職員インタビュー:ユースを支え、ユースに支えられる仕事
今回は、「赤十字のユース参画推進」に焦点を当て、2017年4月から国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」)アジア大洋州事務所にユースボランティア担当として派遣されている木村職員へのインタビューをお届けします。
職場はどんなところ?
私が働いているのはアジア・大洋州地域を総括する事務所です。マレーシアの首都、クアラルンプールにあり、同地域内にある13の連盟事務所と連携しながら、38か国の赤十字・赤新月社をサポートしています。20か国以上の国籍が異なる約90名の職員が働いています。
連盟事務局内の同僚である、地域内の各事業担当者やグローバルユースチーム(連盟本部のスイスに2名、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、中東の連盟地域事務所に1名ずつ)と密に連携を取りながら業務にあたります。各国赤十字・赤新月社のユース担当者にあてた情報共有やユースの参画状況の把握といった日々の業務から、ニーズに基づいたリーダーシップ育成研修の支援、ユースの会議参加の調整などを行っています。また、外部機関(教育省や民間企業、国際NGO等)と協同し、ユース参画を推進する業務もあります。
ユースのパワーとは?
世界各国で赤十字の人道支援活動を支えている1,370万人の赤十字・赤新月社ボランティアのうち半数以上が「ユース」、30歳以下の若いボランティアたちです。彼らはそれぞれのコミュニティの真の人道支援ニーズを理解し対応できるだけでなく、家庭や学校、地域において同世代や家族に行動変容を促し、知識や人道的価値を普及するメッセンジャーになることができ、また、その豊かな発想力と行動力でこれまでにない活動を生み出します。ユースの力はまさに赤十字の人道支援活動の原動力・牽引力といっても過言ではありません。歴史を振り返ってみると、赤十字の創始者であるアンリー・デュナン本人もまた、悲惨な戦場を目にし、赤十字の理念を思い抱いたときは31歳の若者でした。
活動の担い手でもあり、災害時には脆弱な被災者ともなりうるユースの声を赤十字の活動に組み込むことは、赤十字が人々に寄り添う組織であり続けるためには必要不可欠です。そのため、連盟では、各国赤十字社の組織強化のための重要分野の一つとしてユース参画の推進に取り組んでいます。
ユースの力を発揮するためには何が必要?
一言に「ユース参画の推進」といっても、その内容は多岐にわたり、大きく2つの分野に分けることができます。一つは、ユースボランティアたちの声が各国赤十字・赤新月社の活動に反映されるよう、「環境を整えること」です。具体的には、ユースポリシー策定の支援や、各社の事業戦略にユースについて盛り込むことの助言、ユースと協同で行う事業立案・履行・評価の奨励、ユースの声が各社のガバナンスとマネジメントに届く仕組みの整備などが挙げられます。また、ユースが意思決定の場(例えば、赤十字の最高意思決定の場である連盟総会など)に参画できるよう支援することも重要です。
その一方で、ユースが誇りと自信を持って赤十字活動に参加し、また、彼らの能力がきちんと評価・認知され、単なる労働力としてではなく、必要不可欠な存在として求められるよう、「能力育成・強化」を行うことも欠かせません。具体的には、赤十字が取り組む各事業分野(災害対応、防災・減災、気候変動への適応、保健衛生推進、学校安全推進、移民支援、非暴力の推進等)に関する研修機会の提供、オンライン講座による知識の普及、ユース育成に特化した教材作成などが挙げられます。
「環境」と「能力」、この双方がそろうことで、初めて、ユースが持つ力とその秘めた可能性が真に発揮されることとなります。よい事例は各社間で共有し合い、困難な事例からは互いに学び合えることが、全世界に広がる赤十字のネットワークの強みです。赤十字に携わるすべての人々が一丸となってユース参画の推進に取り組むことが、ひいては各社の持続可能性にも寄与します。
やりがいやチャレンジは?
連盟職員は各社からその分野のエキスパートとして期待され、また、各分野の担当は基本的には一人しかいないため、とても責任重大です。一方で、仕事の裁量は各担当者に委ねられているため、自分の意志、能力次第では仕事の可能性が無限に広がっています。
言葉や文化、考え方、働き方の違いはチャレンジでもありますが、自分自身の視野や価値観を広げることにもつながり、新たな自分を発見することも楽しいです。そして何より、目を輝かせた世界各国のユースボランティアたちに出会う時にやりがいを感じます。"世界をよりよい場所にしたい"、"支援が必要な人に手を差し伸べたい"という同じ価値観と使命を共有している彼らの存在は、いつも私にとって大きな励みとなっています。仕事でどんな困難に直面しても、「頑張ろう」と思えるのは、私が携わる仕事のその先で、そんなユースボランティアたちの笑顔が待っているからです。彼らの熱意と行動力、アイディアにはいつも刺激を受け、連盟ユース担当者という肩書きでありながら、学ばせてもらっている、支えてもらっているのは私の方だと感じます。
日々、最前線で人道支援に携わるユースボランティアたちのために何ができるのかを常に考え、残りの出向期間を過ごしていきたいと考えています。