速報:イスラエル・パレスチナ間の情勢悪化に伴う国際赤十字の対応

 5月10日から激化するイスラエルとパレスチナ・ガザ地区の間での戦闘は、双方で一般市民を巻き込み、多大な被害をもたらしています。2019年からパレスチナ赤新月社(以下、パレスチナ赤)とともにガザ地区で医療支援事業を実施している日本赤十字社(以下、日赤)も、今回の事態をうけ、第一弾の緊急支援としてパレスチナ赤に対する500万円の資金援助を予定しています。同時に現在も、パレスチナ赤をはじめ、各国赤十字・赤新月社、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、IFRC)、赤十字国際委員会(以下、ICRC)と連携しながら、日々変化する状況に沿った追加支援を準備しています。

画像 ガザ空爆被害のなか救援活動に従事するパレスチナ赤新月社 ©パレスチナ赤新月社

 エルサレムで続いていたパレスチナ住民とイスラエル警察などとの衝突は、5月10日、ガザ地区からのロケット弾攻撃とイスラエル軍による空爆へと発展しました。それから1週間たった今も依然攻撃は止まず、19日までの7日間で、ガザ地区内では61人の子どもを含む計213人が命を落とし(パレスチナ保健省)、また、報道によれば、イスラエルでも子ども2人を含む計12人の犠牲者が生じており、その数は今後も増加することが懸念されます。

 被害の大きいガザ地区では、空爆による建物の倒壊で多くの負傷者が発生、パレスチナ赤の運営するアル=クッズ病院にも搬送されています。同病院スタッフやパレスチナ赤のボランティアたちは24時間体制で救援活動にあたっており、18日までに計814人の負傷者の救助や救急手当を行いました。また、4万人を超える人びとが、空爆を恐れて学校や病院施設などに避難しており、パレスチナ赤はこうした避難家族約816世帯に対して、毛布や食糧などの救援物資を配布しています。

画像 ガザ地区の状況 ©パレスチナ赤新月社

 ガザ地区の人道状況は今回の武力衝突以前から厳しい状況にありました。同地区にはこれまで13年間にわたりイスラエル当局により外部との人や物資を制限する封鎖措置が取られ、恒常的な物資不足の状態にありました。このため、今回の事態では医薬品など生存のために必要な物資の更なる欠乏が懸念されています。例えば、同地区の電力供給について、現在は1日6時間程度まで落ち込み、停電時に使用する発電機の燃料も入手困難になっています。これまでの封鎖措置による状態の中で、今回の被害に対処する余力はガザにはなく、中長期的な支援が今後必要になることが予想されます。

 今回の情勢悪化はガザ地区に限った話ではありません。今回の事態のそもそものきっかけは、4月始まったイスラム教の断食月(ラマダーン)にさかのぼることができます。聖地エルサレムでのお祈りに向かう大勢のパレスチナ人と、新型コロナ対策等で聖地を封鎖し入域を阻止するイスラエル警察との間で衝突が起こったこと、また、東エルサレムでイスラエルによるパレスチナ人家族の土地を接収する措置が暴力的事態の引き金になったといわれています。そのため、ガザ地区に限らず、東エルサレムやヨルダン川西岸地区、そしてイスラエル内の広い範囲に混乱は広がっており、各地で死傷者が生じています。パレスチナ赤は、東エルサレムやヨルダン川西岸地区でも救急車による搬送サービスを展開しており、同社の総力を挙げた人道支援活動が展開されています。

 また、イスラエル赤盾社(イスラエルの赤十字社)も、イスラエル側の負傷者の救急車による搬送サービスを中心に、スタッフ1,000人、ボランティア1,000人が人道支援活動に取り組んでおり、5月18日までにロケット弾攻撃に関連して負傷した312人を含む733人を救助しました。

画像 東エルサレムでの救急活動の様子 ©パレスチナ赤新月社

 国内での緊急対応と合わせ、今般、パレスチナ赤は、国際赤十字に対しても支援要請を呼びかけました。これは、緊急対応に必要な医薬品や救急車などの資機材の調達、ボランティアとして支援活動に従事する人びとを支えるためのものであり、日本赤十字社もこの支援要請に対して500万円の資金援助を行う予定です。私たちは、引き続き国際赤十字や関係機関と連携を取りながら、現地の人道支援活動に全力で臨んでいきます。

画像 パレスチナ赤新月社ボランティア、ガザ地区 ©パレスチナ赤新月社

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