「今こそたすけあい」コロナ禍の自然災害:新型コロナウイルス感染拡大の中、さらなる困難に襲われる世界の人びと
新型コロナウイルス感染症が世界中に広がってから10か月以上が経とうとしています。今年5月にも世界で起きている自然災害についてお伝えしましたが(こちら)、この半年の間にも世界各地で気候変動が関わっていると見られるさまざまな災害が発生しています。先週の赤十字国際ニュースでは、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)が出した気候変動に関するレポートから、世界が今どのような気候危機に直面しているかをご紹介しましたが、本号では日本ではあまり報道されていない世界各地で実際に起こった最近の自然災害と赤十字の救援活動についてお伝えします。
フィリピンで相次ぐ台風の襲来、今年「世界最強」の台風も
フィリピンでは10月から相次いで台風が島々に上陸し、断続的な豪雨や突風による家屋損壊、地滑りや洪水など、各地で大規模な被害が発生しました。今年世界各地に上陸した台風等の中でも最も強い風を伴ったと見られる超大型台風19号(コーニー)、次いで上陸した台風22号(ヴァムコー)の影響は大きく、およそ600万人が被災、36万7,000棟もの家屋が損壊しました。連盟は1,080万スイスフラン(約12.5億円)の緊急救援アピールを発出し、日本赤十字社(以下、日赤)は、1,400万円の資金援助を行いました。
フィリピン赤十字社は、相次ぐ台風の進路に警戒しながら、発災当初から救援物資や衛生キット、食料の配付、安全な水の提供、道路に散乱するごみや泥などの清掃活動や停電した病院に対する電気の供給など幅広い支援を展開しました。ルソン島南部のビコル地方には大型船を使ってフィリピン赤十字社の救援物資が運搬され、多くの人びとに迅速に物資を届けることができました。コロナ禍での救援活動は、被災者だけでなく、赤十字のスタッフ・ボランティアの感染予防対策も徹底して行われています。
人びとの今後の生活再建も大きな課題となっています。クリストファーさんはココナッツや麻の農家ですが、台風で農作物がすべて腐ってダメになってしまいました。「まず家の掃除や修繕をしなければならないけれど、収入のないこの状態は厳しい。現実を受け入れなければならない」と苦境を嘆きます。被災地では農業や漁業を中心に生計を立てている人が多く、中長期的な生活再建のための生計支援も必要となっています。
左:救援物資のセットを受け取る被災者©フィリピン赤十字社
右:フィリピン赤十字社から支援されたブルーシートで被災した家を覆う©フィリピン赤十字社
中米を襲ったハリケーン、1998年以来の最大級の被害をもたらす
11月に入ると、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラなど中米の国々に、ハリケーン「エタ」と「イオタ」が立て続けに襲来。大雨は地滑りや洪水、道路の冠水や家屋損壊をもたらしました。中米全体で700万人もの人びとが被災したといわれ、これは1998年に中米に上陸したハリケーン「ミッチ」以来の最大規模の被害といえます。連盟は2,000万スイスフラン(約23億円)規模の緊急救援アピールを発出し、日赤は500万円を拠出しました。
今回の災害は被害が甚大であることから、コロナ禍で初めてERU(緊急救援対応ユニット)が出動することになり、スペインやドイツの赤十字社等がITや水・衛生分野におけるERUで支援を展開しています。カナダ赤十字社は診療所型のERUを展開をし、新型コロナウイルス感染症の対策を取りながら、人びとに必要な医療を提供しています。洪水により、生活環境が不衛生となったり、蚊の数が増加傾向にあることから、今後、デング熱やその他感染症の流行にも警戒が必要です。
左:ボートで救護活動に向かうボランティア©グアテマラ赤十字社
右:防護服の着脱の仕方を確認して診療に臨むERUスタッフ©カナダ赤十字社
コロナ禍でも自然災害は突然やってきます。赤十字は、新型コロナウイルスの対策を続けながら、災害で最も苦しんでいる人に支援を確実に届けるため、新たな取り組みや手段にもチャレンジをしつつ救援活動を展開しています。
コロナ禍の今だからこそ、たすけあいに大きな力を
12月1日(火)から「海外たすけあい」キャンペーンが始まりました。「海外たすけあい」で集められた寄付金は、このような世界各地の自然災害での赤十字の救援活動にも充てられます。コロナ禍の今日本でも不安な日々が続きますが、世界でも新型コロナウイルス感染拡大に加え、自然災害などの様々な影響を受け、支援をこれまで以上に必要としている人びとがいます。皆様からの温かいご支援とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。