核兵器禁止条約第1回締約国会議、来週にウィーンで開催

 核兵器の開発・保有・使用等を禁止する核兵器禁止条約は、2021年1月に発効し、初めての締約国会議は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期されてきましたが、この会議の議長を務めるオーストリア政府と締約国の調整により、来週の6月21日から3日間の日程で開催されることになっています。

この会議には、各締約国の代表に加えて、未締約国もオブザーバー参加が認められており、広島や長崎の被爆者等も招かれ、前日には核兵器がもたらす人道上のリスクについて話し合う国際会議、さらにその前には核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)主催のイベントも開かれる予定です。

ウクライナ情勢が緊迫し、核兵器が再び使用されることへの警戒感が高まる中、一方では皮肉なことに、核兵器が再評価されるような議論も沸き起こっています。今、核兵器を法的に禁止する意義、そしてこのタイミングで締約国会議を開催する意義が改めて重要となっています。

人道的観点からの赤十字の核兵器廃絶に対する取り組み

この核兵器禁止条約において、赤十字は、前文でこれまでの核兵器廃絶を巡る赤十字の貢献に触れられ、条項では、赤十字が条約の履行に向けて国際協力及び支援の分野で役割を担うこと(第7条)、また、締約国会議及び運用検討会議にオブザーバーとして出席すること(第8条)が規定されています。今回の会議にもオブザーバーとして参加します。

日本赤十字社は、第二次世界大戦において、広島・長崎に原爆が投下された直後に救護活動に従事し、以来、半世紀以上にわたり核兵器が及ぼす非人道性に向き合い、核兵器廃絶に取り組んできました。

赤十字は、核兵器使用による甚大な人的被害と大規模な破壊、長期的な健康と環境への影響を考えると、核兵器が国際人道法(※)と相容れるかは非常に疑わしく、その被害に対応できる人道支援の対応能力が無いという、人道的な観点から問題提起しています。

※国際人道法(ジュネーヴ諸条約)は、武力紛争の被害を最小限にするために、武器の使用方法、戦闘手段を制限するもので、一般市民や民間施設への直接的な攻撃の禁止、無差別攻撃の禁止、攻撃における均衡性の原則、環境破壊の禁止、攻撃の際の予防措置などを規定しています。

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      被爆直後の広島赤十字病院

<過去、核兵器の非人道性に向き合った日本赤十字社の関係者の声(一例)>

「私の頭の中には、他のすべての国が核兵器の恐怖を叫ぶことに、ためらいを感じたり、あきたり、反対したりしたとしても、日本だけは、それを叫び続けなければならないし、日本だけがそれを叫ぶ権利がある、という思いが、いつもあった。広島、長崎の被爆体験はいうまでもなく、日本は1954年の、南太平洋のビキニにおける核実験でも、降灰によって漁船が被災している。漁船の善良な乗組員だった久保山愛吉さんの痛ましい死は、すべての日本人の記憶にやきついていることであろう」(元日本赤十字社 社長 島津忠承『人道の旗のもとに~日赤とともに35年~』講談社、1965年)

「被爆者二世に実際に白血病が起こるか起こらぬかを私どもの時代にはっきりさせておかないと、後世に未解決の問題を残して、われわれが経験した災害の実態を、次の時代の人に、はっきりした形で報告できない。あの時代の人たちはなにをしていたんだということになる。当然われわれの責任ですから、私はそれを痛切に感じるんです」(元広島赤十字・原爆病院 院長 重藤文夫『対話 原爆後の人間』新潮選書、1971年)

「大勢の患者の中でわが子をしっかりと抱きしめ眠ったままの姿で死んでいる母親、その母親の乳房にむしゃぶりつき、泣きじゃくっている乳児、死んだ者が苦しかったか、生きている者が苦しいのか、この時から皆の苦しみが始まったのです。昇天した人をムシロで包み川端で焼き、ただただ亡くなった人に心から念仏を唱えるだけでした」(当時、日赤救護看護婦養成所1年生だった方の手記より、長崎市内の救護所において)

「日本の若者が核兵器と気候危機を考える作戦会議」から本会議へ

昨年10月25日に、核兵器禁止条約第1回締約国会議を見据えて、核兵器廃絶や気候変動対策に取り組むユースが東京・夢の島公園にある「第五福竜丸展示館」に集まって「日本の若者が核兵器と気候危機を考える作戦会議」を開催しました。

この作戦会議では、それぞれの活動紹介の後、若い世代の核兵器と気候危機に関する活動にどのような障壁や課題があるかといった話題を中心に、参加者が意見を交わしました。当日の詳細は、動画も含めて、「日本の若者が核兵器と気候危機を考える作戦会議」 - 赤十字国際委員会 赤十字国際委員会 (icrc.org) からご覧いただけます。

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核兵器廃絶国際キャンペーン (ICAN)国際運営委員の川崎哲氏を招き、
ユースたちが核兵器廃絶と気候変動に関して議論するイベントの様子
(2021年10月25日、第五福竜丸展示館)

今回、日本赤十字社からは、青年赤十字奉仕団員と職員の2名が一連の会議等に参加予定です。このような事前会議等を経て、過去の歴史に学び、皆で核なき世界を築き上げていけるよう、本会議にオブザーバー参加すると共に、サイドイベントでは青年赤十字奉仕団員が次世代としてのお考えを来場者に発表予定です。

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