【速報5】アフガニスタン人道危機~厳冬を迎えた現地の今と赤十字の支援~

 過去30年で最も深刻な干ばつ、食料危機、政変、新型コロナウイルス感染症。2021年、アフガニスタンには幾多の人道危機が一度に押し寄せ、今なお深刻な状況が続いています。国土の80%以上が長引く干ばつに見舞われ、人口の半数を上回る2,200万人が、支援が届かなければ明日を生き抜けるかどうかという極限状態にあります。また、昨年だけで新たに70万人もの人々が食料や安全な暮らしを求めて住み慣れた土地を離れることを余儀なくされ、国内避難民となっています。国連人道問題調整事務所(OCHA)及び難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、この未曾有の事態を受けて、アフガニスタンへの人道支援に2022年の1年間で約5,700億円以上が必要として、世界各国に緊急的な支援を求めています。これは、国連創設以来、1カ国への支援額としては最大規模です。

 そして今、アフガニスタンは、地域によってマイナス20℃にまで冷え込む寒さ厳しい冬を迎えています。国内避難民をはじめ、困難の中で生きる人びとにとって、この冬はあまりにも過酷です。赤十字は、人々のいのちを守る防寒着等の配付を急いでいます。

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      越冬用物資配付の重要性を訴える国際赤十字・赤新月社連盟アフガニスタン事務所代表:動画はこちら

必要な支援を見極め、可能な限り迅速に

 国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、2021年9月以降、アフガニスタンの直面する複合的な人道危機を受けて、既に進めていた干ばつの被害に対する支援計画を見直し、食料配付支援、国内避難民となった人々への生活必需品の提供、感染症対策を含む保健衛生分野への支援、生計再建支援等、複合的な人道危機に対する多岐にわたる支援計画を再発表し、各国に協力を呼びかけています。また、同国内における救援物資の調達や資金の確保に制限を抱える中、連盟は隣国パキスタンにアフガニスタン支援にかかるチームを配置しました。アフガニスタンの首都カブールにある連盟事務所と連携し、アフガニスタンの人道ニーズや市場の状況を注視しながら、途絶えることなく支援活動を展開できるよう対応しています。

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現場から食料支援の必要性を訴える連盟職員:動画はこちら

 中でも最も緊急性のある支援が食料の配付です。人口の半数以上が深刻な食料危機を抱える中で、収入のない世帯、片親世帯、病気や障がいもつ方がいる世帯等、最も支援を必要とする人びとを優先しています。また、同国内の食料品不足と物価の高騰を受けて、当初予定していた現金給付型支援から、食料の配付に切り替えました。食料には、米、小麦、油、塩、砂糖、ビスケット等が含まれ、各世帯が生き延びるために必要な栄養価と量が考慮されています。

 さらに、アフガニスタンが直面する大きな問題の1つは、同国内における現金の不足です。2021年8月に起こった政変の影響を受けて、国内の経済活動が停滞しました。加えて、医療やインフラ等を支えていた国際社会からの支援は、新たな政権の動向や行政管理能力を見極める必要があるとして滞り、同国内の銀行が機能不全に陥ったほか、多くの医療機関が閉鎖の危機に追い込まれました。その結果、とりわけ貧困や紛争等によって現在の人道危機以前から支援を必要としていた人びとの生活が、さらなる困難に陥っています。

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現地を訪問し切迫した状況を訴える連盟アジア大洋州地域事務所代表:動画はこちら

長引く甚大な人道ニーズ~支援を継続していくために~

 長期化している干ばつは、冬場の降雪量にも影響を与えることから、春から夏にかけて雪解け水を用いて行う灌漑農業への甚大な影響が危惧されています。
 政変以降、同国の政情が不安視され、国際社会の支援の手は十分でなく、結果としてアフガニスタンに暮らす一人ひとりが、いのちと健康、尊厳を脅かされる危機的状況を生きています。支援の必要性は拡大する一方です。連盟の支援計画に対して、2022年1月現在、資金の充足率はわずか2割程度にとどまっています。
 
 日本赤十字社は、引き続き「アフガニスタン人道危機救援金」の受付を行っています。お預かりするご寄付は、アフガニスタン赤新月社、連盟、赤十字国際委員会(ICRC)の現地での活動を通じて、アフガニスタンの人びとに必要な支援を届けるために活用させていただきます。皆様の温かいご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

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【速報4】アフガニスタン人道危機 ~赤十字国際委員会 藪﨑拡子さんインタビュー(後編)~

【速報3】アフガニスタン人道危機 ~赤十字国際委員会 藪﨑拡子さんインタビュー(前編)~

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