来たり、災害が起きる前も後も地域の課題となっている保健衛生環境の改善に自主防災組織を中心に取り組み、そうした活動が地域住民からも評価されていることでした。このような実績が自分たちのさらなる活動のための自信となって、次の活動への意欲に繋がっている点でした。
日本国内でも共通の課題 学ぶこと多い
私たちはフィールドワークの結果をもって事業の現時点での成果報告とし、実際に地域で活動しているネパール赤十字社職員へプレゼンテーションし、事業開始当初と成果の間のギャップや、まもなく事業終了を迎えようとしている中で関係者らとの課題意識の共有を行いました。
今回、日赤支部から出張した職員は、普段は各支部においてそれぞれ青少年赤十字事業や総務、その他活動など、様々な分野で業務を担当しているところですが、国際事業の最前線で、コミュニティーの現状や成果を確認し、コミュニティーのつながりの強さや、そこで活動するボランティアの方々の地域への貢献意識の高さなど、日本国内でも共通の課題となっていることについて参考になる学びが多くありました。
栃木県支部の入江俊能係長は次のように語ります。「地域防災に関する取り組みについては、今後ますます日本国内での重要性も増すものだと考えています。日赤の支部による取り組みの中でも国内と国際での活動の良いところをとって、さらなる取り組みにつなげていきたいです。その上で、まずは自分の置かれたポジション(総務)を意識しつつ、事業計画の策定の面で国内事業の実施をフォローしたり、あるいは自らが出張業務を通じて学びを深めたことについて赤十字関係者等への普及や働きかけをすることにより最も弱い立場に置かれた人々が立ち上がることのできる国際協力の推進を後押ししたいです。
最後になりましたが、日頃より赤十字の人道活動を支えていただき、ありがとうございます。