■(速報)バングラデシュ南部避難民支援:コレラ対応のために日赤医師が活動中
日本赤十字社(以下、日赤)は、2017年8月にミャンマー・ラカイン州で発生した暴力行為を逃れ、隣国バングラデシュへ避難してきた人々を支援するため、同年9月から緊急支援を開始、2018年5月からは中期支援へ切り替わり、バングラデシュ赤新月社(以下、バ赤)と共に、コックスバザールにて診療所の運営等を行っています。
バングラデシュ南部では、今年9月以降、コレラと思われる症例の発症が報告されています。これを受け、日赤は現地へ医師を派遣し、現地の最新状況の確認と対応計画の確認・実施を行っています。本ニュースでは、現地へ派遣中の小林謙一郎医師(日本赤十字社和歌山医療センター)からの速報をお届けします。
※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。
現地の最新状況
現地の保健省からは、これまで"コレラアウトブレイク"の宣言は出されていませんが、バングラデシュ保健省/WHOの最新週報(11月11~17日)によると、
- コレラ迅速検査(RDTs)で陽性となった急性下痢症患者が19例
- 下痢性疾患が6,195例報告され、本週報の前週より増加傾向
- 前述6,195例のうち、急性水溶性下痢症(AWD)が4,229例、血性下痢症が563例、その他が1,403例
- 下痢性疾患で亡くなる割合は、急性呼吸器感染症に次いで第2位
と報告されています。
なお、日赤が活動するCamp12の診療所では、AWD患者の明らかな増加は、今のところみられていません。
現地入りした小林医師からの報告
バングラデシュ南部避難民キャンプ内やその周辺でのコレラと思われる水溶性下痢症患者の増加をうけ、2019年11月中旬からその対応の為に現地で活動中です。
私は、以前2018年3月から6月にも本事業のためバングラデシュ南部避難民キャンプで活動していました。今回の滞在でまず気づいたことは、トイレ、水源、排水路や医療施設などのインフラが以前と比べて清潔に整備されている所が増えたことでした。しかし、赤十字の上下水道の整備を担当する部門(WASH)によると、家庭で使用する水を運搬/保存する容器が清潔でないなど、家庭での保存方法に問題があるとのことでした。ある地域調査によると、水源で水を汲んだ時と比べて家庭で使用する時に水の汚染率が高くなっていました。また、コレラ患者が多く報告されている地域では、コレラ菌に汚染された水源があったようです。避難民キャンプのインフラ整備は進められていますが、衛生状況の改善には、まだしばらく時間がかかると考えられます。
コレラは水様性下痢症の代表的な疾患で、衛生環境が悪化している地域で流行しやすいといわれています。患者は多量の下痢により、脱水がみられやすく、ウイルス性下痢症と比べて急激に重篤になる場合があります。
私の任務は、コレラの流行状況の確認、以前から支援しているバ赤の診療所(現地ではヘルス・ポストと呼ばれている)内の感染対策の強化、現地スタッフや地域保健を担う赤十字ボランティアへのトレーニングなどです。
今回の滞在中は、日赤の支援している地域でコレラは流行せずに済みそうですが、今後も高い流行リスクの状況が続くと考えられます。将来、日赤の支援が終了した以降も、現地スタッフやボランティアが中心となって感染症の流行に対応できるよう、支援したいと考えています。