ウクライナ人道危機:厳しい冬を迎えるウクライナ、求められるのは早急な厳冬期対策支援
ウクライナにおける武力紛争は、エネルギーインフラなどへの攻撃の激化という新たな局面を迎えています。これまでに、ウクライナ国内の50%以上のエネルギーインフラが破壊されており、多くの地域で停電の発生や、暖房や水の供給に支障をきたしています。
今年のウクライナは10月中旬から気温が1桁となり、11月には今シーズン初の降雪を観測しました。12月から来年にかけ、気温はマイナス15-20度、寒い地域はマイナス20度以下になることも予測され、この冬を乗り切るための対策を早急に進めていく必要があります。
厳冬期対策支援は、緊急かつウクライナ全土でのニーズに即座に対応するべくウクライナ政府が主導しており、赤十字は国連機関やNGOと緊密に連携をとりながら、的確に支援を展開していきます。
赤十字が実施するさまざまな厳冬期対策支援
赤十字は、ウクライナ全土に広がる支部やボランティアの存在を生かして、以下のような厳冬期対策支援を計画、実行しています。
緊急暖房シェルターの設置
電力や暖房が途絶えてしまった場所において、即座に人びとが携帯電話を充電したり、暖をとったり、暖かい飲み物やスープを飲むことができたりする場所を提供しています。緊急時にも即座に対応できるように、大型のディーゼル発電機やボイラーを備えています。
キーウ ビシュホロドにてウクライナ赤十字社緊急対応チームが温かい食べ物や暖を提供(C)ウクライナ赤十字社
ヘルソンの暖房シェルターにて、赤十字チームが暖や携帯電話充電のための電力を提供(C)ウクライナ赤十字社
冬期対応物資の配付
赤十字は夏の暑い時期から、厳冬期支援の準備を進めていました。
特に厳しい状況にいるホストファミリーや避難民等を対象に、ウクライナの厳しい冬の条件に適した保温性の高い毛布、掛け布団、寝具、家庭用暖房器具、その他生活支援用品を配付しています。
また、避難所など多くの人が集まる場所や医療施設、交通インフラ等の公共施設に対し発電機やヒーター、燃料等の支援を行っています。
ミコライウにて5000台のストーブを準備する赤十字スタッフ(C)ウクライナ赤十字社
家屋の修繕
攻撃によって損害を受けてしまった家屋を修繕するため、必要な修繕物資を支援しています。特に、これからの雨や雪に備え、屋根や窓の修繕が急がれます。
ヴィンニツィアにて、家屋の窓の修復を支援する赤十字ボランティア(C)ウクライナ赤十字社
キーウ ククハリにて屋根の修繕を支援する赤十字スタッフ(C)ウクライナ赤十字社
光熱費等に対する現金給付支援
ウクライナ赤十字社は当局と協定を締結し、ウクライナ全土で国内避難民を受け入れている世帯の冬期の光熱費増加に対する支援を実施します。
また、国内避難民が居住する避難施設や共同施設など、公共施設の光熱費補助にも対応します。
日本赤十字社から4億5,000万円の追加支援
日本赤十字社はこれまで、皆様からいただいたウクライナ人道危機救援金をもとに、国際赤十字と連携して幅広い支援を実施してきました。
今回の厳冬期対策支援については、基本的にこれまで国際赤十字が発出している計9.4億スイスフラン(日本円約1,360億円)の緊急救援アピールをもとに実施されますが、ウクライナ赤十字社は追加での支援を求めています。日赤はウクライナ赤十字社の要請に対応し、主に医療施設等公共施設を対象にした発電機や薪ストーブ、その他生活用品支援の物資支援を行うべく、4.5億円の追加支援を決定しました。
「NHK海外たすけあい」キャンペーン~誰も取り残さない。紛争からも飢餓からも。~
長引くウクライナ人道危機に対しては継続的な支援が求められていますが、それだけではなく、世界にはあまり目を向けられていない災害や紛争などの人道危機が存在しています。
例えばアフリカでは、気候変動などの影響で深刻な食料危機に直面しており、その状況はウクライナ人道危機により食料供給が不安定になったことでこれまでにないほど悪化しています。
日本赤十字社は2022年12月1日から25日まで、「NHK海外たすけあい」を実施しています。この活動は、日本赤十字社がNHKと毎年12月に実施している募金キャンペーンです。
小学生記者によるインタビュー動画もリンク先からご覧いただけますので、ぜひご覧ください。
赤十字は、世界192に広がる赤十字ネットワークを生かして地域に根差した公平な支援を届け続けます。
皆様からのご支援、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。