西アフリカのガンビアで農業支援を実施 ~主役は女性~
共同菜園に新たに設置された高架式給水タンクと太陽光パネル (C) IFRC
皆さまはガンビアという国名を聞いたことはあるでしょうか。アフリカの西部に位置し、三方をセネガルに囲まれた小さな国です。人口の約半数、農村部では約8割の住民が農業に従事し主要な収入源としている一方で、近年では気候変動により長引く乾季や激甚化する豪雨、害虫の大発生、過剰な耕作などの要因が重なり、農作物収穫量は過去5年間の平均生産量に対して半減しています。そして人口の過半数が国際貧困ライン以下という高い貧困率や人口の急増と相まって、全国的な国民の栄養不足に拍車をかけています。
そのような状況を改善するため、日本赤十字社(以下、日赤)は2020年5月から2021年4月までの1年間、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)を通じて、ガンビアの2つの地域を対象に、食料生産性と所得の向上を目的としたガンビア赤十字社の農業事業への支援を行いました。
設備の強化で、気候変動への耐久性を高める
今回支援の対象となったのは、調査の結果、気候変動による影響を最も受けやすい地域の一つでニーズが高いことが判明したカンドンク村とカニライ村の計300人の女性たち。農村部での農業全般は「共有地」とよばれるコミュニティが所有する土地にて、女性を中心に行われていますが、往々にして生産性や収入力が低く、女性の貧困の一因となってきました。
今回の支援の対象となった女性たちが管理する共同菜園も、原始的な給水設備やその老朽化による水不足、また頑強な囲いがないことによる野生動物の被害から生産量が少ないという問題に直面しており、設備を維持する資金が不足していました。そこで、本支援では共同菜園内に鉄格子のフェンスを設置したほか、地面に垂直に穴を掘って地下水の通り道を作り(試錐孔)、太陽光パネル、高架式給水タンク、そして共同菜園用の貯水槽を建設しました。太陽光パネルで発電した電気でポンプを動かし、水を試錐孔から頭上の給水タンクに溜め、その後給水タンクから管を通って地上の菜園用貯水槽に水が行き渡る仕組みです。あえて給水タンクを高架式にすることで、地上よりも安全性が高く、また電力不足の場合でも頭上の給水タンクから重力を利用して地上の貯水槽に安定して水を供給することができます。さらに試錐孔に備え付けられたろ過フィルターで地下水が浄水されるため、給水タンクの水は共同菜園のほか、炊事や入浴、飲料用にも利用されています。かつては、女性や子どもが井戸から手動で水を汲み上げていたため、この一連の給水設備の導入で村人の暮らしは一変したと言います。重い水汲みから解放されただけでなく、菜園用に加えて、安全で良質な飲み水を得られるようになったのです。
菜園用貯水槽をチェックする赤十字ボランティア (C) IFRC
知識と技術の普及で、気候変動への適応性を高める
設備投資に加えて、村の女性たちが、農業に対する正しい知識と技術をぶことも重要です。事業では、2つの共同菜園に対して園芸セット(ジョウロ、クワ、シャベル、ナイフ、バケツ、一輪荷車、ホースなど)と野菜の種(玉ネギ、トマト、唐辛子、オクラ、レタス、ナス、キャベツ、キュウリ、マメなど)を配布するとともに、300人の女性の中から選ばれた30人の代表者に6日間の農業技術研修を実施しました。代表の女性たちは、正しい農具の使い方や種の育て方、農地の耕作法、堆肥づくり、害虫除去、苗床や庭園の維持管理、農作物の加工法や商品化などを講義と実技を通じて学んだ後、同じ共同庭園で働く残りの女性たちにも知識を伝播・共有しました。
かつては、伝統的な単作農法に従い、地域の全員が同じ種類の農作物を同じ時期に栽培・収穫していたため、市場が飽和状態になれば価格の下落が生じ、せっかく収穫した農作物からの収益が得られないという問題がありました。本支援を通じて、女性たちが同時に複数の作物種を栽培する混作農法や農作物の加工方法を学んだことで、食料生産の多角化や新たな収入源の獲得が期待されています。
2つの共同菜園にそれぞれ提供された園芸セットと野菜の種 (C) IFRC
技術研修で、農作物の加工法を学ぶ女性たち(C) IFRC
新型コロナウイルス感染症の影響もありながら、本支援は1年間という短期間で、計画どおり全ての活動を終えました。2つの共同菜園は2021年上半期に初めての収穫をむかえ、現在は次の栽培期を待っているところです。今後、共同菜園の維持管理は、ガンビア園芸省の技術協力を得ながら行われていく予定です。
日赤が支援するアフリカ地域での活動は、NHK海外たすけあいキャンペーンにいただいた、皆さまからのご寄付により実施されています。 今年も温かいご支援をよろしくお願いします。