(速報2)アフガニスタン人道危機
紛争、干ばつ、そして新型コロナウイルス感染症。それらはアフガニスタンに、かつてないほど深刻で、複合的な人道危機をもたらしています。経済活動が停滞して物価は高騰し、農業と家畜も打撃を受けています。大規模な食糧危機、水不足、国内避難民の発生などによって、同国の人口の約半数にのぼる1,800万もの人びとが、緊急人道援助を必要としています。人びとのいのちと健康、明日からの生活は、国際社会からの支援にかかっています。
今年5月に戦闘が激化し8月に首都カブールが陥落する以前から、人びとからの信頼を得て、赤十字(※)は、アフガニスタン国内で多岐にわたる人道支援活動を続けています。今号では、医療支援を中心にご報告します。
※アフガニスタンにおける赤十字にあたるアフガニスタン赤新月社、赤十字国際委員会(主に武力紛争等の状況下での支援・保護を担う)、国際赤十字・赤新月社連盟(主に災害時等の調整を担う)の3機関が、役割分担し人道支援を行っています。
現地での人道支援活動の最前線~移動型医療チーム~
今年8月の突然の政変は、海外からの資金援助に大きく頼っていたアフガニスタンの公的医療体制を悪化させ、現在、2,300以上の医療施設が閉鎖に追い込まれています。
そのような状況下、アフガニスタン赤新月社(以下、アフガン赤)は、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)の支援を得ながら、医療施設の運営に加えて巡回診療サービスを全国で展開しています。140の巡回診療サービスのうち半分にあたる70チームは「移動型医療チーム(モバイルヘルスチーム)」と呼ばれ、病院等へのアクセスが困難な遠隔地に住む人びとのもとに赴くことで、一次医療サービスを提供しています。また、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の流行を受けて、遠隔地におけるコロナワクチンの接種活動も担ってきました。
移動型医療チームの活動動画はこちら
アフガン赤は、全国34州の全てに活動拠点となる支部を持ち、国の全土にアクセス可能な数少ない人道支援団体ですが、その最大の強みは、全国各地で活動の最前線を担う、その土地出身の赤十字スタッフとボランティアの存在にあります。各州の中心地だけでなく、女性や子どもをはじめ、支援の手が届きにくい場所で助けを必要とする人びとにも目を向け、足を運び、直接的な支援が展開できるのは、その土地に精通し、現地の人々に受け入れられる彼らの活躍によるものです。
今年に入り、同国内では57万人以上が安全と食料を求め、住み慣れた土地を離れて国内避難民となっています。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)によると、このうち80%以上が女性と子どもと報告されています。アフガン赤は、こうした国内避難民が医療サービスを受けられるよう、避難民キャンプへの移動型医療チームによる巡回診療を行なっています。
また、赤十字国際委員会(以下、ICRC)は、今年に入り、同国で支援する416カ所の医療施設(アフガン赤が運営する医療施設を含む)において4万9千人以上の負傷者の治療にあたってきました。その多くは砲弾などの武器による負傷者であり、7カ所のリハビリセンターでは手足を失った人々への義肢装具やリハビリの提供を含め、7万9千人以上に支援を行なっています。
厳しい冬を迎えるアフガニスタン -国際支援が急務
連盟のアジア大洋州地域事務所代表である、アレクサンダー・マテューは、この9月にアフガニスタンに入り、アフガン赤や関係機関と今後の支援等を協議しました。また、紛争で夫を亡くした女性たちの避難所、孤児院、障がいを持つ人びとの入居する施設も訪問しました。現地の人道支援ニーズの深刻さ、多岐にわたる困難を目の当たりにし、特に、母子保健と予防接種、特に弱い立場にある女性の生計向上、学校への衛生物資の供給、そして必要とされるあらゆる人道支援を届けることについて決意を新たにし、次のように述べました。
「数週間以内に資金援助がなされなければ、アフガニスタンでは医療サービスの崩壊と飢餓の悪化が差し迫っていることを、深く危惧しています。保健医療のための資金援助が同国全域で止まっており、アフガン赤が果たすべき役割への期待と要求はますます高まっています。厳しい冬が迫る中、何百万人もの人々へ生活に必要な物資を届けるためには、今、国際的な行動が急務です。人道支援だけでは全てを解決することはできない、それでも、私達には人びとの苦しみを少しでも軽減する役目があるのです。」
食料配布支援を行うアフガン赤ボランティア©連盟
長年、アフガン赤への活動支援を通じてアフガニスタンの人びとに寄り添ってきた日赤は、彼らのいのちと健康、尊厳を守るため、アフガニスタン人道危機救援金の受付を行なっています。
皆さまの温かいお気持ちを、アフガニスタンの人びとが必要とする支援の形に変えて、現地にお届けいたします。海外救援金へのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。