アフリカの食料危機:貧困の連鎖を断ち切るための取り組み

 アフリカでは今、過去40年で最悪の干ばつ被害が起き、日本の全人口を超える14,600万人もの人びとが深刻な食料不足に陥っています。その多くが、サハラ以南のアフリカ諸国で暮らす人びとです。

 では、なぜこれほどまでにもアフリカで食料不足が起きているのでしょうか。

 気候変動による日照り、干ばつ、例外的な時期の雨期や大規模な洪水、バッタなど害虫の大量発生により農作物の収穫が激減している中で、2020年に発生した新型コロナウィルス感染症は、アフリカの食料事情をさらに悪化させました。そして今年2月に勃発したウクライナ紛争。ロシアやウクライナからの小麦やトウモロコシなど穀物の輸出が減少したことや、物流の停滞による肥料や石油価格が高騰したことは、アフリカの食料不足に致命的な影響を及ぼしました。

 こうした世界情勢に加え、アフリカ特有の要因も状況に拍車をかけています。アフリカの複数の地域で今も起こる武力紛争、暴力から逃れるために発生する国内避難民、根底にある貧困といった要因が複合的に影響しあって、食料危機が引き起こされています。

 国際赤十字は今、各国赤十字・赤新月社や政府機関と連携して、アフリカで飢えに苦しむ人びとに緊急支援を実施しており、飢餓に直面する人びとに食料配付をするととも、人びとが自らのニーズに応じて使うことができる現金支給を行っています。加えて、安全な飲料水や衛生設備の提供、保健・衛生指導など、包括的な支援を展開しています。

1221-1.png
世界の食危料機はアフリカに集中しています
(出典:Global Report on Food Crises 2022)

1221-2.jpgケニア赤十字社は食料配布のほか、栄養失調の子どもたちに補助食品を提供するプログラムも実施しています
©日本赤十字社

 こうした緊急支援は、命をつなぐためになくてはならないものですが、他方で限界もあります。それは、食料配付は永遠に続けることができないこと、食料危機のような人道危機は将来も繰り返し起こりうること、限られた資源では多くの人々を助けることができないこと、さらには、アフリカに内在する慢性的な貧困、安全な飲料水の不足、栄養不良、劣悪な衛生環境が内在する現実があるためです。

■自らの力で立ち上がること

 短期的には、緊急支援によって人びとを目の前にある痛みから救うことが不可欠ですが、中長期的には、貧困の連鎖を断ち切り、人びとが自らの力で貧困から立ち上がるための支援が必要です。それは、将来また襲い掛かるかもしれない食料危機に備えて、人びとが食料支援という外からの助けがなくても、地域で支え合い、手を貸しあえる人づくり・仕組みづくりをすること。そして、貧困から抜け出せるよう、知識や技術を習得し、力をつけることです。「自分の力で立ち上がること」を赤十字では「レジリエンスを強化する」と呼んでいます。日本赤十字社は、東アフリカ地域に位置するルワンダをはじめとするアフリカの国々でこうした取り組みを支援しています。

 ルワンダ南部・ギサガラ郡は、安全な飲み水が村になく、遠くまで水汲みに行くのに時間がかかるため、学校に通えなくなる子どもたちもいます。また、慢性的な栄養不足や貧困も大きな社会問題です。日本赤十字社はルワンダ赤十字社と協力して、これらの危機に人びとが適切に対応し、将来の危機を予防・軽減するための力をつけることを目指した事業を行っています。

画像

 日本赤十字社は、緊急人道支援から中長期的なレジリエンス強化の取組みまで幅広く、人びとのいのちと健康、尊厳を守るための活動を続けていきます。皆さまからの温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

本ニュースのPDFはこちら(752KB)