人道支援の現場にイノベーションを

人道危機の真っただ中にいる人びとは、どうしたら普通の生活、そしてよりよい生活を送ることができるのでしょうか。そのためにはテクノロジーをどう有効活用できるのでしょうか。今号では、フランス赤十字社とスペイン赤十字社が中心となって取り組んでいるRED Social Innnovationについて、メンバーのAna Peñalver Blanco氏,、Camille Loiseau氏 、Giulio Zucchini氏に特別に寄稿していただきました。

赤十字 × イノベーション (RED Social Innovation)

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イノベーションとは、まさに国際赤十字の起源と言えます。それは赤十字国際委員会(ICRC)の創設、紛争地において敵・味方の区別なく命を救う医療従事者の中立的な役割、そして国際人道法の開発などを意味しています。

そして近年では、国際赤十字では、自然災害や紛争、感染症などの人道危機に見舞われた地域の人々に,速やかに支援を開始・継続できるようにするために、イノベーションやテクノロジーの探求に重点的に取り組んでいます。「RED Social Innovation」は、さまざまな国における赤十字内外の優れた実践事例を集約し、「イノベーション」を促進する国際的なソーシャル・イノベーション・ネットワークで、今日の人道危機に対応するために尽力している公的機関、民間企業など、すべてのステークホルダーを結集し、よりレジリエントな社会を構築することを目的として2021年3月に設立されました。フランス赤十字社とスペイン赤十字社が中心となり、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)とICRCの協力を得て運営しています。また世界最大の社会企業家ネットワークのAshokaや研究機関、そして国連機関などとパートナーシップ協定を結んでいます。以下、各国赤十字・赤新月社による最近の取り組み事例を3つ紹介します。

アメリカ赤十字社 × チャットボット(献血、災害支援)

アメリカ赤十字社は、献血者や緊急支援を求める人が重要な情報にアクセスする際のガイドとなる2つのチャットボット「Clara」を導入しています。献血用チャットボットと、災害支援用チャットボットです。献血用チャットボットは、月に最大2万人が利用しており、献血者が迅速かつ途切れなくさまざまな情報にアクセスすることができ、かつ予約管理システムも備わっています。また災害支援用チャットボットは、数回の短いメッセージを送るだけで、個人をその地域の特定の避難所に誘導することができます。アメリカ赤十字社は適切な情報を発信するための不可欠なチャネルとして活用し、人びとの災害への備えとその対応に役立てています。詳細はこちら(英語)

スペイン赤十字社 × AR(拡張現実)

「EntamAR」は、長期入院中の子どもたちの日常生活を改善するために、拡張現実(AR)を利用したアプリです。このアプリは、絵や画像を使ったクリエイティブなゲームを通じて、スペイン赤十字社の青少年ボランティアが、子どもたちの創造性を高めながら、学業や余暇の活動をサポートしています。現在2つの病院でテストが行われており、ゆくゆくはスペイン全土の入院中の子供たちにサービスを提供していくことが期待されています。詳細はこちら(英語)

日本赤十字社(熊本赤十字病院) × ドローン(医療物資支援)

日本では、超高齢化と人口減少が山間部や島嶼部のへき地を中心に進んでいます。これらの地域の住民は、医療サービスへのアクセスに常に課題を抱えています。この問題は、日本だけでなくアジアやアフリカの国々のへき地でも共通の社会問題となっています。熊本赤十字病院は、2017年、国内外での災害対応や途上国における医療アクセスの改善のため、ドローンを用いた遠隔医療・医薬品搬送サービス「Ambulance Drone構想」を提案し、その実現に向けて国内外の研究機関等と共同研究を進めています。また、連盟の災害対応ドローン作業部会への参加を通じて、国際赤十字のドローン関係者の情報共有を進めています。実証試験の動画はこちら(熊本赤十字病院)/RED Social Inovationに紹介された詳細はこちら(英語)

もっと知りたい&学びたい方はオンラインイベントへ!

2021年10月からフランス赤十字社とスペイン赤十字社の主催でオンラインイベント「45 minutes」が定期的に開催されます。 誰でも参加できるオンラインイベントとなっています。このイベントには、世界中のジャーナリスト、社会起業家、NGO、民間企業、各国の赤十字・赤新月社などが参加し、毎回ある特定のテーマの社会課題を取り上げ、共に学ぶプログラムです。

最初のイベントは、1019日(火)夜に開催予定で、パンデミック時の食料と医薬品の提供をテーマにしています。その後のイベントでは、人道支援の脱炭素化、社会における高齢者の役割、社会的課題を解決するためのテクノロジーの力など、さまざまなテーマを取り上げていく予定です。ご興味のある方のご参加をお待ちしています。

第一回 “45minutes”

日 時:10月19日(火)深夜24時(日本時間)~24時45分

(中央ヨーロッパ時間:10月19日(火)午後5時~5時45分)

テーマ:パンデミック時の食料と医薬品の提供 

言 語:英語  申し込み方法:こちら(英語)

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