【速報12】ウクライナ危機:戦闘激化の中、人道支援の必要性を訴える赤十字
ウクライナでの戦闘が激化して2か月以上。東部を中心として戦闘が激化傾向にあり、状況がさらに悪化することが懸念されています。現在ウクライナ国内外では1,300万もの人びとが自分の住まいから避難を余儀なくされています。この避難規模は、2020年の1年間に全世界で紛争や暴力で新たに難民・国内避難民となった計1,120万人(出典:UNHCR)を超えており、ウクライナで起きている危機がいかに急激かつ大規模であるかを示しています。
国際赤十字は、ウクライナ国内、ウクライナの周辺国、そして避難した人びとがいる第三国において活動を継続していますが、特にウクライナ国内においては戦闘の中心となり危機が迫っている地域においても人道ニーズに沿った活動を続けられるよう、支援の重要性を訴え続けています。
アゾフスターリとマリウポリの避難を先導するICRCスタッフ©ICRC
■ICRC職員が見たイルピン、ブチャの現状
赤十字国際委員会(ICRC)は、ウクライナ国内に10か所とポーランド、ハンガリー、ロシア、ベラルーシ、モルドバ、ルーマニアの周辺諸国の拠点で活動を展開しています。
ICRCは、紛争当事者との対話を続け、国際人道法の遵守を訴えながら、民間人、捕虜や負傷兵を守るべく活動を続けています。
4月上旬、ICRCのチームは、キーウ(キエフ)近郊で激しい市街戦に巻きこまれたイルピン、ブチャを訪れました。数週間の戦闘で街全体が破壊されており、残されているのは、最も弱い立場の人びとでした。
ブチャでは、およそ3万人の人口のほとんどが避難をしていますが、高齢や病気などを理由に、暖房も水も電気もないアパートで独りきりで過ごしている人が多くいます。皆心に深い傷を負っており、話しかけると泣きだしてしまう人や、1か月半も眠れずに過ごしている人もいました。ICRCはまず、ブチャに残っている人々に、食料や水、防水シートなどの救援物資などを配付することにしました。
また、路上にはたくさんの不発弾が放置されています。不発弾や地雷のある場所には近づかないように、ICRCの専門家が印をつけて回っています。住民の生活を脅かすこうした不発弾は、今後適切に処理する必要があります。
一方、イルピンでは3,500人ほどが街の中に水や食料がない状態で取り残されていました。軍の病院も大きな被害を受けたため機能しておらず、眼科医1名だけが外科を担っている状況でした。ICRCのチームは緊急に医療が必要な人びとの搬送を行いました。
■民間人や負傷者を安全な場所へ
民間人を守るための活動として、安全な経路を確保したうえでの避難の先導が挙げられます。ICRCは今年の3月以来、スムイやマリウポリの民間人1万人以上をウクライナ国内の比較的安全な都市に避難させました。
最近では、紛争当事者と国連と連携し、アゾフスターリ製鉄所やマリウポリからの避難を実施。約500人の避難が実現した5月3,4日の二回に引き続き、三回目は、5月5日から4日かけて先導し、製鉄所内にいた51人の民間人と、マリウポリ市内にいた人びと合わせて170人以上がザポリージャに到着しました。「避難できたなんて夢みたいです。たくさんの人たちが力を尽くしてくれたおかげ」と避難者の一人は語ります。
私たちは今後も、戦火のなかで取り残された人びと、逃げることのできない人びとの救助に力を尽くします。
また、負傷者を安全な場所に避難することも大事な活動の一つ。4月11日に、ICRCはドイツ赤十字社のチームと共に、セベロドネツクから、重病者や身体障害者、慢性疾患を抱える患者の計11人を避難させました。皆1か月間地下シェルターで生活しており、非常につらく苦しい状態の中過ごしていました。砲撃の音が聞こえる中、何とかドニプロまで連れ出すことができました。
戦闘が激化している地域では、未だに人道支援のアクセスが制限され、十分に活動できていない地域もあります。「赤十字マーク」の持つ意味を訴え続けながら、私たちは活動を続けていきます。
ICRCの最新の情報は赤十字国際委員会駐日代表部ツイッターからもご覧いただけます。
「ウクライナ人道危機救援金」
受付期間: 2022年3月2日(水)~2022年9月30日(金)
使途 : 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。