東アフリカ地域の保健強化事業 ~ウガンダ編~
新しい制服を着て、誇らしげにポーズをとるウガンダ赤十字社・救急法講習センターの指導員たち (c) 国際赤十字・赤新月社連盟
【ウガンダ共和国 基本情報】
・面積:24.1万㎢(≒本州)
・人口:約4,427万人
・首都:カンパラ
・宗教:キリスト教(60%)、伝統宗教(30%)イスラム教(10%)
・公用語:英語、スワヒリ語等
・豆知識:ウガンダ赤十字社は全国に51支部、会員35万人を有する。1964年にウガンダ議会に、1965年に連盟にそれぞれ承認された。
東アフリカは、気候変動の影響により激甚化する干ばつや洪水などの自然災害だけではなく、感染症や政情不安による難民の発生・人口移動など様々な課題を抱えた地域です。日本赤十字社(以下、日赤)は、長年に渡り、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)を通じて、地域内の保健および防災知識の普及活動に対して支援を行ってきました。(詳しくはこちら:東アフリカ地域保健強化事業)
ウガンダでは、整備が十分でない道路や、国民の低い交通安全意識によって、交通事故が多発し、命を落としたり、負傷する人が絶えないことが国全体の大きな問題となっています。交通安全は、経済・保健・社会の発展にも影響する重要な課題であり、ウガンダ赤十字社(以下、ウガンダ赤)は交通安全と救急法の普及において、大きな役割を果たしてきました。今号では、日赤の支援により2020年度に実施された、ウガンダ赤救急法講習センターの設置・整備と、救急法普及活動強化についてご紹介します。
■ 設備や資機材を革新し、より質の高い講習の普及へ
ウガンダ赤は従来、救急法講習を提供する国内の主要組織として政府の補助機関としての役割を果たしてきた一方で、国内の人道ニーズに対応し、一人でも多くの人々に質の高い講習を提供することを、優先課題としてきました。今回、日赤の支援でウガンダ赤本社の一角に整備された常設の救急法講習センターには、プロジェクターやスクリーン、音響・映像機器が備えられ、1回あたり最大25人の受講が可能です。また、受講者全員に行き渡る心肺蘇生用マネキン、AED(自動体外式除細動器)、ストレッチャー、酸素ボンベなどが新たに整備され、これにより、講習受講生が、応急処置が必要な場面をより現実感を持ってシミュレーションを行えるようになりました。
加えて、講習の質を高めるため、指導員用の行動規範や、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)蔓延下に適応した救急法ガイドラインも作成しました。
救急法講習センターの内部 (c) 連盟
職員や一般向けの救急法グッズ売店。ウガンダ赤の収入源の一つとして、より充実した事業の実施を目指す (c)連盟
そして、より多くの人に講習を普及するには、広報活動が欠かせません。これまで、チラシなどの紙媒体や、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアを通じて救急法講習を広報したり、救急法講習センターに売店を設置し救急法グッズを紹介するなどして、救急法講習センターの認知度を高める工夫をしています。
施設が完成し資機材が整備された現在、救急法講習センターでは毎週研修が実施されており、今後は年間数千人の受講が期待されています。
■ 人材の育成、そして赤十字活動の充実へ
ウガンダ赤は、高まる救急法のニーズに対応するため、救急法の指導員の育成・能力強化にも力を入れています。2020年度は、新たに整備された救急法講習センターにおいて2回の救急法指導者研修が行われ、ウガンダ赤支部の救急法部門に在籍する合計31人が参加しました。参加者たちは、最新の心肺蘇生法や新型コロナ禍でのガイドラインに沿いながら、救急法の知識・技術を再取得し、また指導者としての教え方を磨き直したほか、最新の資機材を用いたシミュレーションを通じて、緊急現場における負傷者への対応能力を強化しました。加えて、救急法指導員たちの“営業力”を高めるための研修も実施されました。2020年度は西部地区およびエンテベ支部から40人が参加し、企業等を対象とした有料の救急法講習を効果的に実施していくための交渉力やビジネススキルを学びました。
救急法の指導員たちは、研修を通じて得た知識や技術を各支部の救急法講習に導入し、救急法の全国的な普及や質の向上へ貢献することが期待されています。そして、有料の救急法講習の受講者が増加することはウガンダ赤の収益に繋がります。その結果、災害対応や保健衛生状況の改善など、同国が抱える様々な人道課題に同社が対応し、一人でも多くの人々に、より良い活動を届けることを目指しています。
熱心に救急法講習指導員研修に参加する、ウガンダ赤支部の職員・ボランティアたち (c) 連盟
日赤はこれからも、現地のニーズに応じた様々な形で、東アフリカ地域の保健・防災支援を行っていきます。引き続き、皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。