8月に考える核兵器のこと~核兵器廃絶に向けて取り組む日赤ユースの思い~
今年6月にオーストリアの首都ウィーンで核兵器禁止条約の初の締約国会議が開催され、「核兵器が地球上から完全に消滅するまで、私たちは歩みを止めない」という会議宣言が出されました。
核兵器禁止条約の締約国が進めていく行動計画の中には、核軍縮の既存の枠組みと本条約との補完性の強化や、核保有国や核の傘下にある国とのギャップを埋めていくことが謳われています。
現在(8月1日~26日予定)、アメリカのニューヨークで「核兵器不拡散条約(NPT)」の再検討会議が開催され、核保有国を含めた議論が行われています。
赤十字は、長年に渡って核兵器の廃絶に向けた取り組みを続けています。その中で、大阪の青年赤十字奉仕団は「核兵器は、将来にわたる人類の大きなリスクである」として、積極的に活動しています。今回は、同奉仕団の廣瀬さん(大学生)より、その取り組みや思いをお伝えします。
核兵器禁止条約第1回締約国会議の閉会後、国際機関と市民社会の議席付近に労いに来た
アレクサンダー・クメント議長(オーストリア外務省の核軍縮担当部長)
核兵器禁止条約では、被ばく者をはじめ市民社会と一緒に作り上げてきたという背景があり、また、この会議の成果物として出された宣言と行動計画において、国際機関や市民社会と連携していくと謳われており、市民社会が核兵器廃絶に与える影響に大きな期待が寄せられています。
私が核兵器廃絶に取り組む理由、その思い
私は昨年8月に開催された「令和3年度 核兵器廃絶オンラインフラッシュモブ活動」に参加したことがきっかけで核兵器廃絶について活動し始めました。このイベントは、私が現在所属している大阪府青年赤十字奉仕団の先輩が中心となって企画しており、その先輩よりお誘いを受け、運営側として参加しました。
それまでにも、私の曾祖母が当時広島に住んでいたことから、原爆の被害について知る機会は多くありました。しかしながら、曾祖母から初めて原爆投下時の話を聞いた際、想像していた以上に悲惨な状況であったことを知り、事実として受け入れがたく、そして自分が幼かったこともあり、怖くて最後まで話を聞くことが出来ず、昨年まで原爆や核兵器に関して積極的に学ぶことはありませんでした。
しかし、昨年活動に参加し、核兵器の問題について「他人事」として捉えている人に少しでも「自分事」として考え、興味を持ってもらえるような活動をしていくことが必要であると考えました。また、悲惨な状況であったことを後世に伝え、目を背けたくなるような過去であったとしても今後二度と同じことが起きないよう、アクションを起こすことが私たちのしなければならないことであると考えるようになり、現在、核兵器廃絶に関する活動を積極的に行っています。
私が昔、原爆に関する話を聞くことを遠ざけてしまっていたように、きっとこの話を聞くことに対してハードルが高いと感じている人も多いと思います。また、知りたいと思ってもどこから学べばいいのか分からない、そもそも知る機会や学ぶ機会も少ないのではないかと思います。そのため、少しでも多くの人に自分事として捉えてもらうためにも、核兵器廃絶について知ってもらう機会、考えてもらう機会を作っていけるよう活動をしています。
具体的な取り組み:核禁ウィークの配信
核兵器禁止条約第1回締約国会議等が行われていた、令和4年6月17日(金)から24日(金)にかけて“核禁ウィーク in Japan” が日本でも開催されていました。私はその期間に、自主企画として核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営団体であるPEACE BOATの方にご協力いただき、「医療の側面から見た核兵器使用に対する考察と平和学習の差から生じる課題」というテーマでYouTubeを使って配信しました。
私は現在大学で看護の勉強をしていることもあり、看護学生の視点から、核兵器が使用されたことによる被害の中でも、特に医療に対して重点を置き、日本赤十字社広島県支部の方から伺ったことや当時の資料をもとに、原爆投下直後の広島について、そしてその当時の看護学生の思いや医療の状況を伝えると同時に、現在の看護学生という視点から考えたことをプレゼンしました。また地域によって学校での平和教育の差が生じていることで、平和に対する意識が異なっている課題について問題提起を行いました。
この取り組みを通して、赤十字の7原則の1つでもある人道の視点から、核兵器の問題を皆様にお伝えすることが出来たのではないかと考えています。
今月は、広島と長崎へ原爆が投下された月であり、また核兵器不拡散条約に関する再検討会議がニューヨーク国連本部で開催されています。広島において、今年11月には各国の政治リーダー等による「国際賢人会議」、来年5月には「G7サミット」が開催される予定です。世界全体として核兵器廃絶に向け大きく動いている今、核兵器廃絶について興味を持つことが出来るきっかけは今まで以上に多いのではないでしょうか。
私自身、昨年から学びはじめたこともあり、知識はまだ乏しいのですが、今から学び始める人に近い考えを持っていると思います。
「平和は待つだけではやってこない、自分たちで行動しなければならない」ことを根底に持ち、多くの人が核兵器廃絶に関して興味を持つきっかけを作れるよう、そして分かりやすく伝えられるよう、今後も核兵器廃絶について発信していきます。